■小説自作|コンビニの夜5 赤いドレスのキューピーハニー

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きみに赤いドレスを着させたい

 得体の知れない何か変な男が、聞き取りにくい言葉を発しながら、ふらり、ふらりと左右に揺れながらアタシに近寄ってきた。

「うーうー、きみにー、赤いドレスをー着させたいー」と言っていた。

 うっ、気持ちわるーと鳥肌が立ってきた。なんだ、なんだ、あーかいドレスを着させたいだとー、意味わかんねーよー。とアタシは気持ち悪さと恐怖とで思考停止状態に陥りそうになっていた。

 逃げよう、そうだ走って逃げよう。そう思ったが、なぜか足が動かない。そうこうしているうちに、もう一匹、いやもう一人の変な男が現れていた。そいつも、何か聞き取りにくい言葉を発していた。

「うー、まっかなコートをきみにー、着せたいー、うー」と言っていた。

 こ、こいつもかよ。気持ちわるー、近寄るな。そこから一歩も動くなと念じるが、ふらり、ふらりと揺れながらさらに近づいてきていた。

 早く逃げなきゃ、と気持ちは焦るがやはり足が動かない。もう、すぐ目の前まで気持ち悪い変な男はきていた。あと10センチぐらいで腕を掴まれそうになった。そのときアタシは、意を決して叫んでいた。

「グガヤウアーー、ダズケテークエーー!」と。

 それからハッとして目を開けると…アタシは静かに起き上がった。

 部屋の中は明るかった、窓の外からは、チュン、チュンと鳥の鳴き声が、さらにアホー、アホーとカラスが鳴いていた。

コンビニの夜5 赤いドレスのキューピーハニー

作:cragycloud
主人公:アタシ(コンビニで働いている20歳の女子)

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キューティーハニー/佐藤江梨子

臭い怪物もオシャレには勝てない

 腕にはめた携帯端末がピコン、ピコンと鳴っていた。カバーをパカッと開けると小さい画面が現れた。そこには白い猫を抱いたブラックスーツの男が映っていた。白い髭を生やしたその男は、物静かに話し始めた。

「おはよう、キューピーハニー。元気かな。ところで、さっそくだが出動の準備をしてくれ。新橋の駅前に怪物が現れた急いでくれ、いいね」とブラックスーツの男は物静かに、しかし有無をいわせぬ命令口調で言っていた。

「……やだ。行きたくない」とアタシは言ってやった。
「えっ、なんて言ったかな。よく聞き取れなかったが」と男は怪訝な表情を見せながらも、イラついた気持ちを押し込んだように言った。

「だ、か、ら…やだ」とアタシはもう一度言ってやった。
「ん……なに、くー、な、なにー言ってんの」

「臭いんだよ、すげー臭いだよアイツらは。だからーやだ!」
「アイヤー、そ、それはないよキューピーハニー。キミが頼りなんだよ」

「えっ、だってー、スーパーガールのそのみさんはどーしたのよ」
「スーパーガールのそのみは、アメリカ人と駆け落ちして行方不明だ。セーラームーンのゆみちゃんは、海外旅行中だからね」
「じゃー、ウルトラの母は…」
「あ、ウルトラの母は、いま産休に入ってる」

「…なにそれ。アタシは都合のいいオンナみたい」
「いやーそうじゃない。キミこそ運命のオンナさ。怪物もキミと戦いたいのさ。そうだろ、なにしろキューピーハニーは最強じゃないか。そうそう、キミのために新しいドレス、いや戦闘服を用意したんだ」

「えっ、そーなのーどんなのかしらー楽しみー」
「もう届いてるはずだから、ドアの外を確認してみてくれ」

 アタシは、部屋のドアを開けてみた。ゴトッと音がして何かにぶつかった。そのままズッズーと何かをドアで押して、部屋の外に出るとかなり大きめのダンボール箱があった。こりゃ、重いなと思いながら何とか部屋に運び込んだ。

 ダンボール箱を開けてみると、赤い色をした戦闘服が現れた。全体が赤で、部分的に黒でシルエットをシャープなラインが強調していた。他にはシューズも赤だった、戦闘用の武器類など、なにもかもが赤で統一されていた。

「んー、いいんじゃない。おしゃれー」とアタシは思わず言っていた。
「キューピーハニー、どうかね。赤いドレスを着たキミは素敵だと思うよ」

「うまいなー、ボスはー、いよオンナごろし」
「じゃー、行ってくれるね新橋に」
「オッケー、ボス。その代わり、臭い怪物を倒したあとこのスタイルで合コンに行ってもいいー」とアタシは交換条件を出した。
「なにー合コンだと、んー、まっ仕方がないか。その代わり急いでくれよ」

「ラジャー、ボス。まかしちくれー。キューピーハニー戦闘モードに入ります」

 そして、アタシは新橋に急いで駆けつけて、臭い怪物を4の字固めで片付けたあと合コンに行った。そこで盛り上がったのは言うまでもなかった。

 アタシの怪物退治の話は、チョーウケまくっていた。

「ウンコジャネーゼて怪物なんか、ウンチ丸出しでやんの。くせーのなんの、どこがウンコジャネーゼだよ、ウンコマルダシダローゼじゃねーかて言ってやったよ、ガハッハッハー、くっくるしい、笑いすぎてお腹が…よじれるー」

 ……アタシは、そんな夢を見ながらぐっすりと深い眠りについていた。ときおり、ニヤリとしながら、そして何事かつぶやいていた。

ジジゴジラ、現る!

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引用:http://movie-runner.com/wp-content/uploads/2016/08/640.jpg

 今日も元気に深夜のコンビニで働いている。最近同じ系列にある地元のコンビニが閉店した。この店は大丈夫だろうか、なんて少し心配になっていた。

 それはさておき、今日は暇だ、だから目を開けたまま半ば眠りに入っていた。そんなとき、ピンポーンという入り口のチャイム音が鳴って目を覚ました。

 入り口に目を向けると、そこには異形のかたまりが立っていた。たしかに人間と思われたが、どこかエイリアンを思わせる何かがあった。

 ついに、アタシのいるコンビニにも異星人が現れたかと思った。

 一見するとそれはおじーさんだった。いや、見るからにおじーさんそのものだった。頭は俗にいわれるつるっ禿げで、後頭部がエイリアンのようにでっぱっていた。芸人の小峠さんを思い浮かべてもらえれば、ほぼ間違いない。

 そして両腕の前腕部だけ前に突き出しながら、よたよたと歩いていた。その動き方は、何かに似ていた。そう、ゴジラみたいだった。恐ろしげな顔つきではなかったが、ゆっくりとした動作、前腕部を突き出した姿がよく似ていた。

 さらに、ときおり「カオーン」という声を発していた。それは、ゴジラの鳴き声にどこか似ていた。しかし、「カオーン」とは何の意味か。「買うよーん」と言ってるのかもしれない、などと想像を膨らませていた。

 アタシは、このおじーさんに「ジジゴジラ」と密かに命名した。そのジジゴジラは、一通りコンビニ内を徘徊すると商品を手にして、カウンターにいるアタシのところにやってきた。そして、意味不明の一声を発していた。

「ンジューゴバーン」とジジゴジラは言っていた。
「ハッ、な、なんですかー」と思わずアタシは言った。

 しかし、おじーさんはおなじことを繰り返していた。
「ンジューゴバーン」と言いながら、突き出した前腕部を小刻みに震わせていた。

 うーんと考えたアタシは、思い当たる商品として15番のタバコを差し出した。しかし、ジジゴジラは首を横に振っていた。今度は、25番のタバコを差し出した。すると、にっこりとして首を縦に上下していた。

 ピンポーン、大当たりだった。なぜか、あー良かったという安堵した気持ちが胸いっぱいに広がっていた。アタシの感はまんざらでもなかった。

 おじーさんのジジゴジラは、アタシからお釣りを受け取ると、その代りに1000円札を差し出してきた。それをアタシに向けて言った。

「コズカイ、アゲルヨー」とおじーさんは言っていた。
「ハッ、それはありがとうございます、でも頂けませんから」

「コズカイ、コズカイ」と言って、おじーさんはカウンターにお金を置いて帰ろうとした。「お客さん、これー忘れてますよー」と追いかけるアタシであった。

 そのとき入り口の扉が開いて女性のお客さんが入ってきた。

「おとーさん、だまって出掛けちゃダメじゃない」とその女性は言っていた。どーやら、女性はジジゴジラ、いやおじーさんの親族と思われた。おじーさんは、一種の徘徊らしかった。地元では、よく徘徊老人を探すアナウンスがされていた。

「なにかご迷惑をかけなかったかしら」と親族の女性が言った。
「いえ、そんなことは何もありませんが、ただ、1000円をですねアタシに小遣いだと言って置いていこうとしたんです」

「あーそうですか。じゃそれ受け取っておいてください。孫のように感じたのかもしれませんから、気になさらないでいいですよ」
「えー、でもー、やはり受け取れません」
「いいんです、お礼です。そう思って受け取ってくださいな」

 そう言うと、親族、たぶん娘さんはおじーさんを連れて帰って行った。

 アタシは、1000円札を手に持ったまま店の外で姿が見えなくなるまで見送っていた。そしてなんだかなー、という想いが沸々とこみ上げてきていた。

 おじーさん、ジジゴジラなんて名付けてごめんね、エイリアンなんて思ってごめんね、「カオーン」ていう奇声がゴジラに似ているなんて思ってごめんね、とにかく、おじーさんアタシを悪く思わないでね。

 アタシは、また来るのを待ってるからね。きっとまた来てね、そう思うとなぜか胸がキューンと締め付けられるようだった。

 今度やって来たら、やさしく接してやるぞと考えを新たにしていた、ついでに自分の両親を思い出して胸がシュンとなっていた…。

<コンビニの夜5/おわり>

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上司に怒られつつもOLライフをエンジョイしている如月ハニー(佐藤江梨子)の正体は、「Iシステム」を発動させて何でも変身できるアンドロイドであった。
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