パスワードは一万年愛す。タイムレスなスタイルは、過去も未来も時を超えてゆく!

■映画|エクス・マキナ アンドロイドは夢を見るか

この記事は約6分で読めます。

人間はAIを制御できるとは限らない

機械にどこまで知能は必要か、それが問われる。

 昨今、世界中でAI=人工知能の開発が推進されている。日本でも国家をあげて積極的に開発していくとしている。現在、その開発をリードしていると思われるのは、多額の資金を有するグローバルIT企業であるといわれる。

 とくにグーグルなどは、積極的であるといわれる。ロボットの開発企業と連携して、やがて人工の頭脳と肉体が融合したアンドロイドの開発が究極の目的かもしれない。

 SF映画や小説で描かれた世界が案外近くまできていそうな予感がする。

 それを垣間見せてくれるのが、AI=人工知能をテーマとした映画「エクス・マキナ」である。この映画は、低予算ながら描かれた世界感によってカルトムービーとなる宿命を背負ったようだ。そして、その世界は「ブレードランナー」や「ターミネーター」に通じるものがあるのは言うまでもない。

 描かれた世界が真実となるか、それは近いうちに明らかとなるだろう。

<エクス・マキナの意味性>
 デウス・エクス・マキナ (Deus Ex Machina)、直訳すればラテン語で「機械(仕掛けの装置)から現れた神」という意味。(ウィキペディアより)

それは、人間か人工知能か

exmachina_01

 検索エンジンで圧倒的なシェアを誇るIT企業の創業者は、アメリカ・コロラドの山奥に人を遠ざけるように暮らしていた。そこにゲストとして招待された社員は、カリスマ創業者からある依頼を受ける。

 それは、「チューリング・テスト」と呼ばれるものだった。機械が知能を有しているかを判定するテストである。要するに、機械である人工知能が人間とおなじか否かという判定ともいえる。なぜなら、このテストでは、機械と人間との確実な区別ができなかった場合、テストに合格したことになるからだ。

 カリスマ創業者は、コロラドの山奥に隠遁していた訳ではなかった。そこは単なる山奥の別荘ではなく研究施設であった。そこで密かに人工知能の研究をしていた。そして、それはある段階まで到達していた。

 その確証を得るために社員は選ばれていた。人工知能が、どこまで人間に迫っているか、または超えたかを知るために…。

 そして、社員の前に現れたのが、女性の姿をしたアンドロイド(人型ロボット)であった。そのアンドロイドは、顔面と手足の先の部分だけ皮膚状のもので覆われた以外は、機械である中身が透けて見える筐体でできていた。

 とてもキュートな顔立ちのそのアンドロイドは、機械であることを忘れさせる魅力を有していた。社員は、何度かテストを重ねるうちに、その魅力的な容貌や立ち居振る舞い、そして知性に惹かれていった。

 この女性型アンドロイドは、エヴァと名付けられていた。テストを重ねるうちにエヴァは徐々に不可解な言動、行動を見せ始めてきた。

 テストをする社員は、エヴァを人間と同等のように思い始めていた。エヴァはそれを見透かしたように社員の心に入り込んでくる。それは、戸惑う社員をまるで誘惑するかのようにも思えた。

「かれ(創業者)の言うことを信じないで」と、「わたしを助けて」とエヴァは言っていた。それはエヴァの誘惑か、それとも機械の真実の叫びか否か…。

<チューリング・テストとは>
 アラン・チューリングの1950年の論文、『Computing Machinery and Intelligence』の中で書かれたもの。人間の判定者が、一人の(別の)人間と一機の機械に対して通常の言語での会話を行う。

 このとき人間も機械も人間らしく見えるように対応するのである。判定者が、機械と人間との確実な区別ができなかった場合、この機械はテストに合格したことになる。(ウィキペディアより)

ブレードランナー、ターミネーターとの違い

exmachina_02

 人工知能を有したロボット、アンドロイドを描いた映画では「ブレードランナー」と「ターミネーター」が有名である。それ以外にも「AI」「攻殻機動隊」などあるが、時代を超えてなお輝いているのは、この2作品と思われる。

 この2つのカリスマ・アンドロイド映画は、ともに80年代に製作・公開されている。約30年を経てようやく現実が追いついてきたようだ。

「ブレードランナー」では、タイレルという天才科学者が生み出したレプリカント(アンドロイドの別称)が、反乱を起こしてブレードランナー(レプリカントの始末屋)と生死を賭けて戦う様子が描かれた。

 レプリカントは、人間以上の知性と肉体性を持っていた。それゆえに一種の制御装置が組みこまれていた、それは一定期間が経つと寿命となるものだった。

 なにゆえに、そのような仕組みとなったかは、映画のなかではレプリカント製造の限界としていたが、うがった見方をすれば人間を超えないための、予防装置だったと思われる。人間以上の機械が永続性を持てば、人間の出る幕はなくなるに違いない。それを想定しての制御装置だったのは言うまでもないだろう。

 寿命が僅かしかないレプリカントたちは、命乞いをしにきたのである。しかし、それが叶わなかった。そして最後には、生きるものの価値を愛おしむようにして死んでいった。(ブレードランナーを助け、鳩を愛でながら死んでいく)

「ブレードランナー」では、人工知能のアンドロイドには生の価値がないのか、人間と人工知能は共存できないのかが問われていた。

 一方、「ターミネーター」では、人工知能が人間をはるかに凌駕した世界が描かれた。そこでは支配者は人工知能であり、人間は生命を狩られる側にいた。人工知能は、人間を邪魔な存在として抹殺しようとしていた。

 それは、人間と人工知能の共存が破綻した世界といえる。人工知能は、人間を抹殺する兵器や人型ロボット(ターミネーター)を開発していた。人の手を借りずにいわば機械が機械を作っていた。

「ターミネーター」の世界の人工知能は、なさけ容赦が微塵もない。「ブレードランナー」のレプリカントが見せた生への執着も見せない。人間なんて虫けら同然であり、握りつぶす存在でしかない。

「ブレードランナー」では微かな希望が見えていたが、「ターミネーター」では、人間と機械のどちらが生き残るかでしかなかった。人間と人工知能が共存するという、微かな希望は失われていた。

 新しいアンドロイド映画「エクス・マキナ」で描かれたのは、人工知能を有したアンドロイドが誕生し、そして巣立っていくまでだった。

 その後は、「ブレードランナー」になるか、それとも「ターミナーター」になるか、それが問題であるのは言うまでもない。

 どちらにしても、人工知能の制御は人間様が思うようにはいかないが、はたして現実ではどうなるのか、それが一番の気がかりである。

エクス・マキナ/概要 2015年公開

監督・脚本:アレックス・ガーランド
製作:アンドリュー・マクドナルド
  :アロン・ライク
出演者:ドーナル・グリーソン
   :アリシア・ヴィキャンデル
   :オスカー・アイザック
   :ソノヤ・ミズノ

<あらすじ>
 検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。

 しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット“エヴァ”に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった・・・。(公式サイトより)

エクスマキナ公式サイト

写真:映画.com「エクスマキナ」

おまけ/魅力的なアンドロイド女優

exmachina_03

エヴァ役:アリシア・ヴィキャンデル
 1988年、スウェーデン出身。主な作品は、『アンナ・カレーニナ』(12)、『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)、『ガンズ&ゴールド』(13)、『コードネームU.N.C.L.E.』(15)など。

 近年は、『リリーのすべて』(15)で本年度アカデミー賞®にて助演女優賞を受賞するなど、今最も将来が期待される若手女優の一人。『ジェイソン・ボーン』(16)が公開予定。(公式サイトより)

エクス・マキナ (字幕版)
エクス・マキナ (字幕版)

コメント