■極私的アート展覧会|エロスとタナトスの世界へようこそ 金子國義と四谷シモン

スポンサーリンク

真の耽美的世界は、深く人間の心底に留まる

 アートの世界では、本流ではない美の様式はアウトサイダー(異端)と位置付けられる。このアウトサイダーの代表といえるのが幻想的な美の様式である。この世に光と影があるように、美の本流と、そうではないアウトサイダーの美は常に裏表の関係にあり、ある意味では密接に結びついている。

 エロスとタナトス、そして幻想的な耽美的世界、そのような世界を描いたアウトサイダーの美の様式は、深く密かに人間の根元部分を刺激してやまない。

 それらの美は、本流となって日向に出るより、日陰でじっと忍んでいる。本流の美は、いわば流行と同義であり、いずれは廃れる運命にある。一方、アウトサイダーの美は、いつまでも密かに、そして深く人間の心底に留まり続けている。

エロス=性本能、自己保存本能を含む生の本能を意味する。
タナトス=攻撃、自己破壊に向かう死の本能を意味する。 
耽美主義=美を唯一最高の理想とし,美の実現を人生の至上の目的とする生活および芸術上の立場。
金子國義と四谷シモンの耽美的世界

 金子國義(画家)と四谷シモン(人形作家)には、幾つかの共通点がある。まず共に、60年代の演劇界の寵児だった唐十郎と状況劇場に関係していた。四谷シモンは、美形俳優としてやがて伝説的な存在となっている。そして金子國義は、俳優だけでなく舞台美術も担当していた。

 もうひとつの共通点は、小説家であり美術評論家であった澁澤龍彦との出会いである。当時、澁澤はマニエリスム的な美術観や歴史を紹介し注目されていた。金子國義は、趣味で描いた絵を澁澤に認められて、画家となるきっかけを掴んでいる。

 一方、四谷シモンは、澁澤の著書で紹介されていたハンス・ベルメールの作品に衝撃を受けて、球体関節人形という独特な人形づくりに取り組みだしている。

 このように金子國義と四谷シモンは共に演劇に関わり、澁澤によって芸術的開眼を果たしている。また澁澤はふたりの最初の展覧会にも尽力している。このふたりの作風は、幻想的でありかつ妖しくも魅惑的なところも共通していた。

マニエリスムとはーー
16世紀中頃から末にかけて見られる後期イタリア・ルネサンスの美術様式を指す。マニエリスムの系譜としては、後期イタリア美術の様式で高度な技術で非現実的な絵画を描写するようなものを指す。

金子國義 幻想のなかのプリミティブ


ヘアーカット
引用:http://www.bunkamura.co.jp/data/files/gallery/2016/20160312/slide2.jpg

プリミティブだ、バルテュスだ

 金子國義、1936年、埼玉県蕨市出身。織物業を営む裕福な家庭の四人兄弟の末っ子として生まれた。大人になった金子は、母親から働かなくていいと言われていたとか。それだけ裕福だったようだ。若い頃は遊び暮らしていたと言っている。

 1965年、金子國義は詩人の高橋睦郎の紹介で澁澤龍彦と出会った。そのとき澁澤は、金子國義の独学の絵を観て「プリミティブだ、バルテュスだ」と言ったとか。ちなみに、金子はこのときバルテュスを知らなかったそうだ。

 澁澤は、金子の絵をいたく気に入って、さっそく絵の注文をした。さらに、当時、澁澤が執筆中(翻訳)だった「O嬢の物語」の挿絵も依頼された。これが金子が画家となるきっかけとなり、また作風を開眼していくことにも繋がっていた。

 そして澁澤は、金子國義を青木画廊に紹介し、最初の個展を開催する。それが1967年に行われた金子國義初個展『花咲く乙女たち』だった。この展覧会は、盛況となり作品はすべて売れたといわれている。(青木画廊、曰く)

 最初の個展で一躍注目された金子國義は、以降は生涯に亘ってアートの世界で独自のポジションを確立し、特異な存在感を発揮し続けた。

 金子國義が描く世界は、どことなく欧州のどこかの光景を彷彿させるが、それがどこでもなく、金子の内面にある世界であるのは言うまでもない。

 官能的なしぐさ、どこか遠い視線の男と女たち、虚無的にも思えるが、どこか懐かしい雰囲気も漂っている。そして、それらすべてを含んだ耽美な調べこそが金子國義の本領であり、誰にも真似ができない世界であったと思われる。

 金子國義の耽美的な嗜好性は、やがてアリスにゆきつく。絵本「不思議の国のアリス」を刊行し、やがておなじ題材でバレエの構成・演出・美術もしている。

 金子國義は、アリスについて以下のように語っている。

「僕のアリスは、物語よりもむしろ、ルイス・キャロルが撮ったアリスの写真に触発されて生まれたもの。少女特有の、どこかエロティシズム漂う危険な世界。だから、アリスをちょっと冒険させれば『眼球譚』のシモーヌになるし、さらに大人にすれば『マダム・エドワルダ』になる。そういう具合に、僕の中で、アリス(純粋無垢)、シモーヌ(思春期少女)、エドワルダ(娼婦)は、僕が描きたいものとして自然な流れで循環していく」

 最初の個展で衝撃的にデビューした後、絵画のみならず、書籍・雑誌の表紙や挿絵、着物のデザイン、そしてバレエの構成・演出など幅広い活動をしていたが、2015年3月16日、虚血性心不全のため東京都品川区の自宅で死去、78歳だった。

<バルテュスについて>
 ポーランド系貴族出身のフランス人画家。 生涯を通じて近代美術界の潮流や慣例に抵抗して、おもに少女をモチーフとした独自の具象絵画を描いた。


花咲く乙女たち
この作品は、澁澤龍彦の注文を受けて制作されたようだ。金子國義の絵がはじめて売れた記念すべき作品。
引用:http://stat.ameba.jp/user_images/20160702/13/olympe/ea/b3/j/o0600046813687273811.jpg


花咲く乙女たち 
引用:http://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-89-27/trickstar2003jp/folder/1578763/99/54784499/img_0


花咲く乙女たち
引用:http://www.b-good-g.co.jp/images/kaneko.jpg


お遊戯
引用:https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/f0/24/8e/f0248e5bbc50b0ef3e31eeda6c9e5ed1.jpg


婦人公論 表紙
引用:http://fusensha.ocnk.net/data/fusensha/product/20131114_f073bb.jpg


富士見ロマン文庫 表紙
引用:http://img1.garitto.com/data/shop/48788/product/_/bc3c9e12d95d61c07b030491d0ee8191.C480.jpg

金子國義公式サイト:スタイル&ペインティング

四谷シモン 幻想と官能の人形アート

自己愛とナルシズム

 四谷シモン、1944年、東京五反田に生まれる。裕福な家に生まれた金子と違って、生活苦のなかで青春時代を過ごしている。

 四谷シモンは、60年代のはじめに新宿のジャズ喫茶で金子國義と知り合いになったそうだ。子供の頃から人形に興味があり、やがて人形作家のもとを訪ねて、その手伝いをするようになっている。60年代には、CMの人形を作ったり、朝日新聞社主催「現代人形美術展」などに出品(入選)したりしている。

 それでも人形で食べて行くまでには、ほど遠かったようだ。ロカビリーの歌手になろうとしたこともあったようだ。しかし、それはうまくいかなかった。

 そして、1967年に唐十郎と出会い、状況劇場の舞台を踏むことになる。状況劇場での四谷シモンは、女形として人気を博し、いまでは伝説となっているほどである。美形であるので、女形の妖しい役ぶりが実に似合っていたと思われる。

 そんな四谷シモンが、人形作家として確固たるポジションを獲得するには、金子國義とおなじく澁澤龍彦が介在していた。

 四谷シモンが、ハンス・ベルメールを知ったのは、澁澤の著書からだった。それからは、球体関節を用いた人形制作に取り組んでいく。それが、現在までつづく四谷シモンの人形づくりのベースとなった。

 1973年、金子とおなじく青木画廊で最初の個展を開く。それが「未来と過去のイヴ」というものだった。この個展のパンフの序文はやはり澁澤龍彦が書いている。個展は成功し、作品は完売したといわれている。

 そして、ここから四谷シモンは、状況劇場の女形ではなく、人形作家として認知されるようになっていた。

 ついに人形がアートとなり、幻想と官能とが、不思議な出会いを魅せる四谷シモンの人形の数々が世に出てゆくことになった。

 ちなみに澁澤龍彦は、四谷シモンの人形を愛し、いつも書斎に置いていたそうだ。澁澤は1987年に死去し、その後、四谷シモンはしばらく人形が作れなくなったとか。それだけ澁澤に心酔していたことがうかがえる。

<四谷シモンが語る:人形に対する想いと制作について>
 逃れ切れない自己愛、ナルシズムが誰にでもあるならば、あえてそれをテーマにして意図的に作品化しようと思いました。

 人形というのは自分自身であり、分離しているようでしていないという作為的、幻想的な考え方をするようになったのです。

 こうして生まれた「ナルシズム」「ピグマリオ二スム・ナルシシズム」などの作品は、絵画や写真のセルフポートレートとは少し違っていますが、おそらく「これも僕です」といえるものではないかなと思っています。


引用:http://ossanhitorimeshi.net/wp-content/uploads/2014/10/P1500065.jpg


引用:http://lmaga.jp/blog/news/assets_c/2014/11/%E3%82%B7%E3%83%A2%E3%83%B3%EF%BC%91-thumb-700×467-12026.jpg


未来と過去のイヴ
引用:https://www.ggccaatt.net/2016/07/13/%E6%BE%81%E6%BE%A4%E9%BE%8D%E5%BD%A6/

参考:澁澤龍彦/日本の幻想美術(山田視覚芸術研究室)、ウィキペディアほか

金子國義の世界 (コロナ・ブックス)
金子國義の世界 (コロナ・ブックス)

SIMONDOLL―四谷シモン
SIMONDOLL―四谷シモン

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

おすすめ記事