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■映画|フィッツカラルド ヴェルナー・ヘルツオーク

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これは、船が山を越えていく前代未聞の映画である!


主人公を演じるクラウス・キンスキー

オペラに取り憑かれた男の壮大な夢

この映画「フィッツカラルド」をいつ見たか。もう忘れたが、たぶん小さなマイナー映画館だったと思う。1982年の公開らしいから、「ブレードランナー」や「宇宙からの物体X」などと同じ頃の作品だ。ついでにいえば、あの「ET」とも同じである。「ET」は大ヒットしたが、他のはみな転けたはずだ。しかし、その後は、様子が違う「フィッツカラルド」「ブレードランナー」「宇宙からの物体X」などは、みなカルトムービー化していまや名作の誉れが高い。

個人的なことであるが、実は「ET」を観ていない。これは、案外希少なのではないか。当時は、ほとんどの人が観ていたはずだ。何ら自慢にはならないが、これは個人の趣向性を顕著に表しているはずだ。繰り返すが、自慢ではない。

さて、「フィッツカラルド」であるが、この映画を一言でいうと「何故そこまでするの」ということか。なにしろ、この映画の主人公は320トンもある船で山を越えていくのだ。映画では、実際にそれを実行したそうである。これが、とてつもなく困難であったのは言うまでもない。撮影は数々の困難に遭遇したそうである。


後方に陸に揚げられた舟が見える

ヘルツオークの狂気は、幾多の困難も乗り越えた

この映画は、南米アマゾンの奥地にオペラの劇場を建てようとしたある欧米人実業家の奮闘を描いた物語である。これは、事実に基づいた話らしい。事実の方は、船を解体して山を越えたそうである。しかし、映画では船そのもの丸ごとで山を越していく。これは、たぶん困難さをより強調するためだったのか。意思の強固さを示す演出だったのか。それは知る由もないが、撮影の関係者にとってはとんでもないことである。

ヘルツオークは、ドイツ出身の映画監督であり、ニュージャーマン・シネマの旗手として名高い人である。その演出は、なんとも濃い、ジャーマン魂ともいうべきものが色濃く漂っている。また、その気概の高さも半端ない。少々のことではへこたれないその根性は、すごいの一言である。この映画も一端は頓挫し、改めて資金調達をやり直して製作となったそうだ。

撮影は、アマゾンのジャングルで行われた。当初は雨期に撮影が行われる予定が、なんだかんだでずれ込んでしまった。そして、乾期での撮影となったそうだ。乾期では川の水かさが減って、船のスクリューが空回りするなどして撮影が中断することが度々あったそうだ。そして一端撮影は中止となった。ジャングルのなかでやることのないスタッフ達は、サッカーをしたりしていたそうだ。


山を越えていく320トンの舟

また、キャンプには売春婦もいたそうである。鬱屈のたまるスタッフを慰めるつもりか知らないが、製作者も大変である。さらには、現地で雇ったインディオが近くの部族に襲われて、その仕返しにいくとかあったらしい。ブラジル人の技術者も舟で山など越せないと言って仕事を降りてしまう。

このような幾多の困難を乗り越えて、撮影を続けたヘルツオークこそ狂気に取り憑かれていたのかもしれない。そうでもなければ、途中でくじけそうだ。しかし、ヘルツオークが、そうまでしてこの映画にこだわったは、その挫けない精神、意思の強さこそが描きたかったテーマだったからである。そのテーマは、監督自身に乗り移ったかのように突き動かしたのだろう。

この映画と似通った点があるのが「地獄の黙示録」である。川を上り途中で困難な出来事に遭遇するという共通点がある。しかし、本作の方が製作は早かったのでないか。公開は逆かもしれないが、コッポラはこの映画を真似たとかいう記事が当時あったように記憶しているが、違うかも。正確でないが、そのようなことを思い出しました。

<フィッツカラルド/スタッフ>
監督:ヴェルナー・ヘルツオーク
出演:クラウス・キンスキー、クラウディア・カルディナーレ
製作:西ドイツ 1982年公開

参考記事:柳下毅一郎 フィッツカラルド解説
http://pandorafilms.wordpress.com/herzog-talk1/

<Amazonレビューより>
19世紀末のペルー。カルーソのオペラを聞きたいがばかりに、アマゾン川の上流にオペラハウスを建設しようとするフィツカラルド。彼の指示のもと、巨大な白い蒸気船が川を上り、山を越えようとする。ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督の代表作『フィツカラルド』という映画を一言で言ってしまえば、妄想に取り憑かれたオペラ好きの自称実業家が、巨大な船で山を越える映画である。(斉藤守彦)

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