■小説|チンピラの夏(3)真夏のメロディー

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微かに聞こえる波の音が、オレを癒すかのようだ!

<前回までのあらすじ>
 オレは、テキヤ系組織の一員だ。普段は、地元のスーパーでクレープの屋台を出している。夏も盛りになる頃、社長に呼ばれて半島の南端にある海の家に行けと言われた。海の家では夜になるとクラブ営業をしていて、そこの防犯要員としてかり出されたのだ。

チンピラの夏 その3 真夏のメロディー

作:cragycloud
登場人物:オレ

 空は真っ青だ。見渡す限り雲もない。どうしたもんか、オレがここに来てからずっとこんな感じだ。オレは、いま半島の南の先端にいる。夏は海水浴場として賑わうところだ。客の入りはまあまあというところか。

 毎年来てる訳ではないので、よく知らないが、それなりの人出であるらしい。オレは、ここにボディガードとしてやってきた。しかし、海の家でかき氷をつくっている。

 なんだ、これは?、と想いながら…。

 ここにやってきた当日だ。ここの店長に何をしたらいいかと聞いたら、かき氷つくってよ。と言われたのだ。それは、いったいなんのことだ。

「オレは、あのボディガードを」と言いかけたら、店長は空かさず言ったのだ。
「あ、そうそう。その件だけど。それは夜になったらお願いするよ」

「あ、そうすか」
「聞いてると思うけど、ここは夜はクラブ営業するから」

「まじすか」
「マジよ。けっこう賑わうよ。けど、たまにやな客もいてね。だから、あんたが来た訳よ。判るだろう」

「なるほど…」

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 それから、昼間はここでかき氷をつくっている。やれやれだ。夜は、いまのところ何事も起きていない。こっちもやれやれだ。東京方面からきたイカしたオネーさんがけっこう多くて驚いた。地元のちょっと悪ぶった連中のたまり場であるが、それほど店に迷惑を掛けるほどのことは起きていない。いまのところは。

 店長によるとオレが来る前にトラブルがあったらしい。警察ざたにすると経営できなくなるから、なんとか穏便にすましたそうだ。なにしろ、違法営業だから仕方がない。

 海の家は、思っていたよりずっと立派な造りである。仮設ではあるが、夜も営業するから多少防音も考えたようだ。しかし、それはなんの役にも立っていない。なにしろ、夜の営業時は音がでかいのだ。幸い民家からは遠いが、それでも充分騒音だろう。

 いずれは苦情がくるだろう。早いか、遅いかの違いでしかない。とにかく、稼げるうちに稼いでおこうということだろう。

 店長は、ゴウさんというオレより少し年上のしきり上手な男だ。彼は忙しく、あまり話したことはない。一応、ここを仕切る下北組の関連会社の一員だそうだ。つまり、企業舎弟のようなもんか。下北組は、直接運営は行っていないようだ。

 店の運営は、すべて関連する会社にやらせている。この地域では、夜の商売は元より不動産、産廃などにも関わってるようだ。

 オレのいる組織より、いわゆる本来のやくざに近いかもしれない。しかし、オレもやくざだ。だが、暴力団ではない。

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 そんなことをだらだらと考えながら、そろそろ一週間が立とうとしていた。昼前に起きて、それから海の家に行ってかき氷をつくって、夜になるとクラブの準備してボデイガードとして店の中をうろちょろしている。

 地元のスーパーでクレープ焼いてるよりは、多少気がまぎれて助かっている。地元じゃ、そろそろ祭りが本格化する頃だ。花火大会もある。たぶん、その頃には呼び戻されるだろう。

「ねー、あの男がしつこくって困ってんだけどー」
と、カオリというこの店のスタッフが口をとんがらせてオレに訴えかけてきた。

「しょうがねーな。どこのどいつだ」
「ほら、あそこにいるボーズのおとこよ」

「わかった。オレが処理するから」と言ってからオレはそいつの元へと向かった。

「お客さん、失礼します。わたしここのセキュリティーのもんです。酔ってるのは判りますが、お店の女の子にはほどほどにしてやってください。頼みますよ」そいつは、見るからに悪そうな顔と衣装であった。今風のタトゥーも見える。

「あ、そう。なにしろ酔ってるからさー。ごめんね」と以外にも、すんなり受け入れてくれた。多少、肩すかしだったが、助かった。

「あのー、聞いていいすかね。あなたは、あっち方面の方ですか?」なんのこっちゃと思ったが、答えてやった。

「あー、見たとおりですよ」そんなの自分から言えるかよ。と思いつつも落ち着いたふりして答えた。

「やっぱり、そうですよね。どうもすみません」

 なんとか、事なきを得てよかった。ほっと胸を撫で下ろしているとカオリがやってきた。経過を報告してやった。彼女もやっかいなことにならなくてほっとしたと言っていた。このまま、何事もなく今日も終わってくれる事を願って、オレはその場を離れた。

 昨日というか今日というか、とにかく飲んだ酒のせいでのどが乾いて起きた。水分が無性に欲しかった。実は、オレはまだ19だ。見た目よりずっと若いのだ。だから飲んだというよりは、飲まされたといった方が正確か。例のカオリや他のスタッフから店が終わったあとに誘われたのだ。

 本当は帰って寝たかったが、付き合いも大事だろうと思い直し、一緒に飲んだのだ。

 そのせいで、たぶん今日は体がきつそうだ。ま、仕方がないか。

 ここへ来る前は、なにか良い事が起きないかと期待していたが、いまじゃとにかく寝たい。いかすオネーさんもどうでもいい感じだ。昼から夜までオレは何をやってるのか。またぞろ疑問の虫が騒ぎだしていた。やれやれである。

 宿舎である部屋の外からは、わずかに波の音が聞こえてくる。

つづく!

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