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■小説自作|なんでも始末屋 その2「セレブスキャンダル」

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セレブは、みなどこか病んでいるようだ!

なんでも始末屋 その2「セレブスキャンダル」

作:cragycloud
登場人物:オレ(元チンピラの探偵)

 オレの住むビルには、管理人であるオッサンこと小山さんという人がいる。この人は、元ジャーナリストらしい。これは、本人が言っていることで本当かどうかは知らない。

 しかし、いつもパソコンに向かって何かを書いているので、まんざら嘘ではないかもしれない。その風体からして一流だったとは思えないが、もっとも見た目で判断できないのが才能というやつである。

 見た目は老けた中年だが、実際は40過ぎたばかりらしい。老けて見えるのは頭髪が薄いからだ。すだれのようになった頭髪をいつも鬱陶しそうにしている。そんなに邪魔なら坊主にすればいいと思うが、少なくなった頭髪が本当は愛しいらしい。

 そんなオッサンであるが、なぜか人が癒される雰囲気を持っている。太りぎみの体型が、クマモンかふなっしーを彷彿させる。

 オッサンは、どうやら筋の悪い金融に騙されて多額の借金を背負ったらしい。その金融会社の元締めは、彼が利用できる技量を持っていると判断し、ある筋の関係者に紹介した。その結果、こうして管理人をしながら怪しい原稿を書いている。

 はっきりとは判らないが、どうやら総会屋とか右翼の依頼で書いているようだ。彼の借金が清算される日が、果たしていつになるか。それは知る由もない。

 オレが仕事に出かけようとビルのエントランスに向かって歩いていると新聞を抱えたオッサンと出会った。彼は「お、お出かけかい」と声をかけてきた。

 どうでもいい会話を交わしていると、獰猛な犬種の馴れ馴れしい犬がやってきて、尻尾を振りながら2人の周りをぐるぐると回った。犬の頭を撫でてやってから、オレは古くて汚いビルの外へと出た。

セレブのやつらは、ほんとに病んでるな

 オレの今回の案件は、芸能世界の大御所となるセレブ様のスキャンダル封じだ。ほんとにあいつらときたら病んでるとしか思えない。すべての芸能人がそうだとは思わないが、かなりの確率で病んでるやつが多いだろう。

 有名人になると何かが、壊れるのかもしれない。普通でいられない何かがそこには潜んでいるのか。頭がいい方ではないオレには理解不能だ。

 しかし、そういう輩がいるからオレに仕事が回ってくるともいえる。お互い様か。ま、いずれは何か役得があるかもしれない。などと考えながら、仕事の元請けである以前勤務していた会社へと向かった。株式会社「黒澤ロゴス」というのが、その会社名だ。

 警察OBが経営するセキュティー関連会社の小会社である。以前はセキュリティー関連会社の一部門だったが、ある時期から独立した会社となった。

 仕事の内容が、常に塀の上を歩くようなものだから、本社から離した方がいいと経営陣が判断したのだろう。会社は六本木の住宅地の一画に建つ一軒家である。

 この家もどうせある筋の物件であるのは間違いない。会社の仕事内容には相応しくない瀟洒な家である。入り口で呼び鈴を押して、仰々しい門を開けて邸内に入った。入り口を入ってすぐのところには、黒塗りのベンツが鎮座していた。

 このベンツもどこからか、ただで手に入れたものだろう。応接室で待っているとかつての上司である社長の黒澤がやってきた。手には鞄を持っている。「おー、久しぶりだな。どうだ、住み心地は」と言ってきた。オレが住むビルの手配もこの社長がしたのだ。

 挨拶もそこそこに、仕事の話になった。一応、メールで送られた資料には目を通したので内容は把握していた。

 会社に来たのは、金を受け取りにきたのだ。もちろんオレのじゃない。これから、スキャンダル封じに使う軍資金である。オレは、社長から鞄を受け取り、書類にサインをして会社を後にした。金はすべて現金である。鞄には500万入っている。

 誰にどれだけ渡すかは、オレに一存されている。しかし、後で詳細な報告をしなければならない。もし、ねこばばしたら、そんな事は考えたくはない。

 この仕事を受けたのは、オレだけではない。少なくともあと2人はいるはずだ。とすると1,500万から2,000万の金が動いている。元請けは、その倍で請け負ったか、それに変わる利権を獲得したはずだ。オレが、担当するのは3人だ。

 この3人に配る金は安いに越したことはないが、それによって効果がなかった場合は、オレの責任になる。

 このさじ加減が、難しいところだ。

スキャンダル封じと同時に擁護する記事を書かせる

 オレは、ある一流と言われる出版社の週刊誌編集長に電話をした。すでに、黒澤から連絡がいっているはずだ。黒澤の名前を出すとすぐに待ち合わせの場所と時間を言った。編集長は、夜9時に銀座のクラブを指定した。名前は聞いた事がある。

 オレは、黒澤に連絡して場所と時間を報告した。折り返し、そこのママには話を通しておくと連絡が入った。

 これは、いざ女を手配する際には、ママに相談せよという意味だ。

 オレの役割は、編集長にスキャンダルをこれ以上取り上げないこと、そして逆に擁護する記事を書かせることである。その変わりに金を渡し、さらに女が必要なら手配することである。さて、オレは夜の仕事に向けて一旦家に帰ることにした。

 なんせ場所が銀座だ。それなりに相応しい格好が必要だからだ。かといって編集長より良いものを着ていく訳にはいかない。

 とにかく、すべてさじ加減が難しいのだ。そんなことを考えながら、六本木駅へと向かって歩き始めた。

つづく

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