■小説自作|なんでも始末屋 その3「セレブスキャンダル」続編

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スキャンダルは、持ちつ持たれつの関係式である!

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新宿3丁目交差点

<前回のあらすじ>

 元チンピラのオレは、どういう訳かセキュリティー会社の下請けでセレブのスキャンダルをもみ消す、または沈静化させる仕事をしている。今度の仕事は、芸能界の大御所と云われるセレブのスキャンダルである。オレは、仕事の元請けから依頼されて、さっそく始末屋を開始した。

なんでも始末屋 その3「セレブスキャンダル」続編

作:cragucloud
登場人物:オレ(元チンピラの探偵)

 スキャンダルの始末屋として、オレはもう5年ぐらいになるだろうか。いいかげんうんざりするのは、セレブたちのやりたい放題の趣向性である。どうやったら、こんなに常識を外れた無謀な行動がとれるのか。なんとも不思議である。

 どこかしらに自分は何をやっても許されるという思いがあるのか。または、誰かが守ってくれると信じているのか。

 それは知らないが、たがが外れているのは確かだ。

 オレは、先日、有名週刊誌の編集長に某セレブのスキャンダルをこれ以上追求しないように工作をした。その編集長は、変わりに別のスキャンダル情報を要求してきた。さらに広告主を紹介してくれと言ってきた。これはよくある駆け引きだ。

 そのために、オレの元請けはセレブのスキャンダル情報を絶えず収集し集積している。だから、その案件には前向きに対処することにして、編集長には100万円を、そして部内の調整費用として50万円を渡した。

 工作資金は残り350万円となった。別の有名雑誌の編集長には、すでに電話で金額の調整ができていた。それは、銀座と六本木のクラブのツケを清算することであった。

 約200万であった。おれは了解した。次は、フリーランスのライターであった。こいつは、もっとも手強い相手と見ていた。今回のスキャンダルに相当入れ込んで取材していたようである。各週刊誌、月刊誌にも売り込んでいたようだ。

 新宿3丁目にある、懐かしい雰囲気が漂う喫茶店で会う事にした。実はこいつとは、今回が初めてではない。業界では、ある種の有名人であった。

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喫茶室 ルノアール

「おー、久しぶりだねー」とライターが言った。
「相変わらず、ご活躍なようですね」とオレはライターの顔を見ながら言った。

「ま、貧乏暇なしだからね。」とライターは世間並みな事を言って、煙草に火を付けた。
「そうですか、いつかの女優の件ではだいぶ稼いだと噂ですよ」

「それは嘘だね。よく言うよ。僕はね、ジャーナリストだからね」と言って、にやりとした。よく言うよとはお前のことだ。とオレは思っていた。

「ところで、今回の件ですが、これぐらいでいかがですか」と人差し指を立てた。
「んー、そうだね。それより何かいいネタはないかね。黒澤さんに言ってみてくれないかな」と、こいつもネタを要求してきた。

 一回こっきりの100万円だけでは不満らしい、これをきっかけに新しいネタを得て記事を書いて、いくつかの出版社に売りつける事でさらに儲けたいようだ。これには、フリーランスならではの生き様を見た思いである。

 オレは、当然であるかのように難しい顔をしてみせた。ネタはあるが、簡単に手に入ると思われると後々がめんどーである。

 だから、今回だけを強調し、無理をしてみると約束した。

 オレの仕事は、これで概ね終了した。後は、週刊誌の編集長を夜の接待に1、2度招待することぐらいだ。その費用は、当然元請けから出る。元請けの黒澤ロゴスに報告を入れて、ネタに関する情報も手に入れた。

 頃合いをみて、この情報を渡して今回の仕事は終わりだ。オレは、清算した工作資金から余った金額の半分をボーナスとして貰うことができた。僅かであるが、たいして日数も掛からなかったのでこんなもんだろうと納得した。

 今回のスキャンダルの内容だが、芸能界の大御所が起こした脱税や闇社会との関係に絡む件と、その息子が起こしたクスリ、レイプ、窃盗、強盗などの事件が、多層になったスキャンダルであった。

 この大御所は、テレビ会社の幹部とも懇意のため干されることはないようだが、それでもスキャンダルの沈静化が必要であったのは間違いない。

 ま、そんなところだ。しかし、オレたちが工作したことで事が沈静化するかどうかは、誰も知る由はないだろう。最終的には世間の反応が決めるのだ。

不釣り合いな関係とお似合いのコンビ!

 仕事も一段落して、オレは久しぶりに昼間から買い物に出かけた。なにしろ、部屋には、ほとんど日用品らしいものがないのだ。渋谷まで出かけて、東急ハンズで適当に見繕って買った。両手に一杯になった袋を下げて、山手線に乗って目黒駅で降りた。

 いつものように権ノ助坂を歩いて下って、煤けた看板のラーメン屋の角を右に曲がり、急な坂を降りて行った。

 急な階段を下りていると前方に見覚えのある犬がいた。しかし、一緒にいるのは、同居するおっさんではなかった。なんと、女子高生らしい。

 それは、たぶん間違いない。犬は、獰猛で有名な犬種だが、大人しい性格である。尻尾を振りながら、リードを手にした女子高生をチラチラと振り返っている。オレは、犬と女子高生のすぐ後ろまで来ていた。

 犬は、オレに気が付いて寄ってこようとした。そのとき、女子高生が声を発した。

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二階堂ふみ

「駄目よ!」と犬を一喝して犬の行動を一瞬で制御した。その声は、きびしい響きで、とても女子高生のものとは思えないほどであった。
「あー、いいんだよ。別に大丈夫だから」とオレは言った。犬は、オレを上目づかいで見つめながら飛びつきたそうにしている。

「あぶないよ、おじさん。この犬、獰猛だからね」と女子高生の彼女は言った。
「いいんだ、オレは知り合いなんだ。この犬とさ」

「あー、そう。飼い主の知り合い?」とぶっきらぼーに言葉を投げてきた。
「そうそう、頭の薄いおっさんだろ。知り合いだよ」とオレは答えた。この女子高生は、何故か言葉尻がきついなと感じていた。

 この女子高生は、どうやら日出学園の生徒らしい。制服に見覚えがあった。背丈はあまりないが、機敏そうな体型と動きが感じられた。そして、何よりミニスカートが短い。

 いまどきの女子高生は、こんなもんか。さらに、何かが変というか。独特のオーラのようなものを発していた。何が不満で、そんなにきつい顔つきをしているかしらないが、簡単には人を寄せ付けない何かを漂わせていた。

 そんな雰囲気を漂わした女子高生と獰猛な犬種の大人しい犬は、どちらが番犬なのか、判らない関係であった。毅然とした女子高生のほうが、完全に犬を従えていた。

 犬も何かを感じているようだ。きっと、そうに違いない。そんなことを考えていたら、オレの住んでいる怪しいビルの前にたどり着いていた。女子高生は、慣れた手つきでドアを開けて犬を入れてから自分も後に続いた。

 オレも、彼女たちの後に続いて我が家に入った。奥から頭の薄いおっさんが出てきた。

「あー、きなちゃん。いつもありがとね」とおっさんは彼女に言った。そして、オレを見てから、

「きなちゃん、この人もこのビルに一緒に住んでるんだよ」と彼女に言った。それから、おっさんは彼女を紹介しようとしたが、それを制して彼女が先に言った。
「アタシ、きなこです。よろしく」

 き、きなこかよー。なにきなこだ?。とオレは思っていた。犬が、オレの足下で戯れ付いていたが、それも気にならずに、へー、きなこかーと考えていた。

つづく

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園子温監督作「地獄でなぜ悪い」 新宿バルト9他、全国公開中!
二階堂ふみが、やくざの娘を演じている。

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