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■映画|ヒッチコック 妻アルマとの物語

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ヒッチコックは、ブロンドがお好き!

サスペンス映画の天才ヒッチの私生活とは、如何に

この映画は、サスペンス映画の秀逸な作品を多く残したアルフレッド・ヒッチコック監督(1899〜1980)の晩年の姿を描いたものである。映画の舞台は、現代のホラーの先駆けともいえる「サイコ」を撮影している最中に起こる様々な出来事である。彼の妻アルマが、私生活だけでなく作品づくりに重要な存在であったことが、そこでは描かれている。

ちなみに映画「サイコ」は、アメリカの希代の殺人鬼エド・ゲインをモデルとしたロバート・ブロック原作に基づいたものである。なお、映画化権はヒッチが匿名で9000ドルという破格の安さで獲得している。そして、妻アルマは脚本づくりにも協力している。

ヒッチコックは、最近の監督たちのように大学で映画を専攻した訳ではなかった。元は広告のデザイナーであったそうである。その後、どういう訳か映画会社に入りそこでもタイトルなどのデザインをしていた。そして紆余曲折あって監督となったようである。この経緯は、同じ英国出身のリドリー・スコット監督にも似ている。彼も、元はデザイナーであった。BBCなどでセットデザインなどをしていたようである。

それはさておき、ヒッチであるが、監督となった後は順風満帆といったように端からは見えるが、実際は映画を撮ることは大変だったようである。この映画の中でも妻アルマと会話するなかで資金調達に苦労したことが語られている。映画の舞台でもある「サイコ」の撮影は、予想していたものと違って困難に遭遇していた。それは、映画会社の資金提供を断られていたことである。

なんと「サイコ」は、ヒッチ自らの資金で造っていた。自宅を担保に入れたのは、後のコッポラなどと同じである。いわば崖っぷちで造られたのが「サイコ」であった。ヒッチはやはり映画を好きでしょうがない。自分のやりたいテーマをどうしても実現したい。それだけで、会社が進める企画を蹴って借金してまで映画製作をしてしまうのである。映画には何か人を惑わす毒があるのかもしれない。

そのような苦境の中でも妻アルマは一歩も引かずにヒッチを支える。これが、なんとも男前である。彼女は女性だけど、ヒッチの女性ぽい性格とは対照的である。

ちなみに妻アルマは、脚本家でもあった。ヒッチの多くの作品で協力しているが、表舞台に出る事はなかった。それが彼女のスタイルであった。映画で見るとかなり有能な女性だったらしい。ヒッチの業績の半分は彼女のものと言っても過言でないくらいである。しかし、実際のところはよく分からない。

ヒッチの夢の女、それがブロンド美人である

有能で彼に尽くす妻がありながらヒッチも男である。やはりそこは男性特有の野心ともいうべきものがあった。それが、彼のブロンド美人への極端な愛情であった。それは、まるで夢の女を追いかけるかの如く、執拗であり変質的であった。それが、サスペンス映画の天才の影の部分であった。

ヒッチの映画でヒロインといえば、言わずと知れたグレース・ケリーである。彼女こそ彼が愛してやまないブロンド美人であった。清楚で上品というエレガンス美人こそが、彼の理想であったらしい。彼女とは何作も一緒に映画を撮るが、作品はヒットしたものの、男として何ら得るものはなかった。それは、あわよくばと考えていた節がヒッチにはあったようだ。

なにしろグレースは後にモナコ国王と結婚し王族となったが、その実態は共演する男優とはすべて浮き名を流すという女性であった。もっと悪くいえば尻軽女とも言われていた。ある男優などは、後に「彼女は一見お堅いイメージだけど、パンツを脱いだ後はめちゃくちゃだ」というニュアンスの言葉を残している。

彼女が、映画スターの頂点にいるうちに王族と結婚したのは正解と言わざる得ない。あのまま、映画界にいたら何れはスキャンダルに飲み込まれてズタズタになっていたかもしれない。
しかし、そんな彼女に歯牙にも掛けてもらえなかったヒッチの想いを考えるとなんともはやである。彼は、いくら地団駄を踏んでもやりきれなかったに違いない。

そんなヒッチは、晩年になってやらかしてしまう。「マーニー」(64年)という映画を撮影中に主演女優のティッピ・ヘドレン(鳥に主演)に対し、自分との肉体関係を迫ったとまことしやかに伝えられている。これまでなんとか理性で抑えていたものが、晩年となりたがが外れたようである。

ちなみに当時のヒッチは64歳であった。ぎりぎり男の本能が勝ったのかもしれない。しかし、その実態は彼のみぞ知ることではある。


映画「裏窓」撮影時 右端/ヒッチ 女性/グレース

ヒッチコック これは観て損の無い映画である

ヒッチを貶したようなことを書いたが、ある意味では男である証拠でもある。したがって、なんら不思議なことではない。と個人的には思う次第である。

この「ヒッチコック」という映画は、彼の人生の一時代を取り上げたものであるが、その中身は濃いと言わざる得ない。興味深い出来事が数々あり、そんなヒッチと彼の妻アルマの奮闘を観るにつけなんだか愛おしくなってきたのであった。

ヒッチを演じたアンソニー・ホプキンス、妻アルマを演じたヘレン・ミレンという両アカデミー俳優の演技を観るだけでも十分に満足であるが、脚本や演出も上出来の見応え十分な作品である。あくまで個人的な見解ですが、またヒッチコックの作品の数々を堪能したいという思いに駆られた作品でした。

また、映画製作の裏側を描いた傑作のひとつになったのではないかとも思います。


ヒッチコックと妻アルマ

■ヒッチコック 2012年(2013・日本)

監督:サーシャ・ガヴァシ
脚本:ジョン・マクラフリン
原作:スティーヴン・レベロ「アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ」
出演者:アンソニー・ホプキンス
   :ヘレン・ミレン
   :スカーレット・ヨハンソン
   :ジェシカ・ビール
公開:アメリカ2012年 日本2013
上映時間:98分

参考文献:映画宝島・地獄のハリウッド ウィキペディア

「ヒッチコック&メイキング・オブ・サイコ」 改訂新装版
本書は、あらゆるサイコ・スリラーの先駆けである『サイコ』ができるまでの内幕を余すところなく伝えたノンフィクションで、作者のレベロは、映画史上もっとも大胆不敵にして、もっとも影響力のある一作がこの世に生を受けるまでの舞台裏に迫っています。
ヒッチコックの個人ファイル及び、スターやライターや技術スタッフとの微に入り細にわたるインタビューによって、さすがは巨匠とうなるヒッチコックの現場での斬新な視点に肉薄しています。

コメント

  1. VALERIA より:

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    こんにちは!1月25日から全国の劇場で「スクリーン・ビューティーズVol.3ヒッチコックとブロンド・ビューティー」と題して「めまい」「泥棒成金」「マーニー」をデジタルリマスター版で上映します!
    http://www.screenbeauties.com/
    この機会にぜひ大スクリーンでヒッチコック作品をお楽しみください!