■デザイン|デザインの見方(3)アールヌーボー

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新世紀目前の1900年、その美術は世紀末を彩っていた

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ワグナー マジョリカハウス

前回、1925年様式のアールデコを紹介したので、次はロシア・アバンギャルド、またはバウハウスをと考えていたが、やはり19世紀末を飾ったアールヌーボーを外すのはいかがかと思い直して、急遽変更した次第である。さて、アールヌーボーとは如何に。

世紀末美術とは何か、その曲線の美は何故失われたか

当該ユーザーは、アールヌーボーに強い関心を持っている訳ではない。どちらかといえば、アールデコの方が好きである。これは個人の好みの問題であるから、なんとも仕方がない。したがって、この世紀末美術とそのデザイン様式については、海野弘著「アールヌーボーの世界」を参考に紹介したいと考えます。

前回でも書いたが、ポスターというものが注目されたのはこの時期であるらしい。それは印刷というものが発明されて活用されるようになったからである。それによって美術というこれまで額縁に収まっていたものが、街路に出るきっかけとなったのであった。いわば、街路=ストリートは美の展示場となったのである。

19世紀末というのは退廃とイコールと捉えられることが多いが、違うか。ご存知の様に19世紀は英国が世界の覇権を握っていた時代であった。しかし、その要であったヴィクトリア女王もお年を召していた。そして、そんな爛熟期の世の中に現れたのが、アールヌーボーという美であったらしい。

芸術というには、あまりに情緒的すぎて、デザインというには計画性がない様な気がする。そんな雰囲気が漂うのが、アールヌーボーではないかと個人的には思うが、如何に。

アールヌーボーは、19世紀中頃から第一次世界大戦が始まる頃までの時期にあった様式美と言われている。その美は、絵画や彫刻といった純粋芸術より、応用芸術と言われた建築や装飾美術に顕著であったそうだ。つまりデザインの世界での美といっていいはずである。もちろん、それ以外にも広がっていたのは言うまでもない。

しかし、応用美術とされたことが、後世になって軽く見られる要因ともなった。それはさておき、その美の様式はどのようなものか。特徴は、なんといっても曲線である。極端にいえば曲線のみで構成された美であった。その作品を見てみると本当に直線が見当たらないものが多いのである。優雅に流れる曲線は、何を物語っていたのか。

それは、花、あるいは植物を連想させる美であった。したがって、曲線が多くなったのは必然であったのは言うまでもない。

後の様式美「アールデコ」は、直線の美であった。それは機能を追求した結果といってもいいはずである。翻ってアールヌーボーの曲線は、花や植物の美を引用しながらも人間の感情、情感を表現したといっていいはずである。そのようにしか考えられないが、違うだろうか。

曲線で構成された装飾性過多のそのデザインは、何故か退廃感を兼ね備えた魅惑性を有していた。過剰なまでに装飾された美の様式が持つ要因とは何か。それは、当時のヨーロッパが安定期にあり繁栄していた結果であった。ベルエポックの時代と称される優雅な時代であった。そして、それは来るべき破綻を前にした浮世離れした時代でもあった。

アールヌーボーの曲線の美は、変革の時代を前にした花の美であった。しかも徒花とも言ってもいいはずである。しかし、その美の表現には、何処か人間の根源性が表現されているように感じるが、それは如何に。

何れ来る破綻(戦争による)を予感したのか。そのようにして見るとあの優雅な曲線が不気味にも見えてくるようである。それが、退廃感に繋がっているのかもしれない。そして、おのずとその美の終末を予感していたようである。

アールヌーボーの様式美とは

近代建築デザインの元祖といえばコルビジェである。しかし、この機能主義の権化かと思われるコルビジェは、当初アールヌーボーの作家に弟子入りしていた。そして、「装飾は死んだ」と言い残して、機能主義を追求する建築家となったそうである。

しかし、後年のコルビジェは、何故か機能主義を捨てたような建築や絵画を多くものにした。例えば、ロンシャンの教会などは機能性とはかけ離れた建築であった。それは、何故なのか。あれほど嫌ったはずの情緒性を取り戻したのか。

それはさておき、アールヌーボーの様式美を見て頂く方が理解が早いはずである。代表的な宣伝、装飾、建築等を以下に紹介いたします。有名過ぎていまさらというものもありますが、いま一度ご覧頂ければ幸いです。

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ミューシャ
アールヌーボーといえば、ミューシャというぐらい有名であり、世紀末を飾ったグラフィック・アーティストの代表である。 

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ワグナー カールプラッツ駅舎
オットー・ワグナーは、建築家であり都市計画家でもあった。音楽家のワグナーと一緒の名前で紛らわしいが、こちらのワグナーも只ものではない。カールプラッツの駅舎は装飾を除くと合理的な建造物らしい。 

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ギマール 地下鉄入り口
これは有名な地下鉄の入り口。その植物の蔦のような柱や構造物は、実に周囲の緑と解け合っている。

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階段と手すり 階段の手すりのカーブが実に美しい。

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家具とインテリア
現代ではこのような曲線は、無駄として排除されるに違いない。しかし、その無駄が創りだす美のなんたる趣の良さか。それを思うと合理性とは何ぞやと思う次第である。

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モリス 壁紙
言わずと知れたウィリアム・モリスの作品。無限に続く植物の連鎖である。

なお、「デザインの見方」というタイトルどおりの内容には至らなかったと思います。あしからずである。次回にご期待して頂ければ幸いです。

参考文献:海野弘著/アールヌーボーの世界、他

<アールヌーボーの世界/海野弘著>
十九世紀末から二十世紀初頭にかけて、一世を風靡した新しい美術様式「アール・ヌーボー」は、汎ヨーロッパ的な美学運動となってさらに開花した。芸術運動を越えた世紀末の時代精神を、現代の視点から捉えなおした魅惑の処女作、待望の改版。

アール・ヌーボーの世界―モダン・アートの源泉 (中公文庫)

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