■映画|ジャッキー・コーガン 殺し屋というビジネス

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アメリカは国じゃない、ビジネスだ

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殺し屋は言った、ファッキン・マネー

ブラッド・ピットは、ゾンビ映画「ワールドウォーZ」で見事な転けっぷりを見せてくれた。陳腐にもほどがあったその映画は、ダニー・ボイル監督の同じくゾンビ映画「28日後…」の見事さを今更ながらに際立たせる結果で終わった。ブラッド・ピットもこれまでか。と感じたがそれは早急過ぎたようだ。

「ジャッキー・コーガン」という映画のなかで、反社会勢力の殺し屋を演じたブラッド・ピットは、繊細さと大胆さを合わせ持った役どころを静かに演じてみせた。そして、彼はいまだ輝きを有していることを証明してくれた。そのように映画を観たあとに感じた次第である。

ブラッド・ピットは、すでに大金持ちとなり、またすこぶる美人の妻もいる。さらに子供も多数いることから、ハングリーさが必要な役者稼業からは足を洗って製作に専念するかと思われた。しかし、それは見事に裏切られた。彼は、まだ十分に魅力を備えた役者であった。企画と脚本さえ魅力的であれば、かつての輝き以上の仕事をしそうである。

この「ジャッキー・コーガン」という映画は、娯楽作品というよりもアート系作品に近いかも知れない。予算も少ないはずである。しかし、その内容にはアート系特有の何か社会に訴えようとかいう勿体ぶったところは微塵もない。ただひたすらに、反社会勢力から送り込まれた殺し屋が、そのビジネスを遂行する姿を淡々と映像にしている。

しかし、実はとんでもない仕掛けに満ちた映画であったらしい。それは後半に書いてあります。その前に映画の全体的な印象を以下に紹介いたします。

娯楽作品として期待すると少々期待はずれかもしれないが、じっと観ていると引込まれる魅力に溢れた映画である。個人的には、そのように感じたが如何に。

これといったアクションが目立つようなこともなく、殺し屋とその標的、また殺しの依頼者との関係を静かに、まるで日常風景の如くに描いて行く。まったくと言っていいほどに起伏のないストーリーは、あとは役者の演技力に任せたといわんばかりであった。

しかし、そのような演出手法が見事にブラッド・ピットをはじめ、役者陣の見事な演技となって現れたようである。そうとしか思えないほどそれぞれの役者が、その役にぴたりと嵌っていたと感じた次第であった。

殺し屋が主人公といえば、ドンパチが定番である。それが当然であるかのように、銃をぶっぱなす。観客もそれを期待している。そんな映画とは一線を画したこの映画を企画・制作する決断をした製作会社に関心する。ちなみにブラッド・ピットの会社プランBも一枚噛んでいるようである。

冒頭に書いた「アメリカは国じゃない、ビジネスだ」というのは、ブラッド演じる殺し屋が、約束した報酬を勝手に下げた依頼者に向かって、静かに怒りを込めて放った言葉である。そして、さらに「ファッキン、マネー!」と言い放つのであった。

また、映画のなかでは大統領選のなかできれいごとを並べたオバマの演説を効果的に使用している。その演説をバックに、殺し屋は次の様に言い放つ。「アメリカは共同体なんかじゃない、個人で成り立ってる」と。

共同体幻想を吹き込み、世の中を一定の方向に向かわそうという大統領の目論みを物の見事に看破して、事実をあからさまにしている。ブラッド・ピットは、オバマが嫌いなのか。それは知らないが、ハリウッドや映画界は民主党びいきではなかったのか。どうやら、オバマ大統領のかつての輝きは、すでに映画界にはないようである。

このギャング映画は、アメリカ金融不安の比喩として描かれた

映画批評家の町山智宏氏が、この映画について次の様に語っています。

「ジャッキー・コーガン」は、サブプライムローンをギャングの賭場荒らしに象徴させたアメリカ経済の話です。ということだそうである。2008年といえば、リーマンショックに揺れた年であった。

すでにだいぶ前から、金融不安が一部で叫ばれていた。サブライムは危ないと。そして見事にそれは弾けて世界を不安に陥れたのであった。

時代設定の背景は08年秋の金融危機です。博打の胴元レイ・リオッタ処刑は、ブッシュの公的資金注入に対するアンチテーゼです。最後は11月のオバマ勝利演説です。

背景で聞こえる08年金融崩壊のニュースやブッシュの公的資金注入演説がギャングの抗争として戯画化される、という構造の映画です。(以上、町山智宏氏)

なるほど、そうであったか。映画を観ただけでは分からなかったが、そのような背景があったからこそ、静かな趣にも深い味わいがあったようである。

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■ジャッキー・コーガン 主演:ブラッド・ピット

<ストーリー>
大統領選の真っ只中にある2008年のルイジアナ州ニューオーリンズで、チンピラのフランキーは仲間のラッセルと賭場強盗を働く。強盗の計画は刑務所で知り合った中年男ジョニーによるもので、賭場の雇われ支配人マーキーの自作自演に見せかけるというものであった。

その賭場は以前にも強盗に遭っていたが、それはマーキーが仕組んだもので、そのことをマーキーが周囲に吹聴していたことから、また同じような強盗事件が起きれば間違いなくマーキーによるものと見なされるというのである。

強盗は無事に成功し、被害に遭った組織は番頭格であるディロンに強盗犯を捜させようとするが、病気療養中のディロンに代わり、殺し屋のジャッキー・コーガンが仕事を引き受けることになる。(ウィキペディアより)

<スタッフ>
監督・脚本:アンドリュー・ドミニク
原作:ジョージ・V・ヒギンズ「Cogan’s Trade」
製作 ブラッド・ピット、他

<キャスト>
ブラッド・ピット(ジャッキー・コーガン)
スクート・マクネイリー
ベン・メンデルソーン
ジェームズ・ガンドルフィーニ
リチャード・ジェンキンス、他

公開:アメリカ2012年 日本2013年
上映時間:97分

<マフィアの興亡>
シシリー島にルーツを持つ世界的組織犯罪グループの実態。闇の世界を支配するマフィアはどのように生まれ、アメリカにどのように根を下ろしていったのか。決死のインタビュー、内部告発、証拠写真で生々しく描き出す。

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