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■映画|サンセット大通りとデビッド・リンチ

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ハリウッドには夢と希望、そして暗い闇がある

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有名なラストシーン

ハリウッドを題材としたフィルムノワールの傑作!

ハリウッドを題材とした映画は数多く有るが、傑作と言えばなんといっても「サンセット大通り」(1950年)である。監督はビリー・ワイルダー。この映画は、ハリウッドの光の裏側を垣間見せるストーリーと秀逸な演出で、フィルム・ノワールの傑作として燦然と輝く映画となっている。また、1920年代の大女優グロリア・スワンソンが、自らを想像させる往年の大スター役を壮絶なまでに演じたことで有名である。

「マルホランド・ドライブ」(2001年)は、デビッド・リンチ監督が「サンセット大通り」に触発されて作られた映画と言われている。ハリウッドを舞台に、「死体が物語を語る」という設定もおなじである。このふたつの映画の主人公は、ともにハリウッドの世界で夢に破れて死体となっている。かたや脚本家であり、もうひとりは女優であった。

ある意味では悲劇の物語であるが、それ以上にこのふたつの映画を傑作としているのはミステリー、サスペンス、スリリング、そしてホラー?といった要素まで含んだ贅沢な魅力に満ちているからである。たんにフィルムノワールというだけでは括れない魅力をもった映画であると言わざるを得ない。たぶん。

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現在のパラマウント映画正面玄関

サンセット大通り 監督:ビリー・ワイルダー

サンセット大通りは、ロサンゼルスのハリウッドとビバリーヒルズとの中間にある。ロスの3大ストリートのひとつだそうである。そこには、現在でも映画会社やエージェントの会社が多くある。したがって、映画の題名である「サンセット大通り」は、ハリウッド映画そのものを指していた。

監督のビリー・ワイルダーは、コメディ映画の巨匠として有名であるが、監督初期にはサスペンスに満ちた作品をいくつか作っている。なかには、探偵マーロウの生みの親、レイモンド・チャンドラーを脚本家に迎えて作った作品もある。

監督のワイルダーは、この映画を撮るにあたり主演女優である往年の大スター役を決めかねて、実際の往年の大スターたちにコンタクトを取ったそうである。メイ・ウェスト、ポーラ・ネグリ、メアリー・ピックフォードなどである。いずれも1920年代のサイレント時代の大女優ばかりである。

しかし、彼女たちには問題がいくつか有り決められなかった。そこで、グロリア・スワンソンの登場である。スワンソンも当初は乗り気ではなかったが、周囲の勧めもあって役を承諾したようである。ちなみに、彼女は役柄では落ちぶれていたが、実際の生活は悠々自適であった。実業家であり、ハリウッドとニューヨークに自宅を持っていた。

余談であるが、スワンソンはケネディ元大統領の父親ジョセフ・ケネディと愛人関係にあった。これは、あまりに有名な話である。スワンソンは、ジョセフの支援で映画を独立して製作を始めるが、それは完成せず、しかもジョセフから資金を返せと言われる始末であった。ジョセフはケチで有名であった。

ちなみに、映画を完成できずにスワンソンを苦境に陥れた監督シュトロハイムが、この映画ではなんと往年の大女優の執事を演じている。なんだかすごいことである。ワイルダー監督はそうとう嫌みな人か。それとも映画に深みを与えるために忠実だったというべきか。

そんなこともあってスワンソンは、1920年代の大スターの座から静かに退場していった。そして世間がもう忘れていた頃、この「サンセット大通り」でカムバックし、その壮絶な演技で観客を驚かせたのであった。

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クラシックなインテリアが素晴らしい


町山智浩の映画塾! 「サンセット大通り」

<サンセット大通り/ストーリー>

サンセット大通りの往年のスターが住む邸宅で、一人の男が殺害される事件が起きた。プールに死体が浮いており銃弾を撃ち込まれていた。殺されたのは、B級映画の脚本家であった。

脚本家のジョー・ギリスは、脚本を映画会社に採用してもらえず、貧窮のどん底に苦しんでいた。取り立て屋に追われて逃げ込んだのは、幽霊屋敷のような寂れた大きな邸宅で、そこにはサイレント映画時代のスター女優であったノーマ・デズモンドが、召使のマックスと共にひっそりと暮らしていた。

ジョーは銀幕への復帰を目論むノーマのために、彼女が書き上げた『サロメ』の脚本の手直しをするように要求される。ジョーはノーマの要求を受け入れ、住み込みのゴーストライターとしてノーマと奇妙な共同生活を始める。ジョーは彼女に「囲われた」生活を送るようになる。

ある日、撮影所からノーマに連絡が来る。用件はノーマが所有する古い自動車を映画の撮影に貸して欲しいというものだったのだが、ノーマは自分への出演オファーだと勘違いし、撮影所にセシル・B・デミル監督を訪ねたり、美容に執念を燃やしたりするなど、妄想は一段と酷くなって行く。

一方、ジョーは親友アーティ・グリーンの婚約者で若い脚本部員であるベティ・シェーファーと2人で密かにシナリオを共作することになる。やがてジョーとベティは自然に愛し合うようになるが、その関係はすぐにノーマの知るところとなる。

ジョーはベティに全てを明かして別れを告げると、ノーマに既に世の中から忘れられた存在になっている現実を突きつける。するとノーマは、荷物をまとめて屋敷を出ようとしたジョーを撃ち殺してしまう。

事件を報道するカメラマンや記者たちがノーマの屋敷に押し掛ける。しかし、完全に正気を失ったノーマはそのカメラを映画撮影のカメラと思い込み、衆目の中でサロメを演じながら屋敷の大階段をしずしずと降りて行く。

(ストーリー参考文献:ウィキペディアより)

マルホランド・ドライブ 監督:デビット・リンチ

マルホランド・ドライブとは、ロサンゼルス北部の山を横断する実在の道であり、眼下にハリウッドを一望できる曲がりくねった道路である。映画「マルホランド・ドライブ」は、いわば上から見たハリウッドのもうひとつ景色、ダークサイドの物語であった。

監督のデビット・リンチは、この作品を「サンセット大通り」へのオマージュであると言っている。リンチ監督はそれを証明するかのように、いくつもの仕掛けを施した。死体が語るという出だしもそうである。また、映画のタイトルをハリウッド(スタジオ)を「サンセット大通り」と位置的に挟み込むかのように「マルホランド・ドライブ」としたのもそうである。

さらに、パラマウント映画の正面玄関が象徴的に現れるシーンでは、なんと「サンセット大通り」で往年の大女優が乗っていたクラシックカーが鎮座していた。これは、リンチ監督がわざわざ手配した。ちなみに、映画の予算のなかでもっとも費用が掛かったそうである。

一般の観客には気が付かないだろうという部分に拘っていたのである。当該ユーザーもそんなこと気が付かなかった。町山氏の「映画塾」を観てはじめて知った次第である。映画「マルホランド・ドライブ」は、リンチ監督特有の妖しげで意味不明な出来事が繰り返される。したがって、ファンでない人には観ていてつらいに違いない。

そこでネタバレを承知でストーリーを、さらに裏側にある隠喩などを知ったうえで観ると興味深い映画となるのではないかと想像します。

主役のナオミ・ワッツは、この映画でスターの入り口に立った。同郷のニコール・キッドマンはすでにスターであった。遅ればせながら、スターのきっかけを掴み以後は次々と大作に起用された。これはマスタベーションする演技を厭わななかったせいか。違うか。(とてもエロい演技であった)

記憶喪失の女優を演じたローラ・ハリングは、これまたエロい雰囲気がたまらなく、欧米の女性が放つエロスを集めて固めたかのようであった。これも、違うかも。個人的な妄想かもしれない。いずれにしろ映画自体が妄想を描いたものだから、仕方が無いか。

そう、この映画は妄想を描いた映画の傑作であった。

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<マルホランド・ドライブ/ストーリー>

ロサンゼルス北部を横断する、マルホランドドライブで真夜中に自動車事故が起こった。事故現場から一人生き残った黒髪の女は、傷つきながらなんとかハリウッドまでたどり着く。女性が偶然潜り込んだ家は、有名な女優ルースの家だった。

ルースの姪である女優志望のベティに見つかった黒髪の女性は、部屋に貼られていた女優リタ・ヘイワースのポスターを見て、反射的に「リタ」と名乗った。彼女はベティに自分が事故で記憶喪失になっていると打ち明ける。

リタのバッグには大金と青い鍵が入っていた。ベティはリタの失った記憶を取り戻すことに協力していくことを約束するが…。

<サンセット大通り>
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