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■映画|ストレンジャー・ザン・パラダイス 帽子が素敵

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無目的で空虚だが、何故かとても格好いい映画!

Strangerthanparadise

映画「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は、1984年に公開されて一部で人気を博した。とくにファッション関係で注目されたはずである。映画公開後、主役を演じたミュージシャンのジョン・ルーリーは、たしか日本の広告にも主演していたと思う。たしかではないが、それほど一部では評価が高かった。

監督のジム・ジャームッシュは、この作品が長編2作目(35mmは一作目)だったとか。インディーズ映画では有名だったらしいが、本作で一躍注目されたようである。本作以後は、一定の評価を得てアメリカ映画界でも独特のポジションを獲得している。

この映画には、特筆すべきストーリーは無いに等しい。此れと言ったドラマがある訳でもなく、無目的に生きるふたりの男とハンガリーからやってきた従妹の女性が織りなす日常が描かれている。しかし、画面から漂う雰囲気が実にいい感じである。なお、このいい感じを文章にするには多少無理があるかもしれない。

何故なら、感じ方は人それぞれであり、なんの感慨を持たなくても不思議ではない。そういう訳で、誰にもお勧めできる映画ではない。それは、たぶん確かである。

モノクロで描かれたこの映画に漂う空気感は、なんともだらけた空虚な感じが支配している。主人公は、ギャンブラーであり生活臭はほとんどない。生産性とは無縁のその日暮らしのような感じである。しかし、なんら悲壮感はない、一種の開き直りの投げやりなやさグレである。

モノクロにしたのは、予算の関係もあるだろうが、この空虚感を描くためだったかもしれない。アメリカのなかの異世界を見るような、または別の国であるかのような錯覚さえ覚える。

主人公(ジョン・ルーリー)とその相方(リチャード・エドソン)、従妹の言葉のやりとりは何故かどこかユーモラスである。ときに沈黙が支配するが、それでさえ可笑しさを漂わせている。また、一方では人生は無目的でも進んでゆくという遺憾ともし難い現実も感じさせる。

とにかく、監督の言わんとしたことが何かはよく分からなくても、その雰囲気に身を任せてみればいいはずである。当該ユーザーは、その世界観にただ単に格好いいと感じていた。そして、その漂う雰囲気に嵌ったのは言うまでもない。

ちなみ、格好いいと書いたが、それは出演者を指している訳ではない。それも含めた映画全体の雰囲気のことである。


ストレンジャー・ザン・パラダイス 日本版劇場用予告篇

何故か、いつも主人公たちは帽子(ハット)を被っている!

この映画の主人公と相方は、いつも帽子を被っている。ちなみに帽子はハットである。ハットは、この時代(1984年)に流行っていた訳ではない。むしろ現在の方が流行っているかもしれない、何を隠そう当該ユーザーも被っているし、最近も秋冬物を買ったばかりである。

また、ハット以外の服装も新鮮である。なんとも言えないやさグレ感を漂わすその服装のセンスはいまでも古くはない。違うか。

とにかく、主人公(ジョン・ルーリー)と相方の格好よさは半端ではない。帽子の被り方はもちろんのこと、上着やパンツのコーディネートなどいまでも参考になりそうである。しかし、この映画は約30年前のものである。

映画が公開された1984年は、アメリカではロス5輪が開かれ、映画では「ビバリー・ヒルズ・コップ」 や 「ゴーストバスターズ」 、「ターミネーター」 などがヒットし、音楽では、マドンナの「ライク・ア・バージン」、マイケル・ジャクソンの「スリラー」 が大ヒットしていた。

上記のような華やかさと豪華さを謳歌するアメリカ文化の影で、ひっそりと咲く道ばたの花のように、疲れたアメリカの一面を見せたのが「ストレンジャー・ザン・パラダイス」だった。と思うが確かではない。あしからず。

したがって、独特のやさグレ感を漂わすファッションは意図的なものだったか。とすれば、その意図は確かに的を得たものであった。

ちなみに、独特のやさグレ感を見事に演じた主人公と相方のふたりは、共に本職はミュージシャンである。これは、ある意味では納得である。

ストレンジャーザンパラダイス02

ストレンジャー・ザン・パラダイス/ストーリー
本作は、3つのストーリーから構成されている。

<The New World>
ニューヨークでギャンブラーとして生計を立てているウィリー(ジョン・ルーリー)の元に、クリーブランドに住む叔母から電話があり、ブダペストから来た従妹のエヴァを預かることになる。風変わりなエヴァと無愛想なウィリーのあいだではなかなか会話がかみ合わないが、日が経つにつれ打ち解けていく。

<One Year Later>
1年後、エディといかさまポーカーで儲けたウィリーは、共に車で雪に覆われたクリーブランドへエヴァに会いに行く。ホットドッグ店でアルバイトをしているエヴァは二人との再会を喜ぶ。そこで数日を過ごすが、エディーとウィリーは雪に閉ざされたクリーブランドに退屈し、突如としてフロリダへ行くことを思いつく。

<Paradise>
フロリダにやってきた3人は、エヴァの宿泊代をごまかして安モーテルに泊まる。ウィリーとエディはエヴァをモーテルに置き去りにしてギャンブルを楽しむ。しかし、大損して苛立つ事になる。エヴァは二人が居ない間に海岸をうろつくが、そこで麻薬の売人に勘違いされ、たやすく大金を手に入れてしまう。

競馬で大儲けしたウィリーとエディがモーテルに帰ると、そこにはエヴァから「空港へ行く」との置手紙と大金が置いてあった。エヴァを呼び戻そうと急いで空港へ向かった二人は、エヴァがブダペスト行きの飛行機に乗ったものと思った。出発直前の飛行機の中までエヴァを呼び戻しに行ったが、エヴァはいなかった。

実はエヴァはモーテルに戻っていたのだった。降り損ねたウィリーを乗せて飛行機はブダペストに飛んでいった。地上にはそれを見送るエディーがいた。

ストーリー参考:ウィキペディアより
写真:ストレンジャー・ザン・パラダイスより、背の高い方がジョン・ルーリー。

ストレンジャーザンパラダイス03

<ストレンジャー・ザン・パラダイス>
ジム・ジャームッシュの35ミリ長編第1作にして永遠の代表作。N.Y.でヤクザな暮らしをしているウィリーは、叔母の頼みでハンガリーからやって来た従妹のエヴァを預かるハメに。最初は邪険にしていた彼だったが、そこに賭博仲間のエディが加わり…。

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