■アート|日本の前衛美術が、海外で人気上昇中とか

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かつて日本では、前衛は如何わしいと同義であった!

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前衛とは、如何に

2013年、グッゲンハイム美術館において、日本の「具体美術」や「もの派」という前衛美術を紹介した展覧会が行われたそうである。それを機に欧米で一気に注目されだしたとか。なかでも、「具体美術」の白髪一雄の作品は人気が高く、かなり高値で取引されているとフィナンシャル・タイムズは伝えている。

白髪一雄の作品は、2013年のクリスティーズ・パリでは、1961年の作品「地劣星 活閃婆」が、1,665,500ユーロ(約2億円)で落札された。さらに、2014年には、1969年制作の「激動する赤」が、3,905,500ユーロ(約5億円)で売られている。(アートネット・ニュースより)

ほかにも、具体美術の創始者である吉原治良、嶋本昭三などの作品も高値で取引されているそうである。詳しくは以下を参照ください。

日本の現代アートに世界が熱視線(ニュースフィア)

「具体美術」とは、具体美術協会という美術団体の略称である。海外では「GUTAI」とも呼ばれている。1954年に戦前から活躍していた前衛美術家、吉原治良を中心に結成された。他のメンバーには、嶋本昭三、白髪一雄、元永定正、田中敦子、松谷武判など多数いた。1972年、吉原の死去と同時期に解散している。

かれらは、吉原の提言する「いままでにないものを創る」という概念に基づき作品を制作していた。しかし、その作品を見る限りでは、アメリカのアクションペインティング、欧州のアンフォルメルという、いわゆる抽象表現主義の影響化、またはその流れにあったのは否めないと思われる。

それでも、何故か欧米とは何か違う雰囲気を漂わせていた。どこか土着的な泥臭さが漂っていた。それが「具体」の個性であるかのように。

60年代からは、コンセプチュアルな傾向も取り入れてますます先鋭化していく。肉体を使ったパフォーマンスもまた「具体美術」の特徴となっていた。

日本では、いまでも現代美術とは訳の分からんものという認識がある。これを植え付けたのは、まさに「具体美術」が行った数々の作品のせいと言えるかもしれない。何故かといえば、作品の制作方法が常識をぶち破っていたからだ。

例えば、白髪一雄は、天井からロープを吊るしそれにぶら下がって、床に置かれたキャンバスに向かって自分の足を筆の変わりにして作品を制作した。したがって、出来上がった作品は、偶然性のたまものとしか言いようが無かった。

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白髪一雄の制作風景

しかし、その偶然性と言うしかない行為そのものに意味があったようだ。技術の習得の結果としての美術を否定したところが、具体美術の発想であった。

「具体美術」では、他にも数々の破天荒ともいえる手法があった。キャンバスに絵具の付いたボールを投げつけるなどは、いまでは前衛の古典ともなった。これは、アクションペインティングの一種と言えるだろう。

他にも、大砲のようなものに絵具を詰め込んで発射する。丸太でキャンバスをたたいてぐしゃぐしゃにする。捏ねた泥のなかに飛び込む。木枠に張られた紙を走ってきてぶち抜くとか。まるで漫画のようなことを真剣にやっている。

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パフォーマンス 紙をぶち破る

これで思い出すのが、北野武監督の映画「アキレスと亀」である。これは、売れない前衛画家とその妻の物語であった。いわば、コメディであるが、そこで描かれた画家の手法はまさに「具体美術」のそれであった。

北野監督の世代では、たぶんリアルタイムで具体を目の当たりにしたのかもしれない。そして、それをヒントにお笑いと前衛芸術は紙一重にあると思いついたのではないかと想像する。

日本では、すでに前衛という言葉自体が古くなってしまって、いまや懐かしい響きさえする。しかし、前衛をアバンギャルドに置き換えれば、何故かまだ通用しそうな気がする。言葉の持つイメージが、如何に印象を左右するかである。

忘れた頃にその価値に気が付く、というのは日本の悪い癖である。海外で評価が高まったことで、その価値を見直すことは漫画やアニメに限らずいくらでも例がある。そんな日本の姿に、具体美術の作家たちはどう思うか。

すでに亡くなった創始者の吉原は、きっと「相変わらず変わらないね、日本は」と思っているかもしれない。

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吉原治良の作品

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元永定正の作品

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松谷武判の作品

参考文献:現代美術入門(若林直樹著)、ウィキペディアほか
冒頭写真:白髪一雄の作品

<美術の窓 2012年08月号>
【巻頭特集】具体美術協会を中心とした日本の戦後美術を考える。建築家の安藤忠雄氏×社会学者の吉見俊哉氏の対談をはじめ、アーティスト、キュレーター、評論家らのインタビューも多数収録し、読み応えある1冊。

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