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■映画|恋の罪 ようこそ愛の地獄へ!

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ようこそ、愛の地獄へ!

「恋の罪」は、90年代に起きた実際の事件にインスパイアされて出来た作品である。

それは、ご存知の方も多いはずであると思うが、東京渋谷の円山町で起きた、あの「東電OL殺害事件」である。ちなみに2012年、犯人とされて刑務所に収監された外国人の男性は無罪が確定している。

本作は、あくまで当該事件を参考に園子温監督ならではの独自性あるストーリーとなっている。その展開は、唐突に始まり、以外な展開を経て、そして何とも後味の悪いエンディングとなる。まさに、愛の地獄である。(公開時のキャッチコピーは、「ようこそ、愛の地獄へ」)

なお、以下に記する内容は、あくまで個人の感想である。海外の映画祭では、高く評価されて賞も受賞している。(下記参照ください)

恋の罪|ストーリー

刑事の吉田和子(水野美紀)は、ラブホテルで不倫中である。携帯に事件の連絡が入り、急いで現場へと向かう。渋谷円山町の古い住居では、マネキンと合体された女性らしき死体があった。

ひとつは、赤いドレスを着ており、もうひとつは、セーラー服を着ていた。しかし、被害者はひとりであった。吉田和子は、円山町界隈の風俗店や失踪者の捜査を始めた….。

菊池いずみは、小説家の夫と二人暮らしである。外見的には品行方正で身持ちの固い女性である。しかし、夫との性に満足していない。愛しているが故に、満たされない想いが深まっていく。

金銭的に不自由のない生活であるが、もっと違う自分を感じたくてパートの仕事を始める。そこでモデルにスカウトされるが、それは肉体のすべてを曝け出す仕事だった….。

尾沢美津子は、大学の助教授である。文学を教えている。金銭的には、特に不自由はしていない。しかし、彼女にはもうひとつの顔があった。

夜になると化粧も衣装も変えて、円山町界隈に出没しては客を物色していた。愛のないセックスをすることで自身のアイデンティティーを確認するかのように。そんな美津子のもとに、菊池いずみが唐突に現れた。菊池いずみは、美津子に深く影響を受けていく….。


刑事役の水野美紀

感想|愛の地獄!とは

園監督の作品を見る度に思うであるが、今回もまた観るのを止めようかと思ったのである。しかし、またも最後まで鑑賞したのである。たどり着いたらエンディングと云う感じである。当然、達成感はない。本作は、監督作「ヒミズ」での感動のようなものは味わえない。正直、後味が悪い。

監督もそのような(感動とか)目的はないだろう。何か深い意味合いを感じるのだが、ボキャブラリーのない自分にはうまく伝えられない。女性と性がテーマのひとつであるのは、なんとか分るが….。さらにその先に何かあると、訴えてくるのである。うまく云えないが….。

本作のはじまりは、唐突である。なんと刑事役の水野美紀が全裸(ヘアー出し)で登場する。これに吃驚していると、今度は、すぐに園監督お得意の凄惨な事件現場がでてくる。普通なら、出し惜しみするだろうにと思いながら観ていると、次々と衝撃的な場面がこれでもか!、という感じで畳み込んでくる。

まさに園監督の力技とも云うべき映画的力量である。後は見る側の問題である。どこまで耐えられるか?、である。監督は、観客を試しているのかも知れない。きっとサディスティックな気があるのではないか、と思うのである。

菊池いずみ役の神楽坂恵は、まさに体当たりの演技である。ここまでやるか?。という思いが強く、印象深い。彼女の演技なくして本作は成り立たなかっただろう。彼女は、横浜映画祭において助演女優賞を受賞した。

また、尾沢美津子役の富樫真も絶妙な演技を見せている。その迫り来るような恐怖を感じさせる演技は、本当に怖い。

断っておくが、本作はホラーや、オカルトではない。だが、それ以上に怖いと思う映画かも知れない。怖いもの見たさでご覧になるのも一興かと思います。

■恋の罪|スタッフ&キャスト

<スタッフ>
脚本・監督:園子温
製作:鳥羽乾二郎、大月俊倫
プロデューサー:千葉善紀、飯塚信弘
音楽:森永泰弘
撮影:谷川創平
編集:伊藤潤一
製作・配給:日活
公開:2011年5月(仏)2011年11月(日)
上映時間:144分

<主要キャスト>
吉田和子:水野美紀
尾沢美津子:冨樫真
菊池いずみ:神楽坂恵
第64回カンヌ国際映画祭・監督週間部門でワールドプレミア上映された

<受賞>
第44回シッチェス・カタロニア国際映画祭ORBITA部門 最優秀作品賞
第33回ヨコハマ映画祭 監督賞 園子温、助演女優賞 神楽坂恵
第85回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画監督賞 園子温

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