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■映画|凶悪 この恐怖はすぐ隣りにある

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それは、いつあなたの身に降り掛かってもおかしくない

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日本映画への偏見を覆す、数少ない良作に間違いない

遅ればせながら、評判が高かった映画「凶悪」を観ました。もちろん、レンタルですが、あしからず。当該ユーザーは、ほとんど日本映画を観ていない。それは劇場はおろか、レンタルDVDもおなじくである。観てるのは、園子音作品ぐらいといっても過言ではない。なお、昔の作品は別である。(黒澤監督は好きである)

そんな訳で、評判となった日本映画の多くは観ていない。そのような中で何故か気になっていた作品があった。それが「凶悪」である。これはベストセラーとなったノンフィクションを原作とした犯罪映画である。しかし、その内容以上に興味を抱いたのが、リリー・フランキーとピエール瀧の準主役俳優にあった。

原作は、実際に起きた凶悪殺人事件「上申書殺人事件」を基に、獄中の死刑囚が告発した殺人事件の真相を新潮45編集部が暴き、首謀者逮捕に至るまでを描いた犯罪ドキュメントであり、2009年の文庫化で10万部を超えるベストセラーとなった。(ウィキペディアより)

何故に、リリーにピエールなのか。そこに興味を掻き立てられていつか観たいと思っていた。しかし、日本映画アレルギーともいえる個人的な偏見が災いしてなかなか観る機会は訪れなかった。いつでも観れるが、避けていたと言っていいだろう。そして時は流れ、つい最近になってようやく観たという訳である。

そして、個人の偏見とはいかに狭い見識に基づいているかを思い知った次第であった。こんな良作ともいえる作品を日本映画は作れるんだと思いました。と同時に、自らの偏った映画観を多少なりとも恥じた次第であった。

この作品で感じたのは、これまでの日本映画のお約束が無視されていたことだ。お約束とは、ステロタイプ化したご都合主義のことである。お涙頂戴の感動の安売り、スター(若い人気俳優)主義、内容より目立つ俳優の演技臭、ドラマの展開が想像できてしまう、ことなどである。

テレビドラマとたいして違わない内容の映画を、わざわざ映画館に足を運んで観る気にはならなかった。これは自分だけでなく多くの人がそう思っているはずだ。違うか。

映画「凶悪」は、それらのステロタイプとは若干違っていた。例えば、俳優は山田孝之を除けば、知名度のある俳優はいない。ただし、文化的知名度のある俳優?とは言えない出演者はいた。それが、リリー・フランキーとピエール瀧である。

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映画のテロップ上では、主役は山田孝之である。しかし、実際の主役はリリーとピエールが演じた悪人二人であったのは間違いない。この役者が本職ではない二人をキャスティングした段階でこの作品の成功は見えていたかもしれない。(なお、ピエールは役者も本職かもしれない)

日本映画によくありがちなことに、演技派俳優がこれでもかと云わんばかりの熱演をして観客をどん引きさせることがよくある。この作品でも、キャスティングを間違えていたら、こんな良作とはならなかったに違いない。

とにかく、リリーとピエールは演技派俳優がよくするように役を作り過ぎたりすることなく、ごく普通に、しかも淡々と演じている。それが実にリアルな人物像を作りだしている。また、演出もこれまた起伏を強調することなく淡々と進んでゆく。それがさも当たり前のようにである。

理不尽にも、恐ろしいことは、こんなにも普通のように進められるのか。それが垣間観られる仕掛けとなっている。ノンフィクションが原作だからか、それとも監督の思惑か、それは知る由もないが、すぐそこにあるおそろしさがリアルに伝わってくる。それは、いつ自分に降り掛かってもおかしくないというぐらいに。

ピエールが演じるやくざの暴力性もこわいが、それよりこわいのがリリーの演じた木村という不動産ブローカーである。一見するともの静かな紳士風であるが、その考え方や行いは冷徹そのものであり、やくざも形無しである。とくにリリーのまなざしが底知れない不気味さを漂わせていた。

リリー・フランキーてのはいったい何者か?。映画を観終わったあとになんとなくそう思っていた。それぐらいかれの嵌り具合はベストであった。

ちなみにリリーさんは、イラストレーター兼文筆家である。知る人には今更であるが、念のためお伝えしておきます。片割れの悪人のピエールさんは、言うまでもなく、ミュージックユニット「電気グルーブ」の一員である。

とにかく、まだ「凶悪」をなんらかの理由で観ていない人には、是非ご覧になって頂きたい。観ない理由を覆すほどの良作であることは間違いない。なんせ、日本映画を偏見する当該ユーザーが、それを実体験したのである。いやはや。

「凶悪」ストーリー

スクープ系雑誌社に死刑囚である元暴力団幹部の須藤から手紙が届いた。雑誌記者の藤井は、上司の命令で死刑囚・須藤に面会する。その場で聞かされた内容は、未解決の殺人事件3件とその首謀者・木村についてであった。須藤は、まだ捕まっていない木村に復讐を企てていた。

事件の内容は、実に理不尽極まりないものであった。しかも、それらは未解決どころか、すでに薮の中であった。警察でも事件性なしと判断していた。それでも須藤は、その事件を表に出すようにしつこく藤井に迫っていた。

藤井は、当初は半信半疑であったが調べを進めてゆくうちに、須藤の言うことが間違いないと確信してきた。さらに追求を深める藤井は、家族や同僚さえ顧みずに没頭してゆく。そして、その結果見えてきたものは…。

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製作概要

「凶悪」
監督:白石和彌
脚本:高橋泉、白石和彌
原作:新潮45編集部編『凶悪ーある死刑囚の告発ー』
出演者:山田孝之
   :ピエール瀧
   :リリー・フランキー
   :池脇千鶴
配給:日活
公開:2013年9月21日
上映時間:128分

■その他

白石監督、リリー・フランキー、ピエール瀧は、日本アカデミー賞ほか数々の映画賞に輝いた。とくにリリー氏は、同時期の作品「そして父になる」での演技とともに注目を集めた。

追記、そういえば今日はクリスマスイブであった。クリスマスに相応しいとは思えないテーマをアップすることは、若干憚れるが仕方が無い。たまたまそうなったのも意味があるかもしれない。まーないとは思うが…。

<凶悪―ある死刑囚の告発>
この本から、事件が動き始めた!
「他にも人を殺しています。警察はそのことを把握していません」。死刑判決
を受けた男・後藤良次が、獄中で衝撃の自白を始めた。被害者は複数人、そして
首謀者はまだ娑婆にいる—-はたして、奴の話は真実なのか!!

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