パスワードは一万年愛す。タイムレスなスタイルは、過去も未来も時を超えてゆく!

■アート|界隈写真家/村田賢比古 「界隈(Kai-Wai )の中から」

この記事は約7分で読めます。

tk3227-thumb

生の営みを一瞬に…界隈は生きている

界隈、かく語りきかな

 過ぎ去った日々は二度と戻ることはない。しかし、僅かに記憶となり残り続けるものがある。それはまるで残照となりイメージを脳内で物質化する、要するにバーチャルに再現される。しかし、けっして現実に現れることはない。

 界隈の過ぎ去った日々を記憶(記録)に収める写真家・村田賢比古さんの写真を再びご紹介いたします。村田氏は、以前にも書いた様に「界隈」(主に東京中心)を撮り続けている写真家であり、それをウェブで公開もしています。

 その数たるや膨大であり、当方もすべてを見た訳ではありません。村田氏の写真の特徴は、上記した様に「界隈」の一風景を捉えたものですが、しかし、そこには単なる風景を超えた何かがあるような気がします。写真機という装置で一瞬を切り取ることで、まるで界隈の息づかいまで収めようとしているかのようです。

 それは、失われゆく時間(界隈)を愛おしげに記憶しようとする行為に他なりません。村田氏の作品には、すでに存在していない界隈が多数あると思われますが、しかし、写真の中の界隈には変わらぬ時間が時を止めて存在しています。

 なお、界隈写真家としましたが、村田氏がそう名乗っている訳ではありません。当方が勝手にそのように付けただけです。ご了承ください。またこのページでは、ほんの数枚しか紹介できません。興味の有る方は、ぜひ以下のサイトで膨大な作品の数々に出会うことをお勧めいたします。

村田賢比古/Kai-Wai散策  http://kai-wai.jp/

■泪橋(冒頭写真) MinamiSenju, Arakawa, Tokyo 2015

 泪橋とは、荒川区南千住にある小塚原刑場跡の近くの思川(おもいがわ)にかかっていた橋。現在では思川は全て暗渠化(地中に埋設された河川)されているため橋の面影はなく、その名前は交差点やバスの停留所に付けられている。

 ちなみに泪橋の由来は、罪人にとってはこの世との最後の別れの場であり、家族や身内の者には、処刑される者との今生の悲しい別れの場。お互いがこの橋の上で泪を流したことから、この名が付けられた。(ウィキペディアより)

 写真にあるように現在では、東京スカイツリーのそびえ立つ姿が見える。やがて、この周辺も思川が暗渠となったように、様変わりする時がやってくるに違いない。それを先攻して象徴しているのが、東京スカイツリーに他ならない。

■夕刻の向島で Mukojima, Sumida, Tokyo 2015

tk3220-thumb

 向島といえば、花街であり芸者だったのは昔の話しであり、いまではそれは希少な存在ではないかと思われます。しかし、それでも向島にはいまでも花街(花柳界)が存在し、芸妓数は100名以上を誇り伝統文化を守り積極的に活動しているそうです。

 桜色の着物がとても綺麗な芸者さんが、さっそうと歩く姿がなんとも粋な佇まいを見せています。きびしい芸者修行を積んだ上での自信がそうさせているのか、はたまた伝統文化を担っている故の覚悟なのか、なんともキリっとした歩きっぷりが想像できます。

 この写真に限らず村田氏の作品は主張性が強過ぎず、かといって言うべきところは押さえていると思います。また、色味(色調)も程よい具合だ。どこかしっとりとした趣がある色味にも惹かれます。個人差はあれど、当方はウォン・カーウァイの「恋する惑星」で感じた色味にどこか似た想いを抱きました。

■Big River Kuramae, Taito ~ Honjo, Sumida, Tokyo 2015

tk3212-thumb

 これは隅田川を遊覧する客船でしょうか。なんとも未来的な様相をしています。写真を見る限りでは、なんだかこの世の終末を感じさせるものがあります。SF映画のラストシーンにありそうな光景であり、生き残った人間たちが脱出していく様子を思い起こさせます。(SF映画の見過ぎかもしれませんが…)

 当方がこれまで見た村田氏の作品は、どちらかといえば優しげで、しっとりとした色調のものが多かったと思いますが、この作品の様な硬質な感じの色調もいいですね。テーマによって技法を変えているのでしょうか、実にクールです。

■休日のゴールデン街 Kabukicho, Shinjuku, Tokyo 2014

tk2712-thumb

 ゴールデン街には久しく訪れていない。80年代から90年代初頭までは何度も訪れていた。ただし、その頃の当方はミーハーだったからカフェバーなどの方が中心でした。だから、たまにゴールデン街にいくと肩身が狭かったのを覚えています。なにしろ、この飲食街では、いつも誰かが喧々諤々の言い合いをしていたからだ。

 何が問題でそうなるのか?当時はよく分からなかったが、編集者、ライター、映画関係、デザイナー、その他のよく分からない人々などが毎日のように激論を戦わしていたように思います。たまたま、当方が訪れたお店がそうだっただけなのか、いまではそれを知る由もないが。いやはや。

 写真は、そんなゴールデン街が一時の休息している様子である。

■モデルズ・イン・タウン Shinjuku, Shinjuku, Tokyo 2013

tk2591_1-thumb

 これはマネキンではなく、本物のモデルさんである。最初にこれを見たとき、テレビでやっていたマネキンだけで作られた番組を思い出した。たしか「オー!マイキー」といったはずだ。この写真は村田氏の解説によれば、新宿で行われたファッションイベントで出番を待つモデルさんを撮影したものだとか。

 これまで風景しか見た事がなかったので実に新鮮であった。ファッションを撮っても十分いけそうな撮影手腕である。なお、実際には仕事で撮ってるのかもしれない。聞くところでは、若い頃はファッション関係の仕事に就いていたそうだ。

 それにしても、外人さんは実に化粧映えするなーと思うばかりだ。コスメティックとは、やはり外人さんを美しくするために発明されたと思うしかない。日本人なら、またアジア人ならここまで美しく(化けるともいう)はなれないだろう。

 日本人のモデルのみなさん、どーもスミマセン!。ついでに外人のモデルさんにも、あしからず。

tk2591_2

■大久保・百人町界隈 ドンキ Ohkubo, Shinjuku, Tokyo / Korea Town in Tokyo 2013

tk2545-thumb

 大久保のドンキホーテです。これ一見すると入り口ですが、実は出口となっています。ここでは、夜ともなると他では見られない光景が繰り広げられます。それは、歌舞伎町界隈のキャバクラなどに勤務するホステスさん、またホストクラブのホストのおにーさんなどがよく来店しているからです。したがって、夜ともなれば独特の雰囲気を醸し出しています。

 元々、ドンキは夜の世界との親和性がありますが、ここはさらに特別ではないでしょうか。なお、当方は2010年代になってから、まだ一度も行っていないと思います。ちなみに最近は、やはり中国人のみなさんが多いのでしょうか?。新聞記事に、「ドンキ、中国人瀑買いで売上増」とかあったように思いますがいかに。

 10年ぐらい前でしょうか。ここに行ったときに、増築された売り場(たしか家庭用品)に猫がいました。それも人懐っこい猫でした、ごろにゃんとばかりに足下にすり寄ってきて体をこする仕草をしてきました。店員さんは、その猫が主没するのはその売り場だけだと言っていました。

 たぶん、その猫は売り場が店の外という認識だったと思われます。さすがに、その猫も現在はいないでしょうね。ちなみに、あんなに人懐っこい猫には、あれ以来遭遇したことがありません。

■軒先のユリ Yanaka, Taito, Tokyo 2015

tk3222-thumb

 下町でひっそりと咲く花々たち。「ねー見て、アタシ綺麗?」と言ってるかのようだ。些々たることではあるが、花を愛で楽しむ人々がいるかぎり、花々はひっそりと静かに咲いて、綺麗な姿を見せてくれるに違いない。

■隅田川船航 永代橋(中央区新川・江東区佐賀/永代)あたり 2011

tk1694

 これまたクール。海の漂わす不穏?な雰囲気と、僅かに暖かみに染まる空との対比が素晴らしいと思う。厳しい海に向かって波しぶきを上げて進む船舶と、それを見守る空という物語性を想像する。ところで橋は、どうしたか?。そうそう橋は間を繋ぐものだから、空と海との架け橋といえるのではないか。

掲載写真:村田賢比古(写真の著作権は村田氏に帰属しています)

コメント