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■映画|ビギー&トゥパック ギャングスタ・ラップの闇の奥

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何故、ラップスターは殺されたのか

90年代を代表するラップスター二人は、何故か銃弾に倒れた
「ビギー&トゥパック」

 この作品は、90年代を代表するラッパーであった二人が、共に時期を近くして殺害された背景を探っていくドキュメンタリーである。

 ビギー(ノートリアスB.I.G)とトゥパックは、90年代のラップミュージックを代表するラッパーであり、そして親しく交友もしていた。しかし、ある時期を境に袂を分かつ。1994年、トゥパックが何者かに襲われて5発の銃弾を受けて一命を取りとめた事件があった。このとき事件現場に居合わせたビギーとP・ディディをトゥパック側が疑ったことで、二人の関係性が壊れていく。

 この事件は、ビギーとトゥパックの殺害事件に繋がっていくという、後のヒップホップ業界を揺るがす発端となった事件でもあった。その後トゥパックは東海岸から西海岸のレーベルに移籍した。それ以降、東と西に別れて双方をディスるラップが盛んになった。そしてギャングスタ・ラップが隆盛を極めた。

 トゥパックが移籍した西海岸のレーベル「デス・ロウ・レコード」は、本物のギャングが経営していた。ギャングが経営するレーベルからトゥパックが発表した楽曲の多くは、ギャングスタ・ラップの傑作と言われた。アイスTが元祖と言われるそのラップは、ギャング間抗争を煽る攻撃的な歌詞が特徴となっていた。

 トゥパックは、ギャングの影響化で攻撃性を増していく。その様子はドキュメンタリーの中でも見てとれる。しかし、彼の場合は生い立ちも関係あるようである。母親は元ブラックパンサー(過激な黒人政治結社)の党員であり、父親もその関係者と言われる。ちなみに、彼は母親に育てられており父親は不在であった。

 そのせいか、トゥパックの歌詞には、白人や権力体制を揶揄すると同時に黒人の連帯を呼びかける内容が多く見られる。しかし、何故か黒人同士のギャング間抗争には自らも積極的に乗り出している。当時のPVを観るとギャングを肯定する様な内容が見てとれる。ちなみに、彼は黒人ギャングを描いた映画「ジュース」にも出ていた。

 一方、ビギーの方は、中流?の黒人家庭に育っている。(7部屋ある家に住んでいた)母親は教師でありビギーに不自由な想いはさせなかったと語っている。しかし、父親は不在だった。彼は17歳からコカインディーラーをしていた。そしてラッパーとなったビギーは、貧しい生活を送ってきたと歌っている。

 母親は、それは自らの体験ではなく、当時の多くの黒人が置かれていた状況を踏まえた歌詞だったと、あくまで創作活動であると主張している。

 ビギーのラップがあくまで創作活動とすれば、その点ではトゥパックとは若干の違いがあるに違いない。それはさておき、とにかく二人はラップの世界でトップに立ち、90年代を牽引していく様な存在になっていた。

 そんな二人の間に突然の様に災難が降り掛かる。

 1996年9月7日、トゥパックはラスベガスで行われたマイク・タイソンの試合を観戦した後、何者かに銃撃されて死亡した。享年25歳。

 それから、約半年後の1997年3月9日、ビギーはパーティの帰途に銃撃されて死亡した。享年24歳。

 そして彼らは、黒人ミュージシャンが若くして他界するという歴史に新たな1ページを加えてしまった。しかもこの事件はいまだ解決していない。一般的には東西の黒人ギャング間抗争の犠牲者とされた。

 しかし、その裏では、デス・ロウ・レコードが怪しいと言われた。東西ギャングの抗争はあくまで隠れ蓑であり、その実はトゥパックとレーベルとの間の金銭トラブルと移籍問題が絡んだ末の事件だったのではないか、と推測されている。

 それが真実であれば、ビギーは単に巻き添えにあっただけといえる。

 さらには、FBIも絡んでいるとまことしやかに語られている。何故なら、当時の政治状況から黒人を煽動するラップ音楽を排除したいという思惑があったからだ。とは言ってもそれは確かではなく、あくまで噂のレベルであるのは言うまでもない。

 ちなみに現在、トゥパックの楽曲の権利は、その多くをエミネムが所有している。なんでもエミネムは、トゥパックに大きな影響を受けたそうである。

<その他関連する情報>
 トゥパックは、死後も多数の未発表音源が発掘され、新しいCDがリリースされている。実はまだ生きているのでは、との噂まである。

 1997年、ビギーがすでに録音を済ませていた2枚組のセカンドアルバム『ライフ・アフター・デス』がリリースされた。このアルバムは1000万枚を売り上げ、ビギーを伝説の存在にした。

ビギーの伝記映画「Notorious」が、2009年1月16日に全米公開された。

 ビギーを追悼して「 I’ll Be Missing You」という楽曲が、パフ・ダディとビギーの元妻フェイス・エバンにより発表されている。ちなみに、スティングの「見つめていたい」をサンプリングしたものである。

<トゥパック/ライフ・ゴーズ・オン>

(以下は歌詞和訳の一部)

朝起きても何も変わってない事に気づいて自分に聞いたんだ
俺の人生は生きていく価値があるのか、
それとも自分で命を絶ったほうがマシなのか
もう貧乏暮らしはうんざりだ、更に最悪なのが俺は黒人だ
腹へって胃は痛み誰かから財布を奪ってやろうとしてる

サツどもはブラックばかり気にしやがって
引き金ひいてブラックを殺せば奴らはヒーローになれるもんな
子供達にヤクを売る連中がいても誰も気にしない
それで腹すかせてる子が一人少なくなるってなもんさ

最初はヤクの袋詰めさせてられて、
そのうちブラザーに売る役がまわってくる
ブラザーに銃を与えておいて、
後は殺しあうのを黙って見てるだけ

今こそ俺達も立ち上がって闘うべき時だ
ヒューイ(ブラックパンサー)がそう言ってただろ
そして暗闇から発射された2発で彼は殺されちまった
俺はブラザー達を心から愛してる

けど俺達がお互い協力し合わない限り、
いつまでたっても今の状況から脱出できない

以下省略

追記:なお、当方はこの作品をネットフリックスで観ましたが、たぶんレンタルもされていると思います。興味ある方はご覧ください!

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