■小説自作|東京ゾンビマンション(その2)「24時間後…」

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ゾンビが東京を征服した。日本政府、東京封鎖を決定!

東京湾岸エリアの高層マンションに現れた不審な輩たち!
ある日、東京にゾンビが現れた。そして、あっという間に東京はゾンビに占拠されてしまった。高層マンションの住民たちの運命はいかに!?

東京ゾンビマンション(2)「24時間後…」作:cragycloud

 東京にゾンビが現れてから24時間が過ぎた。湾岸の高層マンションの住民たちは、ただ成り行きを見守るしか術がなかった。しかし、いつまでそれを続ければいいか、誰しも不安に感じていた。なにしろ、そのうち食料が必要となるからだ。

 テレビは、まだ放映を続けていた。ネットも通じていた。しかし、そこで流される情報には、希望が持てるものは少しもなかった。状況を後追いするのみで何が原因かも、どうすればいいのかも、まったく情報がないようだった。ネットでは多数の憶測が乱れ飛んでいた。

 警察はどうしているかと思ったが、どうやら署内に閉じこもっているようだ。発砲していいかも判らずに、無防備で鎮圧しようとした警官隊はゾンビに成す術も無く、結局はゾンビに食われて仲間になっていた。

 それからは、警察は署内にバリケードを築いて閉じこもっている。政府が警察にようやく発砲許可を出したのは、わずか数時間前だとか。政府も混乱しているとみえて、対応が後手に回っている。

 自衛隊は、関東各県の所属部隊が東京との境に集結中といわれている。そこで何をするつもりなのかは、まだ判っていないようだ。ゾンビは、東京の渋谷をはじめに山手線内で増殖していき、いまでは都内すべてで確認されている。

 しかし、東京以外ではまだ確認されていないとか。

 何故、東京だけに?という疑問が…拭えない。もしかしたら、何かのテロなのか。ゾンビウィルスでも撒かれたか。しかし、そんな疑念を晴らすような情報は皆無であった。何か、信頼できる情報がほしいと切に思ったが、テレビやネットにそれは望むべくもなかった。

 日本政府は、東京都民に自宅に待機するようにと、おなじことを繰り返すばかりでその後の対処がまったくない。これが何を意味するか、たぶん対処の方法がないことを表していると思われた。

 テレビ局は、ドローンを飛ばしてリアルな映像を流していた。そこに見える光景は、殺伐と化した東京の姿であった。そこかしこで火の手が上がり、車が無数に転がっていた。その隙間を不気味に蠢くゾンビがアリの群れのように押し寄せていた。

 六本木にあるテレビ局が飛ばしたドローンが、セレブのゾンビを発見していた。政府の重要閣僚である財務大臣が、ゾンビとなって麻布辺りを徘徊していたのだ。なんでも、この閣僚はゾンビなんて嘘だと言って信じなかったそうだ。

 なんでも、政府の要人への避難要請を無視し、愛人のマンションに滞在しているときにゾンビに襲われたらしい。そして愛人ともどもゾンビと化したとか。

 とにかく偉そうな雰囲気の大臣であったのでザマーミロと思ったが、よく考えたらそんなことを思っている場合ではなかった。

 テレビ局のドローンが首相官邸を捉えた映像が流されていた。どうやら、テレビ局はもうドローン規制なんかどうでもいいと判断したらしい。すると、官邸の上空にはオスプレイがホバリングしている様子が映っていた。

 オスプレイは官邸の空き地にゆっくりと着陸した。それからしばらくすると十数人のスーツ姿の人々が乗り込んでいった。そして、オスプレイは何処かへ飛び去っていった。テレビでは、皇居にもオスプレイが飛来し皇居内に着陸後、再び飛び去ったという情報が流されていた。

 皇居と官邸からオスプレイが飛び去ってからしばらくして、テレビで緊急放送のお知らせという情報が流された。なんでも、正午から政府が緊急放送をするので見るようにという案内であった。

某月某日12:00、それは通告された。

 テレビには、現総理大臣が現れていた。まず、この放送が緊急であることが告げられた。そして、現在起きている事象が何が原因なのか不明であること、また対処の方法もまだ掴んでいないこと、そして「東京を封鎖する」ことが発表された。

 また、政府関係者の多くが東京から避難したことが告げられた。しかし、現在の所在地は明かされなかった。

 東京封鎖の手順が図で示された。東京都と他県との境に自衛隊を集結させてゾンビの侵入を阻止する、と同時に東京都を壁で囲う工事を実施するとのこと。かつてのベルリンの壁や、現在のパレスチナの壁のようなものらしい。とにかく、ゾンビを閉じ込めることを優先的に判断した結果のようだ。

 これは、ある意味では東京という首都を捨てることでもあった。しかも、まだゾンビでない普通の人々もである。

 東京は、もはや国家に見放されたと言っても過言ではなかった。

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「なんだと!。あー、どーなるんだ。おれたちは…?」と思わずにはいられなかった。隣には中国人の富裕層である陳さんがいた。

「中国はどーなってるか?何か情報はないか」陳さんは、スマホで北京や上海などに何度もかけているが繋がらないようだ。きっと回線が混雑し過ぎているせいと思われた。

「外国のことはテレビでは何も言ってないですね」
「そうか、ネットで見るかぎりでは他の国で変化はないようだが」どういう訳か、海外の情報が伝わってこないのであった。

「そのようですね…」
「とにかく、これからどーするか」それが最大の問題であったが、なんら解決の糸口さえなかった。

「食料はしばらくはありますが、それでもあと3日ぐらいですか」
「そうか、ではわたしの部屋の食料も持ってくるとしようか」

 そうは言ったものの部屋の外に出るのは気が重かった。陳さんも昨日から自分の部屋に戻ることはなく、この部屋に留まっている。

 とにかく、この高層マンションにゾンビがいないという保証はないからだ。

 陳さんは、持参してきた青龍刀を手に取ってじっと眺めている。この人は、いったい誰なんだ、富裕層には違いないようだが、普通の人には見えなかった。それよりも、青龍刀なんかどこで手に入るのか疑問であった。いや、それどころか日本では保有するのも違法だろうに、と思っていた。

「ねー、お腹が空いたんだけど…」と、いつの間にか後ろに来ていた寝ぼけ顔をした妻が言った。そういえば、妻は昨日から寝たままだった。おれが偶然に頭をぶつけて気絶させたからである。

 妻はあれこれと矢継ぎ早に質問してきたが、いちいち応えるのがめんどーなのでテレビを見てくれと言って立ち上がり、おれは少し寝るからと寝室に向かった。

「ねー、この人誰なの?」と、妻はおれの後ろ姿に向かって、陳さんのことを言っていた。陳さんは苦笑いしながら自己紹介していた。手に持った青龍刀が光っていた。

 気が張っているせいか、あまり長く寝られなかった。起きたのは夜のとばりが下り始めた頃であった。陳さんはソファーで寝ていた。妻はテレビを見ていた。何か変化はあったかと訊くと、首を振って応えた。

 夕食は、買い置きしていた総菜とごはんで簡単にすました。そのあとはやることもなく、テレビを眺めていた。テレビでは、なんら有用な情報を流していない。それよりも、なんか異様な番組を流していた。

 それはバラエティー番組であったが、生放送となっていた。そこではリアクション芸人が何人か集められていた。かれらは目隠しをされて車に乗せられていた。そのあとが異様であった。テレビ局は倫理を捨てたかと思ったぐらいだ。

 目隠しされた芸人たちは、東京のとある場所で降ろされた。そこで、ミッションが言い渡された。現在の場所をスタート地点にして、ゴール地点(放送局)までゾンビにならずに辿りつくことができるか、というものであった。

 いやはや、人権もあったもんじゃない。面白ければいいという権化に徹した内容のものだった。しかしリアクション芸人は、根性を見せていた。

「やばいよ、やばいよー!」と叫びながら、それでもゴールを目指して散っていった。

 映像は何台かのドローンで行われていた。東京は夜でも明るいこともあり、十分に見られる映像となっていた。しかし、昼間ほどは明るくは無いので、例え芸人がゾンビに食われたとしても、それほど凄惨な映像にはならないに違いなかった。

 テレビ局は、倫理を無くしてしたが、それでもまだ防衛本能が働いたか。どうせ夜だし、暗闇で起こったことは無かったことにするつもりかもしれなかった。

「まじか、まじかー、やばいよー!」と、棒切れを持った手を振り回しながら、逃げ惑う有名なリアクション芸人が悲痛な叫びを上げていた。

<その2/おわり>

■小説自作|東京ゾンビマンション それは突然やってきた!(1)

冒頭動画:SHINJUKU NOBODY

TOKYO NOBODY―中野正貴写真集
TOKYO NOBODY―中野正貴写真集

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