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■社会|エリートが企業を劣化させる たこつぼ化する経営とはなんぞや

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揺れる企業統治、それは何故起こるのか

東芝、シャープに続き、今度は三菱自動車が…

 昨今、何故か日本の企業が揺れっぱなしである。熊本地震のあとで揺れるとは不謹慎かもしれないが、そうとしか言いようがない。東芝が会計不正で膨大な赤字に転落したが、今度は三菱自動車が燃費不正で窮地に陥っている。

 この燃費不正は、91年から25年間に渉って、法令とは異なる不適正な試験で燃費データを計測していたといわれます。

 三菱自動車は、みなさんも覚えていると思われるが、2000年に自社製トラックのタイヤが脱輪して歩行者が犠牲になった。このとき、当時の経営陣は傲慢な対応を隠さなかった。それが世間の反感を買ったのは言うまでもない。

 あとから判ったが、不具合を認識した上で隠蔽していたことがバレた。そのあげくの事故であるから、目も当てられない出来事だった。原発のメルトダウンとおなじく、事前に対処していれば何の問題もなかったかもしれない。

 しかし、三菱自動車では隠蔽に走った。それは、当然のようにコストがかかり、経営を圧迫するからだ。数値だけの判断では、ある意味では正しい。しかし、企業の継続性を考えれば、どうかしている。ましてや、顧客の安心や安全をおろそかにして、事業を継続できるかである。

 当時の経営陣は、短期的に収益を上げることしか頭になかったといえる。自分が経営陣でいるあいだ隠蔽できればいいと、そんな思惑が透けてみえる。頭のいい人が、考えそうなことだ。当然、かれらはエリートだ。

 エリートは、組織のなかで純粋培養されてきた。かれらは概ね冒険はしない。そして自らの失敗を恐れる。したがって、前例踏襲型の経営とならざるを得ない。何故なら、前任者たちが上から睨みを利かせているからだ。

◆エリートは、たこつぼに入りたがる

 エリートの「たこつぼ」と化した企業は、いずれは顧客から痛いしっぺ返しをされる。ソニー、パナソニック、サンヨー、シャープなどの家電業界は、いずれも似た様な内部事情で崩壊していった。

 創業者は、すでにいなくなり、あとを託されたのはいずれもエリートであった。一時期的には、業績は向上したが、それはまだ創業者の理念が生きていたからといえる。徐々に理念も薄れて、やがてエリートだけの「たこつぼ」となった。

 そこから企業の劣化がはじまるようだ。エリートの「たこつぼ」では、異端は排除されて仲間内だけで経営陣が決まっていく。似た様な経営しかできなくなり、そして変化に対応できなくなってくる。

 それでも、「たこつぼ」に入ったままで、そこから出ようとはしない。ついに企業は、にっちもさっちもいかなくなる。そこでようやく外部の力で「たこつぼ」を壊すことになる。内部ではなく外部からでないと「たこつぼ」は壊せない。

「たこつぼ」の壁は、内部からでは壊せない。これがいみじくも企業の劣化を象徴している。過去、あるいは現在、苦境にある企業の多くが、結局は内部ではなく、外部の力によって再生、またはその途上にある。

 エリートは、なぜ「たこつぼ」に入りたがるか。それは、学歴とおなじように、階段を昇っていくように、段階を踏むことで安心できるからに違いない。脇道に逸れることなく、順路通りにしていれば、昇進が約束されるからだ。

 一部のエリートには、気持ちのいいシステムかもしれないが、やがてはそれが命取りとなるのは過去の事例が証明している。それでも、なぜか企業は「たこつぼ」を繰り返している。それは、もう病巣と言ってもいいかもしれない。

 大企業には、高学歴のエリートが揃っているが、なぜか革新的なものが生まれてこない。海外ではアップルやグーグル、フェイスブックなどの革新的企業が、続々生まれているが、日本からそのような企業は皆無と言っても過言ではない。

 日本では若い人を中心に人気の高い「LINE」があるだろうと思うかもしれない。しかし、あれは韓国企業のサービスである。たとえ、作ったのが日本人であれ、それに資金を投じたのは韓国企業であるはず。

 韓国企業の方が、イノベーティブなのかもしれない。それは、たぶんに創業者が健在だからと思われるが、違うだろうか。

◆一見革新的と思われる、IT系も似たり寄ったりか

 先日、AbemaTVというのを見ていたところ、元ライブドアの堀江氏と元ドコモの取締役?だった人、そしてまだ若いIT起業家が出ていた。そこで話されていた内容は、こんな事業を始めたが好評だとかいう自慢話しであった。

 よく判らないが、話だけ聞いていればすごいようだが、それが本当なのか知る由もない当方は、なんとなく疑念も生まれていた。何故なら、そこに出ていた堀江氏以下の人たちは、「いいね、それ!」しか言わなかったからだ。

 なんだか、ここでも「たこつぼ」に入って満足し合ってる感じが拭えなかった。このような光景は、IT系関係者によく見られるようだが、なんだか日本のITの限界を垣間見ているようで痛いと思うしかなかった。

 大企業の組織だけでなく、世間ではイノベーティブと思われているIT系でも、違った形でたこつぼ化に嵌っているようだ。そして、それは深く静かに広がりをみせていると思われるがいかに。

なぜエリートほど大きな間違いを犯すのか? 原発問題の専門家が語る

<たこつぼ化の解説として>
組織のたこつぼ化を要約すると以下のようになります。(参考:日経BizGate)
 
 企業が年代を重ねて成長するにつれて、モノづくりなどの現場ですり合わせが進むと、組織がたこつぼ化するのは避けられない。同じ会社でも、出身母体によって派閥ができて、あちこちで分立する。

 会社の中で同じ部にいる人たちは長年すり合ってきているから、お互いによく知っているし、チームワークも悪くない。ところが、部門をまたいだ途端、よその会社になってしまう。水平的な連携を阻み、組織全体の力を発揮しにくくする。

 だったら、どーしたらいいか、それが問題である。ちなみに、当方にはよく判りません。あしからず。

組織で働く人々はときに、何故愚かな集団行動をとるのか

 組織が大きくなればなるほどに縦割りの弊害が顕著となってくる。それは、どんな企業も避けて通れないようだ。創業者が健在のうちは、カリスマ性でそれを抑え込むことができるが、カリスマが去ったあとはエリートが取って代わる。

 そして、「たこつぼ」がはじまっていく。アップルやグーグル、フェイスブックなどは、まだそこまで到ってはいないが、やがて来る未来にはどうなるか判らない。とくに、ジョブズなきアップルが、革新性が失われたといわれて久しいが、これからの動向が注目される。

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◆企業のたこつぼ化の弊害を分析した書「サイロ・エフェクト」

 フィナンシャル・タイムズ紙の記者が、企業が陥る縦割りの弊害について分析した書籍を出している。それを読んだ、元ソニー・ミュージック社長の丸山氏が興味深い感想を述べている。ちなみにサイロとは「たこつぼ」と同義である。

 ソニー・ミュージックは、いまやソニーの屋台骨を支える事業となったプレステのインキュベーター(孵化器)となった企業である。

 プレステは、企画段階では四面楚歌の状態にあり、仕方なく子会社であるソニー・ミュージックに開発者(久多良木氏)を移籍させて開発を続けさせた。丸山氏は、そんなプレステの影の立役者であった。

 「なぜ現代の組織で働く人々はときとして、愚かとしか言いようのない集団行動をとるのか」

 書籍に書かれたこの文言が丸山氏を惹きつけたそうだ。それは、プレステ開発段階の社内事情が思い出されたに違いない。

 当時のソニーでは、プレステとは別に本社でもゲーム機を開発していたようだ。それは、まさにプレステ潰しといっても過言ではないものだった。何故、そんな無駄なことをと思うが、それが大企業の病というべきか。

 丸山氏は、太平洋戦争を引き合いに出して次の様なことを語っている。

 この一節(愚かな集団行動)は私の長年の問題意識そのものだったからです。私は太平洋戦争が始まった昭和16年の生まれですから、戦争の悲惨さや戦後の混乱を覚えています。だから「なぜ日本はあの勝ち目のない戦争へ突入したのか」という疑問を長い間、抱いていました。

 その疑問を解くべく、あの戦争に関する本を何冊も読んできましたが、たとえば「アメリカが日本への石油輸出を全面停止した」「経済封鎖された」といった事実関係は書いてあっても、その先の「では、なぜ?」という肝心な点は曖昧なものが少なくなかった。

 ところが、文化人類学の研究者からジャーナリストに転じた著者によるこの本を読んだことで、文化人類学がその「なぜ?」を解き明かす道具になることがわかった。これが『サイロ・エフェクト』を読んだ最大の収穫です。

 丸山氏は、ソニーの子会社の社長として、ソニー本社との軋轢に悩まされたことを、太平洋戦争当時の軍部の所業と重ね合わせていると思われる。

 プレステ開発当時の社長は、大賀典雄氏であった。しかし、まだ創業者である盛田昭夫氏も健在であり、理念も生きていたと思われる。それでも、大賀氏はプレステの開発を本社から、外部に出すしかなかった。それは社内の抵抗勢力を抑えるつけることが難しかったことを表している。

 大賀氏は、創業者ではないが強い決定権を有していたと思われる。しかし、それでも大企業病といわれる、縦割り=たこつぼ化のきざしが顕著となっていた。

 そして、出井社長の時代となり、それはさらに進展し、そして定着化してしまった。それが、やがて来るソニーの苦境につながったのは言うまでもない。

 丸山氏は、この問題に対して次の様に語っている。

 サイロ(たこつぼ)を壊せるのは創業者だけ。創業者は異論があっても、「うるせえ、バカ野郎」と一言で黙らせることができる。大株主でもあるから、「いやなら出て行け」と言えるわけですよ。

 私に言わせると、企業にとってのサイロ(たこつぼ)は、人間でいえば「がん」みたいなもの。(略)会社もある種の生命体ですから、古くなればサイロができるのは避けられないと思いますね。

 とすれば、アップルやグーグル、フェイスブックなども、やがては「たこつぼ」の罠に嵌るのかもしれない。一番早くそれが訪れるのは、やはりアップルか。

なぜアップルに負けたのか。ソニー・ミュージック元社長が見た「サイロ」

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠
第二章 ソニーのたこつぼ…一九九九年のラスベガス。ソニーは絶頂期にあるように見えた。しかし、舞台上でCEOの出井伸之がお披露目した「ウォークマン」の次世代商品は、二つの部門がそれぞれ開発した三つの商品だった。それは「サイロ」の深刻さを物語るものだった。
サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

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