マスクの女、マスク・オブ・美人?
ゴールデンウィークもあっいう間に終わっていた。アタシには、なんの関係もなかったのは言うまでもない。今日も、深夜勤務が待っている。しかし、向かい風が強すぎる。向かい風を理由に休むというのはどーだろうか、と考える。
しかし、それはマイケル・ジョーダンだろうといわれるに違いなかった。
そういえば、今日は新しくシフトに入った新人さんと一緒のはずだった。年頃はアタシとおなじくらい。けっこう美人さんと思われるのだが、なぜかいつもマスクをしている。だからマスク・オブ・美人の素顔は、まだ見ていない。
「ともみさんでしたよね、今日はよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」とマスクの彼女は、漢字は朋美と書くと教えてくれた。
「学生さんかしら」
「いえ、介護の仕事をしてました。けど、辞めました。きつくて」
「そうなんだ。やっぱりきついんだ」
「そーですね。半端じゃありませんよ」
「へー、アタシには無理そうだねー」
「アタシはー、短大卒業したんだけど、なぜかコンビニにいるの」とアタシも事情を明かした。
「そーなんですかー、じゃーわたしより年下かしら」
なんと、ともみさんは年上のおねーさんであった。マスクをした彼女は、目元も麗しい美人さんであるが、はたしてマスクの下の素顔はどうか。それが気にかかって仕方がなかった。スタイルは、残念ながらアタシよりも痩せていた。
一方、心の中では、あなたもアタシとおなじく、脇腹がぷみょになる日もあっという間だから、と思っていた。
「あのー、マスクいつもしてるんですか」
「あー、気になりましたか。癖なんですよね。介護のときからの」
「そーなんだ。でもマスクが似合いますよねー」
「そんなことないですよ、仕方なくしているだけですから」
あー素顔が見てみたい、そんな気持ちが膨らんできていた。なんとか、ともみさんのマスクを剥がす方法はないか、と思案したが思い当たらない。仕方なく、いつの日か絶対見てやるぞ、という思いを心密かに忍ばせていた。
マスク・オブ・美人のともみさんは、お客のウケがいいようだった。心なしかアタシより、彼女の方をチラ見する男性客が多いように思われた。
たしかに、アタシと違ってマスクをした彼女は、清楚な雰囲気がしているし、おまけに目元が麗しの輝きに満ちていた。そんな目で見つめられれば、男なんてキンチョールでイチコロのゴキブリとおなじであるのは間違いなかった。
「くー、はやく素顔が見てみてー!」と思わずには居られなかった。
そう思うと同時に、「ちきしょう、痩せてやる!」となぜか対抗心が芽生えていた。今日確かめたばかりの自分のお腹周りと二の腕の、”ぷみょ”という感触が蘇ってきていた。それが、また苛立ちを募らせていた。
アタシは、「はぁー」とため息をついて宙に目を彷徨わせていた。
<コンビニの夜2/おわり>
追記:
最近、福田雄一監督が「ニーチェ先生」というコンビニを舞台にしたドラマをHuluで公開している。断っておきますが、当方の「コンビニの夜」はパクリではありません。「ニーチェ先生」は、2016年3月から公開されています。当方の作品は、2015年に当サイトで公開しています。あしからず。
内容はともかくとして、オリジナルであることは間違いありません。福田監督に対抗する気は毛頭ありませんが、とりあえずお知らせしておきます。なお、「ニーチェ先生」は、なかなか面白いです。さすが福田監督である。(原作は漫画)
おまけ/女子が伊達マスクを着ける理由
1.コンプレックス隠し
いわゆる「マスク美人」と言われるものです。マスクで鼻から顎にかけて覆うことで、目元が強調されてデカ目効果、コンプレックスを隠す効果、見る人に正しく整った黄金比率を自然と連想させて「バランスの整った顔」と認識させる効果など、さまざまな部分が補正されます。
さらにマスクの上側にワイヤーが入ったノーズフィットマスクの場合、鼻部分に角度をつけてキレイな鼻筋を演出できるなど、マスクによって隠した所をキレイにイメージ補正し、何となく美人に見せてくれるのです。
2.すっぴん隠し
家に帰ってメイクを落とした後や、今日は一日おうちでゆっくり、と思っていたのに、ふとコンビニに行きたくなる瞬間ってありますよね?でも、そんな一瞬のことのためにメイクするのは面倒。そんな時に便利なのがマスク。
ささっと顔を隠すことができてラクチンです。そしてこれに味を占めると、すっぴんマスク姿で行動できる範囲がどんどん広がります。メイクと違ってワンステップでできるし、つけるだけだから所要時間は3秒。マスクひとつで女子特有の面倒くささから解放されるのです。
3.ニヤケ隠し
メールを読んでニヤニヤ。思い出し笑いでニヤニヤ。妄想してニヤニヤ。人に見られると恥ずかしいし、気持ち悪がられますよね。ですが、マスクがあれば何の問題もありません。思う存分ニヤニヤしてください。
電車で好みのイケメンを見かけても、思いっきりニヤニヤしてください。大丈夫、あなたは「一人でニヤついてる変な女」ではありません。今のあなたはマスク美人なのです。
4.本音隠し
学校でも会社でも、誰かと対面するときに人は無意識に表情を作ります。ですが、マスクで顔を隠すことで相手に表情を読まれることがなくなり、「顔をつくる」必要がなくなります。
マスクがあれば、嬉しくもないのに笑顔を張り付けることも、友達のつまらない話を聞きながら楽しそうな顔を作る必要もありません。むしろマスクの下で舌を出すことも、鼻の穴を膨らませて暇つぶしをすることだってできるのです。
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