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■小説自作|コンビニの夜3 コズミック・サンシャイン・ベイビー

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コズミック・サンシャイン・ベイビー

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 暑い、クソ暑いぞ。もはや電気代をケチろうと冷房を止めることもできなかった。だから、少し早めに家を出てバイト先で涼むのが恒例となっていた。

 今日は、”マスク・オブ・美人”のともみさんと一緒だった。ともみさんは、元介護士の美人さんで、あたしより少し年上だった。いつもマスクをしていて、あまり素顔を見せることはない。

 それでも美人さんであることは隠せず、いつの間にか彼女の周りには男がうろついていた。同僚のAくんやBくんも明らさまな態度で媚を売っていた。

 おいおい、アタシはどーしてくれる、と思うばかりの今日この頃だった。

 コンビニにはレジが2台あり、ともみさんとそれぞれのレジを担当すると明らかな差があることが分かった。それは、ともみさんのレジの方が列が長くなる傾向が顕著だった。しかも若い男が多かった。

 それに対し、アタシのレジにはなぜかおっさんばかりが並んでいた。ハゲ、薄毛、脂性など中高年特有の個性をいかんなく発揮したおっさんが、行儀よく並んでいた。なかには、なぜかニヤニヤと微笑みを絶やさないおっさんもいた。

 ごきぶりホイホイが、独特の匂いでごきぶりを引き寄せるのとおなじで、何かアタシには中高年のおっさんを引き寄せる匂いがあるのかもしれない。それを考えると、無意識のうちに脇の下の匂いを嗅いでいた。

 そして、「んー、わからん…」と呟いて途方に暮れた。

 とにかく、アタシには、どーやら中高年の信者がいるらしい、と薄々気がついた。ともみさんとの差は大きいが、それは気にしないようにした。おっさんばかりとはいえ、少なくとも信者(ファン)がいないよりはましと思っていた。

 そんなアタシの信者の中で、よく声をかけてくるおっさんがいた。その客であるおっさんは、薄毛なのに長髪にして後ろで束ねていた。ラスタカラーが好きなのか、いつも洋服のどこかにその色合いを取り入れていた。

 いつ頃からか、アタシに話しかけてきて、それに適当に受け答えすると「じゃ、またね」と言って帰っていく、ということが続いていた。

 ある日、そのラスタカラーのおっさんが、唐突に言った。

「おねーさん、キュートだね。なんだかコズミック・サンシャイン・ベイビーみたいだ」とアタシの顔をまじまじと見ながら言った。

「はっ、な、なんですか、コズミックがどーかしましたか」アタシにはその意味がまったく不明だった。

「いやね、ほら響きだよ。イメージだけどね。おねーさん、なんとなく輝いているから、それに到底分かり合える年の差じゃないからねー」
「…んん。なんですかーそれ」アタシはますます混乱していた。

「いや、いいんだ。ごめんね。じゃまた」とラスタのおっさんは帰っていった。

 そしてアタシには、なんだか意味不明の言葉が残された。なんだ、コズミックなんたらってのは、いったいどーいう意味なんだと気になってしまった。

 そこで携帯の辞書を使って調べてみた。そしたら次のような文言が見つかった。

<cosmic、コズミック>
1. 地球に対して)宇宙の、宇宙から来る、宇宙飛行の
2. 広大な、非常に大きな、重大な、遠大な

 なんなんだこれは、とますます分からんことになったのは言うまでもなかった。

 とにかく、アタシはその日から「コズミック・サンシャイン・ベイビー」になったらしい。そして、まーいいかそれで…と思うことにした。

<コンビニの夜3/おわり>

注釈:「コズミック・サンシャイン・ベイビー」
1992年発売、NOKKO「ハレルヤ」に収録された楽曲


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