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■映画|エイリアン総集編 エイリアン〜エイリアン:コヴェナントまで

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エイリアン4(Resurrection)1997年

 前作「エイリアン3」の評価は芳しくなかったが、続いて「エイリアン4」が製作された。監督は、ジャン=ピエール・ジュネ。「デリカテッセン」「ロストチルドレン」等で、独特のファンタジー世界が高い評価を受けていた。

 今回の舞台は、前作から200年後、軍の実験宇宙船となっている。前作で、リプリーはエイリアンとともに溶鉱炉に身を投じて死んだ。

 それから200年後、軍の実験宇宙船では、惑星刑務所に残されていたリプリーの血液(DNA)を利用して再生されたクローン・リプリーの体内からエイリアンを摘出するという方法が行われていた。

 そして、摘出されたエイリアンは、軍の兵器として繁殖されていたーー。

 ちなみにエイリアン4には、サブタイトルに「Resurrection」とあり、復活を意味するそうだ。リプリーとエイリアンの再生であるのは言うまでもない。

 ジャン=ピエール・ジュネ監督は、その持ち味を遺憾なく発揮してみせた。とくに、SFの世界観が一種独特な雰囲気を醸し出している。どこか懐かしさに満ちた未来世界、レトロフューチャー(懐古的未来)の感覚が漂っている。

 リプリーを再生する装置や様々な実験道具はどこか懐古的であり、その造形美はどことなくサイバーまたはスチームパンクの影響が見て取れる。(サイバーパンク=過剰なテクノロジーが支配する一種の退廃的な未来世界のこと)

 ジャン=ピエール・ジュネ監督の母国であるフランスには、「バンド・デシネ」と呼ばれる、いわゆるコミック文化(日本での漫画文化)があり、なかでもメッセージ性の強いSF世界を描くメビウスの作品などが有名である。

 エイリアン4には、技巧を凝らしてファンタジー世界を描く、バンド・デシネやメビウスの影響が無きにしもあらずと考えるがいかに。ちなみに、監督の評価を高めた「アメリ」もいってみれば、バンド・デシネ的であったといえる。

 今作のエイリアンは、これまでにない活動性を見せてくれる。水中を尻尾を器用に操りながら半端ないスピードで泳ぐという、無敵性をまたひとつ加えた。ワニのようにくねくねとした動きが、これまた気持ちが悪い。

 また現実世界の社会的問題も取り入れている。実験宇宙船ではエイリアン繁殖のために、宇宙海賊船に捕らえられた人口睡眠中の人体(宇宙船乗組員)を買い取っていた。これは世界各地で問題の人身売買のメタファーとなっていた。

 エイリアン・シリーズに欠かせない要素として、アンドロイドが登場するが、今作では男性ではなく女性となっている。若きウイノナ・ライダーが演じている。

 個人的には、「エイリアン4」は、前作より興味深く観ることができた。この一種独特の世界観に魅かれるファンも多いそうだ。ともかく、エイリアンシリーズのなかで異彩を放っているのは間違いないーー。


エイリアン4/ポスター
引用:https://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/p/p/60/1c/116001_01.jpg

<エイリアン4/製作概要>
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
脚本:ジョス・ウィードン
出演:シガニー・ウィーバー
   ウィノナ・ライダー、他
公開年:1997年
製作費:7500万ドル

エイリアン4 ストーリー


クローン・リプリー
引用:https://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/p/p/60/1c/116001_01.jpg

 冥王星の近くに停泊する宇宙船オーリガ号。200年前にエイリアン・クイーンの幼生を体内に宿したまま自らの命を絶ったリプリー(シガーニー・ウィーヴァー)のクローンが再生され体内のエイリアンが取りだされた。ペレズ将軍(ダン・ヘダヤ)の指揮下、エイリアンは生物兵器として利用されようとしていたのだ。

 クローンのリプリーは過去の記憶だけではなくエイリアンの持つ凶暴さと運動性も引き継いでいた。密輸船ベティ号がオーリガ号に到着する。ベティ号の積み荷は冷凍睡眠中に誘拐してきた宇宙船のクルーたちだった。

 ベレズ将軍は彼らをエイリアンの宿主にしようとしていたのだ。ベティ号のクルーたちはオーリガ号の体育館でリプリーと出会う。ちょっかいを出した大男のジョーナー(ロン・パールマン)を超人的な運動能力でねじ伏せるリプリー。

 彼女がリプリーであることを知ったコール(ウィノナ・ライダー)は彼女の独房に忍び込み、ことの真相を聞かされる。スパイだと思われたコール及びベティ号のクルーたちは研究主任のレンたちに捉えられるが隠し持っていた武器で反撃、レンと兵士のひとりを人質にとってオーリガ号を占拠する。

あらすじの続きは、以下で
KINENOTE:エイリアン4/あらすじ

プロメテウス 2012年

 エイリアン・シリーズの新作が企画された。当初は、ジェームズ・キャメロンが監督する予定だったといわれる。しかし、キャメロンは降板し、新たな構想のもとにリドリー・スコットが監督に就任した。

 一作目の「エイリアン」の前日譚として企画が発表されたが、のちに若干修正された発言がされている。そのせいかタイトルにエイリアンの文字はない。どちらにしても、エイリアンシリーズのひとつであるのは間違いない。

プロメテウスとは
 プロメテウス(Promētheus) ギリシャ神話で、巨人神族の一人。 天上の火を盗んで人間に与えた。人間に知恵と文明を授けたともいえる。

 一作目の「エイリアン」では、エイリアンの強暴さとその無敵性から、人間の支配層はそれを密かに兵器として利用しようとしていた、それが搭乗していたアンドロイド(エイリアン捕獲が目的)の告白から明らかになる。

「プロメテウス」では、そのエイリアンが兵器として造られた生物であることが明らかになる。そして、その創造主は、人間も創造していたことが判る。映画では創造主をエンジニアと呼んでいるが、それは間違いなく神を指している。

 SFホラーの傑作は、哲学的な要素を深めてついに神の領域にまで到達した。

 既存の宗教的概念をこえて、人間は、宇宙の彼方にいる創造主(エンジニア)によって創造されたという、さらにその創造主は自らが創造した兵器エイリアンに滅ぼされた、という暗喩にもなっていた。

 これはまるで驕れる者久しからず、ではないかーー。


アンドロイドのディヴィッド
引用:http://media.lehighvalleylive.com/entertainment-general_impact/photo/prometheus-d980d69ec238aea1.jpg

 一作目もアンドロイドが重要な役割を担っていたが、それ以上に「プロメテウス」では、アンドロイドがキーファクターとなっていた。四作目までは、女性のリプリーが主人公だったが、アンドロイドがそれに取って代わっている。

 アンドロイドは、人間が創造したものだ。人間を創造した創造主(エンジニア)は、自らが作り出したエイリアンに滅ぼされた。それを考慮すると、その先が思いやられるのは自明の理だが、それは次作に引き継がれていく。

 上記したように「プロメテウス」は、一作目とは違ってかなり哲学的な要素が強く、そしてメタファー(隠喩)に溢れた内容となっている。そのせいか、一作目の恐怖感や緊迫感といったホラー要素は薄いと言わざるをえない。

 ともかく、監督や脚本家の指向性が、一作目の「エイリアン」とはまるで違っているようだ。個人的には、「プロメテウス」は、現実世界の戦略核兵器などをエイリアンに例えたものではないか、と想像するがいかに。

 そして、それら(エイリアン=核兵器など)を、人間はけっして制御できないと言ってるように思われて仕方がないが…。


プロメテウス/ポスター
引用:https://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/p/p/be/7f/158033_01.jpg

<プロメテウス/製作概要>
監督:リドリー・スコット
脚本:デイモン・リンデロフ、ジョン・スペイツ
出演:ノオミ・ラパス
   シャーリーズ・セロン、
   マイケル・ファスビンダー、他
公開年:2012年
製作費:1億3000万ドル

プロメテウス ストーリー


惑星の調査に向かうクルーたち
引用:https://i0.wp.com/nerdbastards.com/wp-content/uploads/2014/12/Prometheus2.jpg?resize=600%2C375

 2089年、世界各地の古代遺跡からある共通するサインが発見される。科学者のエリザベス・ショウはそれを分析し、地球外知的生命体からの“招待状”と確信する。そして巨大企業ウェイランド社が出資した宇宙船プロメテウス号に乗り、人類の起源を探るべく“招待状”が指し示すはるか彼方の惑星を目指す。

 2093年、長い人工冬眠から目覚めたエリザベスの前についに目的の惑星が姿を現わす。彼女は一緒に旅をしてきた他の乗組員、公私にパートナーのホロウェイや冷徹な女性監督官メレディス、精巧なアンドロイドのデヴィッドらとともに未知の生命体を求めて調査を開始するのだが…。

引用:「プロメテウス」オフィシャル・サイト

エイリアン:コヴェナント 2017年

全能の神よ我が業をみよ

「エイリアン:コヴェナント」は、前作「プロメテウス」の続編として作られた。監督は、前作同様にリドリー・スコットが就任した。

 リドリー・スコットは、今作と同時期に「ブレードランナー(1982年)」の続編も企画進行していたが、スコットは「エイリアン:コヴェナント」を監督することを選んで、「ブレードランナー」では製作総指揮に就いている。

 今作は、前作「プロメテウス」(かなり哲学的、かつ隠喩に満ちた)の続きであり、その内容も前作を踏襲するように複雑怪奇な様相を帯びている。

コヴェナント(covenant)とは
 契約する、約束する。拘束力のある約束、盟約、合意、協定。聖書における神とイスラエル人との契約。映画では…「神との約束」という意味が最も近いか。


引用:http://media-assets-01.thedrum.com/cache/images/thedrum-prod/s3-news-tmp-77017-alien-covenant-2017-poster-cropped–2×1–940.jpg

 2104年、植民船「コヴェナント号」は、冷凍休眠中の2千人の入植者と1千体以上の人間の胎芽を抱え、人類の新天地となる惑星「オリガエ6」に向けて航行していた。人口睡眠中の人間を管理するのは、またしてもアンドロイドだ。

 前作で登場したアンドロイドと瓜二つのウォルターという名のアンドロイドが植民船には搭乗していた。この植民船は目的地へ向けて航行中に、ニュートリノの衝撃波を受けて甚大な故障を起こしてしまう。

 そこに雑音が混じる信号がキャッチされる。その信号は、植民船からほど近い惑星から発信されていた。発信源の惑星を調べてみると、そこは地球に近い環境であることが判明する。そこで搭乗員たちは、惑星を実地調査することにした。

 ここまでの展開は、なんだか一作目の「エイリアン」に似ていなくはない。一作目では、キャッチした謎の信号に誘い出された搭乗員たちは、降り立った惑星でまんまとエイリアンに寄生されてしまった。

 今作も同様の展開が予想されたが、その後の展開は想像をこえていく。前作「プロメテウス」と同様に、今作もアンドロイドがその鍵を握っていた。

 実地調査に赴いた惑星には、前作で生き残ったアンドロイドのデヴィッドがいた。デヴィッドは、ある科学的な実験をしていた。それは想像を絶する奇怪なものであり、別の意味では、創造主=神になろうとしていた。

 そんなアンドロイドのデヴィッドは、ある詩を朗読するーー。
「我が名はオジマンディアス、王の中の王、全能の神よ我が業をみよ、そして絶望せよ」、それはエジプトのラムセス2世を題材にした詩だった。

 その意味するところは、神を越えるという王の傲慢さを表していた。アンドロイドを創造したのは人間だった。人間、そしてエイリアンを創造したのは創造主(エンジニア)だった。エイリアンは、その創造主を殺した。

 アンドロイドは、人間、その創造主を越えて、自ら神(創造主)になることを願ったのか、人間たちに危機が迫ってくるーー。

 今作で一番怖かったのは、エイリアンではなく人間が創造したアンドロイドだった。それはラストシーンでまざまざと感じることができる。

 神=創造主(エンジニア)は、人間とエイリアンを創造したが、思うようにはいかなかった。人間もアンドロイドを創造したが、やはりおなじことが予想されるようになった、ということが想像できる隠喩となっている。

 なお、次作に続くようであり、どのような展開になるのか期待されます。


エイリアン:コヴェナント/ポスター
引用:http://eiga.k-img.com/images/movie/83604/photo/2f86693dd13db465/320.jpg?1494319403

<エイリアン:コヴェナント/製作概要>
監督:リドリー・スコット
脚本:ジョン・ローガン、ダンテ・ハーパー
出演:マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、他
公開年:2017年
製作費:9千7百万ドル

エイリアン:コヴェナント ストーリー

エイリアン/コヴェナント特別映像

 人類初の大規模移住計画により、新たな植民地となる惑星オリガエ-6を目指して2000人の入植者とともに地球を旅立った宇宙船コヴェナント号。船の管理は最新型アンドロイドのウォルターによって行われていた。

 ところが突然のアクシデントで、船長を含む数十人が命を落としてしまう。そしてその直後、コヴェナント号は謎の電波を受信する。急遽、船長代理となったオラムは、亡くなった船長の妻で科学者のダニエルズの反対を押し切り、進路を変更して電波の発信元である惑星へと向かう。

 ダニエルズ、オラム、ウォルターらが調査隊として探索をしたところ、本来の目的地よりも遥かに地球の環境に近いことが分かってくる。ところが、そんな調査隊を、思いも寄らぬ事態が襲う。窮地に陥った一行の前に、かつてプロメテウス号に搭乗していた旧型アンドロイド、デヴィッドが姿を現わすのだったが…。

公式サイト:エイリアン:コヴェナント
http://www.foxmovies-jp.com/alien/
ストーリー引用:エイリアン:コヴェナント allcinema

参考:エイリアンDVD、ウィキペディア、KINENOTE、他

<追記>
 なお、映画の解釈については、個人的な解釈を多く含んでいます、必ずしもそれが正確なものとは限りません。ご了承ください。

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