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■映画|パルプフィクション 低俗も極めればクールになる

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脚本、そして映像と音楽について

<脚本について>

 タランティーノ監督は、独学で映画を学んでいる。その後は、脚本家として世に出ている。したがって、脚本の才は業界でも定評があるようだ。

 もちろん、監督としての才能が高いのは知られたことであるが、脚本があっての作品であるのは言うまでもない。この作品でもいかんなく発揮されているのは、なんと言っても、そのアイデアとセリフの秀逸さである。

 それをユニークと言ってしまえば、それまでであるが、そこに至るまでにはきっとタランティーノ監督ならではの独自のプロセスがあると思われる。

 映画オタクとして有名な監督は、その豊富な知識を独自のフィルターを通して他にはないアイデアを生み出し、それをさらに個性ある作品としている。

 特徴あるセリフは、いかにして生まれるか。それは実に興味深いものがある。

 この作品に限らず、監督の他の作品でも多く見受けられるのが、本気ともジョークともとれるセリフである。それは矢のような速度で言われることが多い。そして、実にもっともらしいが、どこか胡散臭くもあるのが特徴である。

 映画は、「たいくつでない日常を描いたもの」といわれるが、それはフィクションであるから当然かもしれない。たいくつでない日常は、ある意味で嘘ということでもあるから、それを見越しているのかもしれない。

 虚構と真実の間にあるもの、それが本気ともジョークともとれるセリフとなって表現されている、と想像できるがいかに。

 映画は虚構であるが、しかし若干の真実も含まれている。そんな風に思わせるところが、タランティーノ監督の脚本にはあるように感じられます。

<映像について>

「パルプフィクション」の映像美は、どこか懐かしい色味を帯びている。なんとなく、1950年代や60年代の映画の色味や質感を漂わせている。それは気のせいかもしれないが、90年代の他の映画とはどこか雰囲気が違っている。

 映画のテーマになったパルプマガジンの出版は、1950年代を最後に廃れたといわれるので、その時代に合わせた映像美にしたのかもしれない。

 ダークで硬質な感じではなく、どこか温もりを感じさせるような映像美であり、それはある意味では、失われたパルプフィクションへの郷愁を感じさせてくれる。そんな想いがするが、それも気のせいかもしれない…。

 とにかく、その映像美がテーマにふさわしいものだったのは言うまでもない。

<音楽について>

 テーマ曲をはじめ、背景に流れる曲のほとんどがサーフミュージックという懐かしい音楽ばかりである。ビートルズ以前というか、60年前後の音楽であるのは間違いない。それにしても、この選曲には実にセンスの良さが光っている。

 マフィアや殺し屋が登場する、いわば犯罪映画とサーフミュージックの組み合わせなんて、それまでなかったはずである。

「人生楽しもうぜ、波乗り最高!」といわんばかりのサーフミュージックを背景に、映画の中では人が簡単に殺されていく、というなんとも残酷な展開が描かれている。これは皮肉を込めた監督の遊び心なのかもしれない。

 それはさておき、このような意外な組み合わせこそが、タランティーノ監督の真骨頂となっているのは間違いないだろう。

 ちなみに、選曲は、タランティーノ監督が個人的に愛好しているサーフィン・ホットロッドミュージックが全面的にフィーチャーされたそうである。また、ディック・デイル&デルトーンズのヒット曲「Misirlou」は、この映画によってリバイバルヒットとなっている。

パルプフィクション 1994年

<スタッフ&キャスト>
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
原案:クエンティン・タランティーノ
  :ロジャー・エイヴァリー
出演:ジョン・トラボルタ
  :ユマ・サーマン
  :サミュエル・L・ジャクソン
  :ブルース・ウィリス
  :ティム・ロス、ほか

<ストーリー>
 ロサンゼルスの朝、レストランで不良カップルのパンプキン(ティム・ロス)とハニー・バニー(アマンダ・プラマー)が、強盗の相談をしている。

 2人組ギャング、ヴィンセント(ジョン・トラボルタ)とジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)が、ボスの命令でだまし取られたスーツケースを取り返しに若いギャング団のアパートに車を走らせ、虫けらのように彼らを殺していく。

 その頃ボクサー、ブッチ・クリッジ(ブルース・ウィリス)が、ギャングのボス・マーセル・ウォレス(ビング・ライムス)から八百長の依頼をされていた。

 ヴィンセントはマーセルから留守中、若く美しい妻ミア(ユマ・サーマン)の食事の相手を命令され、2人は50年代風のクラブ・レストランに行きダンスを踊り、互いに魅かれ合う雰囲気となる。

 ブッチはマーセルを裏切って自分に大金をかけて試合に勝ってしまった。ブッチは恋人ファビアン(マリア・ディ・メディルシュ)の待つモーテルにかけ込むが、彼女が父の大切な形見である金時計を忘れていることを知り、危険を覚悟で再び自分のアパートに戻ることにした。

 そこにはヴィンセントが待機していたが、トイレに入っていたヴィンセントは逆にブッチに撃たれて死んでしまう。しかしその後ブッチはマーセルに出会い、その後2人は変質者たちに捕まってしまい拷問を受ける。

 時間は戻り、スーツケースを取り戻したヴィンセントとジュールスが車を走らせている。ヴィンセントが誤って撃ってしまった死体の始末にザ・ウルフ(ハーヴェイ・カイテル)を呼んでいた。

 一件落着した後、2人が入ったレストランでは、パンプキンとハニー・バニーが強盗をやらかそうとしていた。

ストーリー参考:kinenote/パルプフィクション
その他参考:ウィキペディア、作品DVD、ほか

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