台東区は意外とディープスポットなのかもしれない
浅草には外人さん、鴬谷には将軍家霊廟とラブホテルが混在する
台東区といえば、一般的には浅草や上野が思い浮かぶに違いない。JR山手線の駅では、御徒町、上野、鴬谷、日暮里などがあり、地下鉄銀座線では浅草橋、浅草などがある。隅田川を挿んで東側が墨田区、そして西側が台東区となっている。
現在の東京では中心から外れた地区といえるだろう。浅草は外人さんに人気であるが、東京人にはどうだろうか。しかし、かつては繁華街といえば浅草であった時代があった。それは遠く過ぎ去った日々として記憶に残されている。
浅草、上野以外に何があるのか、と門外漢の当方は思ったが、実は歴史的に見ると案外重要な場所であることが判った。鴬谷駅は、東京で最もダサイ駅といわれているが、そこからほど近いところに歴史的にも由緒ある場所がある。
鴬谷駅の西側には寛永寺があり、徳川家6人の将軍(家綱、綱吉、吉宗、家治、家斉、家定)の霊廟がある。ちなみに、家定の隣には、大河ドラマの主人公になった「篤姫」も埋葬されている。
「美しい日本の歴史的風土100選」において、次世代に残す美しい日本の歴史的風土が、良好に保存されている全国の事例の一つとして寛永寺および上野公園周辺、谷中の街並みが選ばれている。
鴬谷駅の東側には、江戸時代、大商人や文人墨客が別宅や隠居先とした根岸がある。関東大震災や戦災の被害も少なく、昔ながらの曲がった道や袋小路が残っている。
さらには、鶯谷駅から歩いて5、6分ほどの住宅街の一角に「昭和の爆笑王」と呼ばれた落語家、林家三平(先代)の資料を集めた「ねぎし三平堂」がある。
そんな歴史的な場所があるにも関わらず、現在の鴬谷はなんだかさびしい限りである。ラブホテル街や風俗でしか、いまや聞く事が無いと言っても過言ではない。失礼ながらと思うが…それが事実であるのは違いない。
しかし、鶯谷は台東区の隠れたディープスポットなのかもしれない。見方を変えれば、面白い場所と思われるがいかに。徳川将軍家の霊廟とラブホテル街という組み合わせは、いかにも日本らしい美的観点のなさである。そういえば、台東区千束には日本一のソープランド街もあった。
ムムムッ、なんということだ。なんてディープなんだ!。
とにかく、どうしてそうなったか想像しながら、界隈を散策してみるのはありかもしれない。遠く過ぎ去った日々を想いながら…。
山手線「ダサい駅」ワーストワン・鶯谷駅を降りた先には…(産経ニュース)
追記:ちなみに、鴬谷という地名はないそうである。また、最近ではマンション建築が盛んであり、様相も変わりつつあるとのこと。
隅田川沿いの街並みと遊覧船が奏でる独特のハーモニー
隅田川を挿んで台東区、墨田区があり、その両岸にはオフィスビルやマンションが建ち並んでいる。その一方では、隅田川を拠点とする遊覧船やその他船舶の停泊場所が多く点在している。
そこには、水辺、川沿いという独特の雰囲気を持つ場所ならではの光景が見てとれる。隅田川は、かつては重要な物流を担っていたはずである。しかし、現代ではそれも車や鉄道などに取って変わられた。
それでもなお、水辺には人を惹き付けて止まない何かがあるようだ。水辺のそばにいると何故か安らぎを覚えることがあると思うがいかに。とにかく、人間と水は切ってもキレない関係にあるのは間違いない。
なんせ、人間のからだの約60%(大人)は水分であるからだ。
TVドラマ「大川端探偵社」では、探偵であるオダギリジョーと石橋蓮司の事務所が川沿いのビルにあった。なんとなく雰囲気がうさん臭い探偵が構える事務所には最適の場所と感じたが、それは川沿いに対して失礼か。
とにかく、水辺や川沿いが漂わす独特の雰囲気は、人々にロマンを掻き立てて止まないと思うのは当方だけであろうか。
川や海の水が揺らめきながら波を立てる様子を見ていると、いつのまにか幽玄の世界に引込まれそうである。人間は時代とともに変わってきても、水は変わることなく人間のそばにある。人間の営みをじーと観察するかのように…。
下町の雑然レトロなブレードランナー的光景
東京スカイツリーは墨田区にあるが、お隣の台東区からでもよく見える。台東区には、まだ多くの下町情緒が残されている。そこから見える近代的なスカイツリーはどこかブレードランナー的な様相を呈している。
ブレードランナーは、言うまでもなく近未来をテーマとしたSF映画の傑作である。そこで描かれた近未来は、懐古的未来世界であった。モダンとレトロが融合したレトロモダーンな世界が広がっていた。
台東区の下町から見たスカイツリーは、まるでタイレル社(人型ロボット=レプリカントの製造会社)を想像させる。形は違えども、レトロな趣の下町とモダンな建築物との対比がブレードランナーそのものである。
また下町の雑然とした趣きもおなじくである。それにしても、この電線はいったいどーなんているか。こんがらかったりしないか心配になるぐらいに空間を四方八方に広がっている。もはや電線アートとでもいうべき様式美?となっている。
浅草通り沿いのレトロ建築
台東区上野4丁目あたりに時代を感じさせるレトロな建築がある。それが「比留間歯科医院」である。大正モダンか、昭和モダンか判らないが、とにかく年期が入った建物であるのは間違いない。
モダンな趣ではあるが、どこか日本的な和を感じさせるところもある。それが、一種独特の雰囲気を漂わせている。横溝正史や江戸川乱歩の世界に登場しそうな建物であると同時に、時代を経た重厚な空気感のようなものが感じられる。
この建物を現代まで持ちこたえさせたのは、持ち主の愛情故だと思われる。メンテナンスを施す手間を考えたら、立て替えのほうがいいに決まっている。それをせずに歴史を刻んで行く道を選んだ持ち主は、その価値が判る人なのだろう。
スクラップ&ビルドが進む東京でどこまで歴史を刻んで行けるか。それは持ち主も判らないと思われるが、できるだけ長く健在であって欲しいと想います。
レトロ建築に幸あれ、と切に願います。
追記:なお、現在も建物が健在かどうかは未確認であります。あしからず。
おまけ/下町の構成主義的な光と影
元浅草3丁目あたりの街並の一角だそうです。光と影が織りなす様子がなんとなく構成主義の絵画のようです。なんとなく気になったので追加しました。
こちらも構成主義のような表層をした建物です。233とは何でしょうか?なんだか気になります。
紫の線で囲われた部分が台東区です。上野恩賜公園は丸ごと入っています。美術館や博物館が多くあります。たしか東京芸大も近くにあったはずです。
写真:すべて村田賢比古 公式サイト「Kai-Wai 散策」http://kai-wai.jp/
写真の著作権は、村田氏に帰属いたします。
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