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■小説自作|乗っ取られた街(1)ストレンジフルーツ

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それは未知の物体だった

乗っ取られた街 ストレンジフルーツ

作:cragycloud

<北の大地にある研究施設>

 北海道の内陸部に広大な敷地を有する研究施設があった。そこで何が行われているかは、一切が秘密にされていた。実際、研究施設があることも公にはされていなかった。施設がある敷地は広大であり、木々が生い茂るなかで研究棟は人の目に触れる事さえなかった。敷地の周りはぐるりとフェンスで囲われていた。その長さは他には比較するものがないものであった。

 米軍基地さながらに施設の出入り口には検問所が設けられていた。そして、そこには銃を手にした自衛隊らしき兵がいた。また、敷地の周囲を兵を乗せたジープが巡回していた。異様な雰囲気を漂わせたこの施設が、いつしかマスコミやその関係者たちの興味を引くようになっていた。

 そして、いろいろな噂が飛び交っていた。

「超能力を研究している」「いや、人体改造の研究だ」「UFOを隔離し研究している」などである。これらの噂の根拠は、研究内容を秘密にして公表しないことにあったのは言うまでもない。また、敷地内の一画に廃材置き場のようなものがあり、そこに奇妙な形の物体が所狭しと投げ出されていた。それを空撮して発表したマスコミは、それをストレンジフルーツと呼んだ。

 しかし、それでも研究施設は何の発表もすることはなかった。そして、いつの間にか廃材置き場らしきものは、屋根で覆われてしまった。

 空撮したカメラマンは次のように言った。

「たしか、鉄らしき金属が奇妙な形で転がっていた。大きさは、様々だっと思う。それは、一見すると前衛芸術かと見まがうようであった」

また、同行していた記者も同じく、
「とにかく、奇妙としか言えない状況であった」と言っていた。

<未来総研・第一研究所>

 わたしは、北海道の内陸部にある広大な敷地のなかにある研究施設に勤務していた。配属された部署は、未来総研・第一研究所である。わたしの専門はロボット工学であった。人が作業できない場所で変わりに作業できるロボットを研究開発していた。この未来総研は、複数の企業と国の出資で設立された。しかし、その研究内容は、秘匿扱いであった。それも厳重な管理がされていた。

 わたしが開発していたロボットには、その目的が明確には示されていなかった。操作性は、できるだけ遠隔であること。そして人間の数倍の力が発揮できること。そして敏捷性が求められた。求められたのは、単純には物を掴んで運ぶ能力である。問題は、人型ロボットを求められたことであった。

 最終目的が知らされないまま研究を続けて行くうちに、いつしか、ある噂を耳にするようになっていた。その噂はあっという間に研究所に広まった。しかし、その噂は嘘であるという未来総研からの通達と、秘密事項に関する新たな契約が行われた。これによって、わたしの給与水準は噂以前の1.5倍になっていた。

 噂を流したと思われる研究員は、解雇されて精神病院に強制入院させられたと言われていた。しかし、その実態は闇の奥に仕舞われて誰も知る由もなかった。

 とにかく、その噂はとんでもないしろものであり、科学者なら到底信じることができないものであったのは間違いない。

 そんなことがありながらも研究は進んで、人型ロボットはほぼ完成系に近いものが出来上がった。要望どおり人型ロボットであり、力も十分であった。ただし歩行にやや難がありそれを改善するにはまだ時間が掛かりそうだった。しかし、現状ままでも十分に使用に耐えるものであった。

 あとは操作性であった。人口知能を備えたものにするかで議論があった。人口知能を持たせれば、プログラミング次第で遠隔しなくても繰り返し同じ作業ができる。未来総研では、人口知能に不安を覚えているようであった。それが何に起因するかは分からなかった。そこで、遠隔操作のものと人工知能を備えたもの両方を造ることになった。

 人工知能は、比較的単純なものが選ばれた。それは作業の内容に適するためであった。また、それによって不具合も少なくなるはずであった。

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<乗っ取られた研究所>

 わたしは、人型ロボットの研究成果を報告するために東京の本部に来ていた。未来総研には、第一から第九までの研究所があった。また、それらを統括する総合研究所というものがあった。個々の研究所の所員は、全体像を把握してはいなかった。唯一、それを知っているのは総合研究所の幹部所員のみであった。

 東京には、運営・マネジメントを統括する本部があった。ここでは国や出資した企業に進捗を報告する仕事をしていた。また、マスコミ対策やもろもろの問題処理をしていた。

 未来総研の本部ビルに着いたわたしは、本部の所員が揃うまでプレゼンルームで待機するように言われた。しかし、予定の時間になっても誰も来なかった。何かおかしいという思いで、内線で呼び出した。が、しかし繋がらない。そんなとき、ビル内に警報のような音が響き渡った。

 これは聞いた覚えがある。研修中に聞かされたレベル3の警報だ。これは大事に違いない。レベル3は、かなり重大事でなければ鳴らない仕組みだ。最大の警報はレベル5である。しかし、これが鳴ったら総員退去どころか閉じ込められる。

 何が起きたのか知ろうと思って部屋の外に出た。しかし、誰も見かけない。そうするうちに、携帯端末に着信があった。すぐに本部ビルの最上階にある運営管理センターまで来るように言われた。

 管理センターはとても広い部屋で壁にはモニターがたくさん並べられていた。そして室内には多くの所員が揃っていた。入り口近くにいた警備関係者に、呼ばれたことを伝えると見覚えのある所員がやってきた。

 かれは総合研究所の所員であった。今回、わたしの成果を報告をする相手でもあった。かれは厳しい顔つきを誤摩化さず、わたしを見て言った。

「大変なことが起きたようだ」かれは、そう言っていた。
「何が、大変なんですか」とにかく、わたしは訳が分からなかった。
かれは、総合研究所に在籍しているから、全体像を知ってるがわたしは知らないので率直に疑問を呈していた。

「研究所がアレに支配されたようだ」
「どういうことですか」誰に支配されたのか。意味が分からなかった。

「あなたは知らなかったね。しかし、今度はあなたにも知ってもらうしかない」
「何を・・・ですか?」

「あなたが開発したロボットは、ここからでも遠隔操作できますか」
「ロボットですか?あ、もちろんできますが・・・それが何か」

「そう、できれば人口知能ではない遠隔操作ロボットがいい。こちらに来てくれ」かれはそう言って、わたしを大きな画面のモニターを見るように促した。

 そこには北海道の見覚えのある研究施設が写されていた。画面は切り替わり、ある研究所棟のなかが写されていた。そこには入ったことはなかったが、わたしのいた研究所と室内はよく似た構造であった。カメラはどんどん切り替わり中へと入って行く。しかし、なんだか変だ。研究員の姿が見られない。つまり人気がないのだ。

 どんどんカメラが切り替わるうちに、ある研究室のなかに人が倒れているのが見えた。それも数人、いやそれ以上か。そのとき画面の中で何かが動いたのが見えた。なにかの液体か、いや物体か。それはゆっくりと動いて移動していた。

「アレは何ですか」とわたしは思わず訊いていた。
「アレは、この問題の根源だ」とかれは言っていた。

「アレを閉じ込めたい。あなたのロボットを使って。協力してくれ」
「とにかく、アレは何ですか。まずそれを教えてください。それからです」

「わかった」と言ってかれは多くの文字が書かれた数枚の紙切れをわたしに寄越した。そこには秘匿契約書と書かれていた。
「またですか」とわたしは思わず言っていた。

<つづく>

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