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■戯曲|「コンビニの夜」特別編 キューピーハニー危機一髪

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「コンビニの夜」は、当該サイトで小説自作として連載しているものです。これまでに11編のショートストーリーを掲載しています。今回は、趣を変えて戯曲=演劇の台本として書いてみました。くだらないですが、一読して頂けると幸いです。

戯曲|コンビニの夜 キューピーハニー危機一髪


庵野秀明 実写映画作品集 1998-2004 [Blu-ray]

作:cragycloud

舞台、漆黒の闇の中ーー。
背景には、「ハローマイフレンド(松任谷由美)」が静かに流れる。

スポットライトが舞台を照らすと、そこにはひとりの女性が佇んでいる。
女性は、アイドルグループ、またはアニメヒーローの戦闘服姿のような目にも鮮やかなコスチュームを身につけている。

女性は、おもむろに空手の型のような動作をはじめる。

「ちょあー、きえーー、ちょちょー、ちょーす、とっと、とあーっちち…」と、一通りの動作と奇声を終えると、正面を向いて一礼をした。

そして、起立の姿勢にすると、軍隊式に右手の肘を肩の線まで上げて、手のひらはやや正面に向けて、指先はまっすぐに右こめかみに当てた。

そして、とても大きな声でだれかに向かって報告をはじめる。

「日本国国家防衛軍〜首都圏防衛隊〜、『特別攻撃隊怪獣班所属』〜特別攻撃隊員〜キューピーハニー、ただいま参上いたしました〜」

背景には、「ファイアークラッカー(YMO)」が、大きな音量で鳴り響く、そして会場全体を包み込んでゆく…。

舞台ーー暗転(暗くなること)
音楽ーーフェードアウト(ゆるやかに音が消えてゆく)

第1章 キューピーハニー 戦いのとき

舞台、漆黒の闇の中ーー。
「キュンキュンキュンー、カンカンカンー、キュンキュンキュンー、カンカンカンー」、というホラー映画の背景音のような音が鳴り響く…。

背景音がフェードアウトすると、こんどは何者かが殴り合いをしている物音がしてくる。

「チョアーー、トタタタタタター、ドスドスドス、これで最後だ、スーパーハニーチョップを喰らえーー、キヨアーチョー」

「ふふふふ。これでお前は死んだも同然だ、二度とアタシの前に現れるな」

闇の中スポットライトが舞台を照らすと、そこには、アニメ風戦闘服姿の女性が、戦いのポーズを決めて立っている。

「怪獣め、キューピーハニーさまを舐めんなよ、ところでさー、おめーたちはなんでくせーんだよ、中高年おやじの加齢臭をさらに煮詰めたような匂いがきついんだよ。アタシはさあー、家に帰ってから除菌、除臭してんだぞー」

「まーたく、除菌・除臭手当がほしいぞ。あっそうだ、ボスに掛け合って手当を出してもらうか。そうだ、そうだ、それがいいな」

ぴーひゃらぴーひゃら、ぴーひゃらぴーひゃら、という音がしてくる。それは、キューピーハニーの腕時計型端末から発していた。

「おっ、ボスだ。ナイスタイミングね」
「いやほー、ハローボス!」

そして、ボスの声だけが訊こえてくる。

「おはようキューピーハニー、新しい指令を伝える、指令番号152389の発令だ、北関東に怪獣が現れた。すぐに出動してほしい。場所と怪獣の詳細は、のちほど送信する。この音声は、終了後20秒で消滅する」

「あっそ、アタシは家に帰るからボス。あとはよろしくね」

「ちょちょーと待って、ハニーちゃーん。もうひと仕事たのむよー、ね、わたしとあんたの関係じゃないか、そこを汲んでもらえないかなー」

「ぐえ、ちょっと待った。ボスとアタシの間になにか特別な関係があったかしらね、とにかく家に帰るから、あとはよろしく」

「いやいや、ハニーたん。それは言いすぎた、とにかくハニーの要望を訊こうじゃないか。できることがあれば対処するよ」

「あっそ。じゃねー、臭〜い怪獣の除菌、除臭手当をいただこうかしらね。どうよボス、出してくれるかしらー」

「んーー、なんかよくわからんが検討、いやこの際出そうじゃないか。約束する。だから怪獣退治に北関東行ってくれるかな」

「いまの録音したからね、毎月だからね。約束だよ、もし守らなかった二度と出動しないかんね。そこんとこよろしく。じゃねーバーイ」、というとキューピーハニーは、急いで携帯端末の応答をオフにした。

「あれ、そういや、この音声は終了後20秒で消滅するなんて言ってなかった。消えねーじゃんか嘘ばっかりだな、中間管理職は。まーボスには、かわいいとこもあるから許してやるか。除菌、除臭手当も出ることだし」

「あっそうだ、セーラーのおねーさんにも教えてあげよー」

携帯端末を操作するキューピーハニー。

「あっ、セーラーのおねーさん。ひさしぶりっす、元気すか。ところで、今度ですね、怪獣の除菌、除臭手当が出ることになったんです。そうそう、そのとおり。臭いすよね。だから、今度出動指令があったら、そこんとこはっきり言ってください。そうそう、ボスにはがつんと言っときましから。じゃまたねー」

「さてと、北関東か。いくか怪獣倒しにーー」

背景には、「残酷な天使のテーゼ(エヴァンゲリオン)」が流れてくる。音量がだんだんと大きくなる。会場を包み込む。

「キューピーハニー、いざゆかん」

スポットライト消えて暗闇に、残酷な天使のテーゼがしばらく流れる。

舞台ーー暗転
音楽ーーフェードアウト

第2章 コンビニの夜 招かざる客

舞台、漆黒の闇の中ーー。
「春よ来い(松任谷由美)」が静かに流れる。

「いらっしゃいませー、856円です、ありやとさんしたー」

時は丑三つ時、深夜のコンビニ店内ーー。

舞台が明るくなる、そこには長テーブル(コンビニのカウンター)と、その後ろに女性がひとり立っている。

「あーたるいなー、なんだか寝不足だわ。美容に悪いわね、これじゃ」と独り言を言いながら、カウンターの前でなにかの作業をしている。

「人手不足で大変だとニュースサイトなんかで言ってるけど、なんでアタシの時給は上がんないの。やめちゃうぞ、このやろめ」

「あー、なんかいいことないかしらね」、とぶちぶちと愚痴をのたまう女性従業員は、キューピーハニーの本来の姿であった。

ピンポンパンポーン、と入り口のチャイムが鳴って客が入ってきた。

「いらっしゃい、ま、ま、えーーー」

ところが、入ってきた客は異様な姿をしていた。上半身は裸で頭髪はパンクのような髪型をしていた。顔には忌野キヨシロウみたいな化粧をしていた。しかし、若くはなく、どこからどーみても中高年のおっさんだった。

これはまぎれもなく、変態がコンビニにやってきたのだった。

そして、この客は調子ぱずれの歌い方で歌を口ずさみながら、店内を回り始めた。

「いきなくろべい〜、みこしのま〜つに、あでなすがたのあらいがみ〜、しんだはずだよ〜、おとみさん、いきていたとは、おしゃかさまでもしらむほとけの、おとみさん〜、えっさおー、げんやだな〜」

と歌いながら、ときにエッサホヤなんとか、という掛け声も入れつつ、腰をくねくねさせた奇妙な踊りも交えてコンビニ内をぐるりと回っていた。

「ななーなんですかー、お買い物はなんですかー」

と訊いてみたが、返答はなく、コンビニを一周すると入り口でお辞儀をして、そのまま買い物をするでもなく帰っていった。

「あ、あれー、な、なんですかーー」

と思わず叫ぶと、奥の休憩室(舞台下手)からもう一人の女性従業員が飛び出してきた。

「な、なにー、なにがあったの。強盗、強盗、強盗かしらー」

「いやー、あのー、あれです。えー、そうです。ヘンタイがきました」

「えー、ヘンタイって、あのヘンタイかしら」

「はい、たぶん、そのヘンタイです」

「警察に電話しましょ。110番すぐきてよと」

「もしもーし、警察ですか。ヘンタイです、へ、ヘンタイが現れましたーー」

背景に「お富さん(春日八郎)」が流れてくる。いきなくろべい〜、みこしのま〜つに、あでなすがたのあらいがみ〜、しんだはずだよ〜、おとみさん〜、と。

舞台ーー暗転
音楽ーーフェードアウト

第3章 スタンダップコメディ 夢で逢えたら

舞台、漆黒の闇の中ーー。声が訊こえてくる。

「うー、くるしいー、うー、くるしいー、ごえ、ぐえ、く、くるしいー」

スポットライト。闇の中にキューピーハニー登場。

キューピーハニー、スタンダップコメディアンのように話しはじめる。

「このあいだね。夢をみたの。それが変な夢なの、とんでもなく変な夢なの。アタシって、もしかしたらヘンタイかしらって思うぐらい変なの」

「でね、詳しくは教えられないけど、というかあまりよく覚えていないの。とにかく、最後はくるしくて、死にそうなぐらいだったの。もうだめーと思ったときに飛び起きたんだけど…」

「そしたらね、なーんとアタシの顔の上に飼い犬のゴンタが乗っかってたの。くるしい訳だわ、それで臭いし、もう少しで窒息するところだったわ」

「それでね。ヘンタイな夢の話だけど、その内容はね、ひ、み、つ、です。なぜならヘンタイだから。それにしても素敵な夢が見たいわー」

背景に「夢で逢えたら(大滝詠一)」が流れてくる。

夢でもし逢えたら、素敵なことね、あなたに逢えるまで眠りたい〜。

あなたはわたしから遠く離れているけど、会いたくなったら瞼をとじるの〜。

「夢で愛する人に逢うなんて、素敵よねー。アタシにもそういう時がやってくるのかしら、くるわよねきっと。いつまでも怪獣ばかり相手にしてらんないわ。でもね、アタシが見る夢には、なんでか肉まんとかおでんとか、食いモンばかりでてくるの、なんでかしらねー、ほんと不思議よねー」

「食いモンの夢が、いつか逢いたい人に変わりますようにって、このあいだ神社でお願いしてきたわ。お賽銭もご縁があるように5円入れたわ」

「という訳で、みなさんサンキューベリマッチでした、グッドナイト。キューピーハニーでした」というと下手へと消えていく。

背景では、「夢で逢えたら」の音量が大きくなり会場を包み込む。

舞台ーー暗転
音楽ーーフェードアウト

終章 ジ・エンド キューピーハニー出撃します

舞台上に色鮮やかなスポットが当てられて、ぐるぐると回っている。

往年のディスコ状態の舞台にキューピーハニーと仲間たちが登場。

2018年のヒット曲「USA」が鳴り響く、踊るキューピーハニーと仲間たち、ダンシング、ダンシング、青春は踊るためにある。そんな雰囲気を思わせるように舞台所狭しと踊りまくるキューピーハニーたち…。

音楽が、フェードアウト。キューピーハニーとその仲間は三角形の形で整列する。直立不動の姿勢で前を見つめると、軍隊式敬礼のポーズをさっと決める。

「日本国国家防衛軍〜首都圏防衛隊〜、『特別攻撃隊怪獣班所属』〜特別攻撃隊員〜キューピーハニー、ただいま参上いたしました」

もう一度、キリッとしたポーズを決める。

「アタシ、もといわたし、キューピーハニーは、国家防衛のため怪獣を倒すことに命をかけて戦う所存であります。ここに改めて、その覚悟を表明いたします。いざゆかん、この世から怪獣を撃退するまで戦います」

「キューピーハニー、出撃します」

背景には、「残酷な天使のテーゼ(エヴァンゲリオン)」が流れてくる。音量がだんだんと大きくなる。会場を包み込む。

舞台上、キューピーハニーと仲間たち、敬礼をしたままである。

照明が徐々に落ちて、スポットがキューティーハニーを浮かび上がらせる。

背景の音楽が大きく鳴り響いて会場を覆い尽くしていく。

舞台ーー突然暗転
音楽ーーしばらく鳴り響いたあと、フェードアウト

幕が下りしてくる、ジ・エンド。

おまけ/作者あとがき

なんだこれは、意味がわからん、どこが面白いねん。そのように思ってもなんら不思議ではありません。意味がわからないのは、実は作者もおなじである。

作者は、なにか意図があってこれを書いた訳ではありません。なんとなく思いついた事柄を、想像力と勢いにまかせて書き上げたものであります。

1998年ごろ、新宿の労音会館だったと思いますが、「サクラ大戦歌謡ショー」という公演を観ました。ゲームソフト「サクラ大戦」をもとに演劇化したものでした。(ゲーム企画者が元演劇の劇作家/演出家だった)

その体験を若干思い出しながら当該戯曲を書いてみました。とくに、キューピーハニーが、直立不動で敬礼するシーンは、いわばパクリです。

どこかに、当該戯曲を舞台化したいという奇特な人はいませんか。もし舞台化に興味のある方がいれば、ご連絡ください。お待ちしております。(作者より)

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