週刊誌の糞ったれ、とアタシは叫んでいた!
当該小説とこの写真はなんの関係もございません!
アイドルも楽じゃない! その1「週刊誌の糞ったれ!」
作:cragycloud
登場人物:アタシ(現役アイドル)
アタシは、いまヌイグルミの毛を毟っている。部屋の中は、毟られた毛で一杯だ。これは、誰が片付けるのだろう。という思いが過ったが、すぐに一心不乱にヌイグルミの毛を毟った。イライラする。あー、なんとも落ち着かないのは何でなの…。
くそー、あいつらのせいだ。いけ好かない週刊誌の野郎め。クソッタレの週刊誌め、腐れちんこの週刊誌野郎!、ぜってーぶっ飛ばす。
アタシは、アイドルだ。それもいま一番注目を集めているアイドル・グループの一員だ。なかでもアタシは、最近売れだした注目株だ。自分で言うのもなんだけど、そういうことだ。そんなアタシの、ほんの出来心でしたことが、週刊誌に暴露されたのだ。
あの野郎、許せん。そうなのだ。元カレに週刊誌にたれ込まれたのだ。なんてことよ。まったく。男の癖に女の腐ったような野郎だ。あー、どうしよー。
「あわわわわわわわわわわーー」と意味も無く叫んでみる。
ヌイグルミを毟るのに飽きたので、何か無いかとあたりを物色した。そして、クローゼットから洋服を出してきた。よし。これを破るぞ。そう思ったが、無意識のうちに高そうな服は自然と避けて安物を選んでいた。
安物のTシャツをびりびりと破くつもりが、思いのほか丈夫で破けない。くそー、ばかにしやがってという思いが募り、ハサミで切れ目を入れて見事に破いてやった。ざまーみろ、という満たされた思いが身を包んだが、それも一瞬であった。
トイレに行きたくなった。あー、トイレ、トイレと云いながらトイレに入り用を足した。そのとき、また怒りと後悔が入り交じったような思いが込み上げてきた。
「ばかやろー、週刊誌の糞ったれー!」とトイレのなかで叫んでいた。
スマホが、チリンコン、チリンコンと鳴っている。メールだ。見てみるとマネージャーからだ。なんと、社長が会いたいそうだ。
やばいぞ、やばいぞという思いが一気に込み上げてきた。あーどーしよー、あわわわわー、なんて言えばいいかしら。考えがまとまらない。自慢じゃないが、頭は良い方じゃない。それでも、なんとか無い知恵を絞り出すしかない。
もう少しでパニックを起こしそうだ。なんか嫌な予感がする。
「く、く、糞ー!」と叫んでいた。
今日は、新しい曲のダンスの振りをスタジオで覚えなくてはならない。いまのところ、来るなとも言ってきていない。明日は、TVの収録がある。とにかく、スタジオには行かなくちゃならない。みんなに合わす顔がない。
どーしよー、どーしよー。これしか思い浮かばない。なんてことよ、だらしないわよ。と自分に活を入れるが、あまり効果はない。出かけるために着替えてみた。しかし、何かしっくりこない。パンツがない。
そうだ、パンツを履いてなかったのだ。部屋にいる時は、いつも裸だから、履くのを忘れていたのだ。
部屋から外に出て、タクシーを捕まえた。行き先を告げて背もたれに体を預けた。さて、どうしようか。と思案を廻らすが、何も浮かばない。
そのとき、ふっと頭をよぎるものがあった。開き直っちゃえば良い。という声が聞こえたような気がした。そうか、そうか、それしかないか。成るようにしかならないのなら、それもありだ。
よし、開き直るぞ!と自分に活を入れた。
スタジオに近づいた。マスコミはいるだろうか。という一抹の不安が過るが、なんとか大丈夫そうだ。いまは、まだマスコミに対応する気力が充分でない。できれば、まだ遭遇したくない思いで一杯だ。
タクシーを降りて、駆け足でスタジオに飛び込んだ。廊下をスタジオに向かって歩いていると、グループのメンバーにすれ違った。口々に大丈夫かと声をかけてくる。それに反応してなんだか得体の知れない気持ちが込み上げてきた。
「うん、大丈夫。迷惑かけてごめんね」と返した。
スタジオの前まで来ると、そこには大勢のグループの仲間がアタシを見つめていた。グループのリーダーが、駆け寄ってきた。
「だ、だいじょーぶかー」と言っていた。
それを聞いたアタシは、何故か涙が溢れてきた。それも尋常じゃない量である。しかも体が震えてきた。なんだ、これは?。アタシは、嗚咽を漏らしながら、泣きじゃくりその場に崩れ落ちていた。こんな、つもりじゃなかったのに…。
そう思いながらも、わんわんと泣きわめく自分を遠くから感じていた。
つづく(ただし、必ずとはいえない)
以下は、当該小説とは、なんら関係のないAKB48の新曲!である。ちなみに、個人的にはじめて買いました。なんてことだ!。
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