70年代、多種多様なロック・ミュージックが現れる
プログレ、ハードロック、パンク、そしてニューウェイブへ
60年代の音楽シーンを牽引したビートルズは、当時の音楽世界に多大な功績を残したが、70年4月にポールが脱退を表明し、惜しまれつつも実質解散した。
かれらは、初期にはR&Bやロックンロールの影響が色濃かったが、中期・後期になると独自のテーマを有したアルバム制作が主体となって、アーティスト性を強めていった。(後期代表作「サージェント・ペパーズ〜」など)
実は、この大衆音楽(ポピュラー・ミュージック)の世界にアーティスト性を持ち込んだのもビートルズが最初だったのではないだろうか。
そして、この音楽世界のアーティスト性という新しいムーブメントは、次代のミュージシャンに受け継がれていく。
芸術家:芸術作品を創作・創造し、表現する人。
アーティスト:一つの表現手法に拘らず、様々な形態で作品を制作している人物について使われる場合が多い。
アーティスト性を端的にいえば、作品を創作・創造し、表現することである。音楽では、作詞、作曲、演奏し、さらにはプロデュースを含む。
多種多様化するロック・ミュージック
70年にビートルズが解散したあと、ロックは益々多様化していく。60年代後半に登場した「アートロック」、その進化系「プログレシッブ・ロック」は、70年代前半には壮大なテーマを掲げて全盛期を迎えた。
同時期には、「ハードロック」も人気を集めた。レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルなどの人気バンドが登場し、一大潮流を築いていく。
また「グラムロック」という、音楽性よりも、非日常的で煌びやかな見た目を重視したジャンルも登場した。(あえて言うと)
一方、「カントリーロック」というアメリカの伝統音楽をベースにしたジャンルも根強い人気を博した。イーグルスという大ヒットメーカーが生まれている。
そして70年代中期には、ロック界に革命が起きる。「パンク」の登場である。パンクは、既成の音楽シーンを完全否定し、簡素なバンド形態、単純なリズムの音楽、そして強いメッセージ性で強烈なインパクトを与えた。
パンク・ムーブメント自体は長続きしなかったが、以後の音楽シーンに多大な影響を与えたのは言うまでもない。
70年代後半には、パンクから派生した「ニューウェイブ」、さらには電子楽器を多用する「テクノ」が登場した。とくにテクノは、次の時代を予感させた。
以上が、70年代に多様化したロックシーンの概要である。しかし、これはほんの一部でしかない。さらに多くの派生音楽があったことをお伝えしておきます。
アートロック、プログレ/卓越した技術と芸術性
60年代後半-70年代前半、芸術的要素のある「アートロック」(ニューロックという呼称もあり)が生まれる。同時期に「プログレ(プログレッシブ・ロック)」というムーブメントが発生し、こちらは70年代前半に全盛期を迎える。
アートロックは、ミュージシャンが卓越した技術を存分に発揮すると同時に、自らの表現性を重視し、芸術と形容できるような音楽性を有していた。
プログレは、アートロックをさらに前衛化させて、統一したテーマでアルバム一枚を制作するという、まるでクラシック音楽のような趣をしていた。
アートロックとプログレは、アルバムを重視し、そこではコンセプトが重要な要素となっていた。以後、この方針は次代のバンドにも引き継がれていく。
アートロック=「クリーム」「ヴァニラ・ファッジ」など
プログレ=「ピンクフロイド」「キング・クリムゾン」など
ハードロック/大音量とシャウト
70年代前半には、もうひとつの流れとして「ハードロック」が人気を集めた。ハードロックの特徴は、ラウド(やかましいほど)な大音量のサウンドと、ボーカルのシャウト(叫び声)が必然となっていた。
ハードロックの音楽形態は、その後ヘビーメタルを派生させて、さらにはグランジなどにもつながっていく。
ハードロック=「レッド・ツェペリン」「デイープ・パープル」など
グラムロック/煌びやかな音楽世界
さらに新しいムーブメントとして「グラムロック」が登場する。グラムロックのミュージシャンたちは、男でも化粧を施し中性的なムードを漂わせていた。
スパンコールなどで飾った煌びやかな衣装を着て、非日常的な世界観をステージで繰り広げた。ただし、音楽的な共通点はあまり見られなかった。
グラムロック=「デビッド・ボウイ」「T・レックス」など
カントリーロック/伝統を受け継ぐロック
アメリカでは、「カントリーロック」が、商業的な大成功を収めた。カントリーロック自体は、60年代後半に誕生している。カントリーミュージックとロック、さらにはポップスを掛け合わせたような音楽である。
カントリーロック=「イーグルス」「ドゥービー・ブラザーズ」など
パンク/既成概念をぶちこわす音楽
70年代中頃、「パンク」というムーブメントが起こる。この動きは、ニューヨークのロックシーンで既存の音楽を否定する、という背景をもって生まれた。
パンクでは、ハードロックやプログレを否定し、それらの音楽をオールドウェイブと呼んだ。音楽的には、簡素なバンド形態および単純なリズムを中心とした60年代のビート・ミュージックをサンプリング(引用抽出)していた。
1976年、英国で「セックス・ピストルズ」がデビューし、一躍人気となる。英国では、その後続々とパンクバンドが生まれて、一大ムーブメントとなる。
パンクはやがて下火となるが、その後の音楽世界に多大な影響を与えた。
パンク=「セックス・ピストルズ」「ラモーンズ」「クラッシュ」など
ニューウェイブ、テクノ/新時代(80年代)への序章
70年代後半になると、「ニューウェイブ」「テクノポップ」という動きが顕著となる。ニューウェイブは、パンクから派生した音楽形態であり、パンクから移行したミュージシャンも多かった。
一方、「テクノポップ」は、シンセサイザーという電子楽器を多用した音楽である。ただし、この呼称は日本特有のものらしい。欧米ではテクノという概念はなく、似たような音楽は「シンセポップ」というらしい。
ニューウェイブ=「ブロンディ」「トーキング・ヘッズ」「B-52’s」など
テクノポップ=「イエローマジックオーケストラ」「P-MODEL」「プラスチックス」など
冒頭動画:デレク&ドミノス「レイラ」1972年
画像引用:ウィキペディア「セックス・ピストルズ」
参考:ウィキペディア、みのミュージック、その他
おまけ/ロック史解説vol.4 みのミュージック
ハードロック、プログレそしてパンクの登場
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