■小説|チンピラの夏(2)半島の南へ

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オレがゆく、今日も夕陽がまぶしいぜ!

チンピラの夏 その2 半島の南へ

作:cragycloud 
登場人物:オレ(テキ屋系組織の一員)

 オレンジ色に染まる夕暮れの空に見とれていると声を掛けられた。

 クレープを買いに客がきたのだ。オレは、スーパーの駐車場の一画でクレープの屋台を出している。しかし、オレはやくざだ。そういう自覚がオレを支えている。

 いまは、しがない屋台でクレープを焼いているが、いつまでもそんなことはない。しかし、将来の当てもない。これが、なんとも苛立つのであった。

 なんとか夏を乗り切っているが、まだ暑くなると気象予報士のねーちゃんが言っていた。なんともいい加減にしてほしいもんだ。それはさておき、8月になってこれからオレの仕事は忙しくなるらしい。

 なんといってもテキ屋は祭りだ。地元でも夏祭りや花火大会やらが行われるので、それにかり出されるのだ。

 しかし、はじめてなので楽しみである。ともかく、若い女性との出会いもあるかもしれないし、なーんて考えると楽しいのだ。オレは、なんといっても若いからな、それは仕方ないだろう。

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 朝、仕事の下準備に事務所に行くと社長に呼び出された。テキ屋系組織は、組長とはいわず社長なんだそうだ。

「お、ごくろーさん、あのな、おめーな。兄弟のやってる海の家行ってくんねーか」
「海の家すか。それはどこすか」

「お、下北組知ってんな。そこがやってる海の家だ」
「あー、そこで何やるんすか」

「それは行ってからよく聞いてくれ、な、頼んだぞ」
「うっす」

 やれやれだ。下北組はうちの社長の兄弟分だ。同じ系列の組織に属している。半島の南の先端にあるところだ。ここからは、車で1時間以上はかかるだろう。しかし、南なのに下北というのはなんだ。北海道かよ、なんて思いながら、オレの上長にあたる兄貴分のところに向かった。

「うっす、あのー海の家行けっていわれたんすが、どういうことですか」
「あー、それな。あそこは夏は稼ぎ時だろう。いろいろやってんだ。そこでだ、まー、一種の抑止力ていうか。こわもてが足りないんだそうだ」

「なんすか、それ」
「ようするにボディガードよ。え、わかるだろう」

「あ、なるほど。そういうことすか」
「バイトはいるけどよ。体張る人間がいねーんだと」

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 なんてこった、なんともめんどーなことが降り掛かってきた。どうやら、海の家では、夜も営業しているらしい。もちろん違法だ。クラブみたいなこともやるらしい。当然そこには、ヤンキーをはじめ悪ガキがくるに違いない。

 オレはそいつらを押さえ込む役割を担わされる、ということらしい。

 なんかやな予感がするぜ、まったく。しかし、オレ以上にめんどーだと思っているのが、兄貴分のマネージャーだ。オレがいないあいだ、兄貴分がスーパーで屋台をやることになったのだ。

 これから行く半島の南のはしっこは、夏の海水浴場として賑わうところだ。波が穏やかで子供にも安心して遊ばせることができる。最近じゃ、洒落た別荘も多くなったと聞いたことがある。

 湘南ほど若くケバいオネーさんはいないが、それでも若い女はいるに違いない。それが、唯一の楽しみだ。

 やな予感が当たらない事を願うしかない。なにしろオレは見た目ほど喧嘩は強くないのだ。暴力は嫌いだ。

 しかし、それでもオレはやくざだ、と自分を鼓舞するかのように思っていた。

つづく!

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