■マーケティング|ジャポニカのうそ? 偽りの共感づくりは是か非か

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偽りの共感づくりは、顧客を騙すことだ

2014年、文具大手のショウワノートが発売する「ジャポニカ学習帳」から、「昆虫の表紙が消えた」として話題になったことがある。まだ、記憶に新しい出来事だが、当時は昆虫の表紙が消えた理由として、一部消費者からの「昆虫が気持ち悪い」というクレームが原因といわれていた。

その後マスメディアの報道をきっかけに、この話題はSNSで拡散していき、その大半はクレームに対する反論で占められていた。それらの意見に後押しを受けて、ジャポニカは昆虫の表紙を復刻して再発売された。そして、瞬く間に完売している。

そこまでなら、単に「よかったね」で終わるが、ところが、この話には続きがあった。昆虫の表紙が消えたのは、実はたんなる商品政策上の問題であり、「昆虫が気持ち悪い」というクレームが、主たる要因ではなかったことが最近になってバレてしまったからだ。

消費者のクレーム、昆虫気持ち悪い、マスメディア報道、SNSでの拡散、異を唱える共感の輪が広がる、という一連の流れが実は仕掛けられたものだった。

この偽りのマーケティングは、ショウワノートではなく外部のPR専門業者が企画し実行したようだが、ショウワノートはジャポニカの昆虫の表紙を復刻して発売しているので、あながち関係ないとも言えないはずである。

ともかく、SNSで共感の輪に繋がった消費者たちは物の見事に騙されたといえる。たとえ顧客を騙しても、結果(収益)が良ければ可とするのかが問われるだろう。なぜならマーケティングとは、長期的視点と顧客志向が要であるからだ。

個人的にいえば、このようなマーケティング手法は認めたくない。たんなる一過性のセールスであり、倫理的にもタチが悪いとしか言いようがないが。

ジャポニカのうそは詐欺と同義か否か

2014年、「ジャポニカ学習帳から虫が消えた」という出来事が話題となり、その理由とされた「教師や保護者からのクレーム」には、SNSを中心に反論の輪が広がっていた。ところが、これが仕掛けられたものだったことが最近判明した。

朝日新聞が運営する「dot.(ドット)」に以下のような記事が掲載された。

「ジャポニカから虫が消えた」騒動は“つくられた”ものだった(dot.ドット)
以下は記事内容の一部を引用したものです。なお当該記事はなぜか削除されていますのでリンクは省略いたします。

・2014年11月、産経新聞が「ジャポニカ学習帳の表紙から虫の写真が消え、花の写真に置き換えられた。原因のひとつに虫が気持ち悪いというクレームがあった」と報じた。

・この報道にSNSでは賛否両論。マスコミの追加情報や有名人のコメントなどもあり、大いに話題になった。

・これを受けて販売元であるショウワノートは、昆虫が表紙のジャポニカ学習帳を復刻。5冊一組3000セットが予約開始から24時間で完売した。

・しかしショウワノートが昆虫の表紙を廃止したのは2012年、産経新聞が報じたのは2014年。2年間の空白には仕掛けがあった。

・仕掛け人はPR会社・フロンティアコンサルティングの代表取締役を務める上岡正明(42)

・上岡氏は2014年末の約半年前、ショウワノートから「ジャポニカ学習帳の発売から45周年を迎えるので、このことをPRしてもらいたい」という依頼をうける。

・「ジャポニカというトップブランドはいかに築き上げられたのか」というストーリーを中心にPRすれば、新聞などに取り上げてもらえる可能性が高いと考えた。

・更に々の『共感』を引き出すストーリーとして「ノートの表紙から昆虫が消えた」という話を加えた。産経新聞の取材目的はブランドヒストリーだったが、その際に昆虫の表紙の話を意図的に伝えた。

・PRを仕掛けて数日、芸人の星田英利氏(元ほっしゃん。)による「昆虫が気持ち悪いってどうなの?」という意味合いのツイートが起爆剤となり、虫の表紙の一件は一大論争に発展。

・最終的に上岡氏の戦略が生み出したPR効果は広告費に換算して3億円前後。PRにかけた予算はほぼゼロだった。

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上記した内容の中にある芸人の星田英利氏(元ほっしゃん。)による「昆虫が気持ち悪いってどうなの?」という意味合いのツイートの後、withnews(ウィズニュース、朝日新聞系列)が、クレーマーを取り上げて後追いしている。

ウィズニュースでは、親や教師をモンスタークレーマーに仕立て上げることで興味・関心を掻き立てる記事となっている。そして、この話題は朝日新聞の紙面にも掲載されている。

ジャポニカ学習帳から昆虫が消えた 教師ら「不快」→苦渋の決断(ウィズニュース)
1970年の発売以来、累計12億冊を販売した「ジャポニカ学習帳」。表紙にカブトムシなどの大きな写真が入っているのが特徴でしたが、2年前から昆虫の写真を使うのをやめていたことが分かりました。きっかけは、教師や親から寄せられた「気持ち悪い」という声だったといいます。

ところが、ショウワノートでは、そんなモンスタークレーマーは記憶にないと答えている。ショウワノートはあくまで、商品政策として顧客のニーズに合わせただけであるようだ。昆虫の表紙が消えたのは、要するに昆虫では売れないと判断しただけ、というのが真実のようだ。

ジャポニカ騒動のきっかけとなった産経新聞の記事、そして後追いした朝日新聞などのマスメディアは、たんにPR会社に利用されただけなのか。

PR会社は、依頼された案件をマスメディアに記事として取り上げてもらうように働きかけることが主な仕事である。それを考えると、産経は利用されたが、朝日と傘下のサイトはペイドパブ(有料の記事出稿)かもしれない。

それらの真実は、どこにあるかは知る由もないが、マスメディアの記事をきっかけにSNSで拡散されたのは事実である。

なにより問題なのが、それらの記事を信じ、SNSを通じて共感の輪を広げてしまった一般消費者の気持ちである。憤りを覚えて共感した話が、なんのことはない偽りのマーケティングに利用されただけであったのは、なんともやるせない。

このようなマーケティング手法が定着すると、一般消費者は企業の活動にすべて懐疑的にならざるを得なくなってくる。すでにそうなっているかもしれないが。

00年代以降、ネット環境の進展に合わせるかのように、詐欺紛いのマーケティングが進化してきている。ステマは言うまでもなく、ジャポニカのように手の込んだ手法もいまでは当たり前のように行われているようだ。

ジャポニカのうその教訓

今回の事案は、歴史のあるジャポニカ、およびショウワノートには痛手にはならないと思われるが、あと一歩間違うと負の連鎖に巻き込まれるところだった、と思われる。そうならなかっただけ運が良かったかもしれない。

とにかく、企業経営者は、マーケティングの手法には十分気を付けたほうがいいだろう。なぜなら、よからぬ疑いを掛けられて顧客を失うことに繋がるからだ。

良いマーケティング、悪いマーケティング、どちらが自社にとっていいかは言うまでもない。それを選ぶのは、概ね経営幹部であるが、くれぐれも安易な道を進まないように切に願います。取りも直さず顧客目線を忘れないように。

参考:「ジャポニカから虫が消えた」騒動はステマだった?朝日は記事削除で逃亡

<ジャポニカ騒動の総括として>

ジャポニカ騒動はクレームを否定的に誘導することで、ネットを中心に話題づくりをしたことが倫理的に問題だったと思われます。

当初から、クレームをポジティブに捉えて、例えば、「花と昆虫」の生命は密接に結びついていることを再提示し、さらには生命の不思議にまで至るようなストーリーと話題作りを考慮すべきだったのではないか。

要するに話題作りを先行するのではなく、あくまでジャポニカのブランド向上を目的に課題に真摯に取り組むということです。マーケティング=長期的視点の顧客創造という概念にも適合するはずです。

そのような取り組みをしていれば、ジャポニカの意義の認知浸透が深まり、さらにイメージ向上にも繋がったのではないか、と思いますがいかに。

あえていうと、マーケティングには2種類ある!
良いマーケティング=顧客志向(顧客のベネフィット優先)、ベネフィット=利益、利便性や満足感
悪いマーケティング=自社志向(自社利益優先)

追記:
最近知ったのだが、レクサスが売れているようだ。日本ではまだドイツ車に及ばないが、海外ではだいぶブランド価値が向上しているとか。レクサスでは、これまでブランド価値を認識してもらうことに地道に活動を続けてきたといわれる。

そのひとつに、見込顧客にレクサスを体験してもらうことを旅行とセットにして行っているそうだ。現地ではレクサスを存分に運転してもらい、その価値の高さを体験してもらうことにあるようだ。

しかし、この試乗体験は有料だそうである。レクサスは富裕層がターゲットだから、有料でもなんの問題はないのかもしれない。

たぶん、トヨタ車の既存客をグレードアップさせる手段ではないかと勘ぐるがいかに。一回の試乗体験では10人〜20人が定員らしいから、けっして効率は良くない。それでも高級車だからこそできるマーケティング手法かもしれない。

価値をより認識したファン客を獲得できれば、口コミでも広がる可能性がある。それを考えれば、高級車のマーケティングとして悪くないといえるに違いない。

地道な市場創造活動こそマーケティングの王道といえるだろう。

なお、個人的にはダースベイダー風のフロントグリルがどーしても好きにはなれないが…。

参考:高級車「レクサス」が売れている理由

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