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■世界|なんとトランプ大統領の現実味が、否も応もなく増してきた

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トランプとクリントンの戦いまであと僅か

四面楚歌のなかで勝ち続けたトランプ、その行く末はいかに

 アメリカの大統領候補として、民主党および共和党の予備選がいよいよ大詰めとなっている。話題の中心人物トランプ氏は、他候補を寄せ付けず共和党の大統領候補になることが確実視されている。

 一方、民主党もクリントン氏がサンダース候補をなんとか振り切りそうだ。しかし、こちらは問題が残されそうな雲行きとなっている。サンダース候補の支持者たちが、本選ではたしてクリントンに投票するか微妙な情勢である。

 もしかしたら、サンダース候補の支持者たちは、クリントン憎しのあまりトランプに投票するかもしれない、といわれている。

 トランプ氏が、ここまで勝つと予想したマスコミはなかったと思われる、なにしろアメリカのマスコミだけでなく、日本のそれも一斉に反トランプの大合唱であったのは記憶に新しい。いまでも、どこかでトランプなんて、とんでもない選択だという論点の記事が書かれているはずだ。

 それはさておき、マスコミの論点は一方通行であり、違った見方もあるに違いないと思われる。そこで、なぜトランプがマスコミ、党の中枢部からも嫌われていながら、ここまで残ったか。その理由はどこにあったかを推測してみたい。

◆アメリカの過去を清算する、それがトランプの役割か

 大統領選挙の行方は、これまでは金融資本と軍産複合体が握っていたといわれる。しかし、トランプはそれらとは対極にあり、対峙していた。

 トランプをなんとか候補者から落とそうとした共和党の中枢は、まさに金融と軍産にどっぷりと浸かっていたといわれる。

 一方、クリントンを支援するのは金融資本筋といわれている。したがって、クリントンに富裕層への課税はできそうもないと思われる。

 クリントンは、これまでの政治勢力と変わることはない。拡大する一方の格差社会のアメリカでは、若い人たちを中心に反発する層が拡大している。

 それによって、サンダース候補の健闘があったのは言うまでもない。それはクリントンでは、また富裕層や金融筋を優遇する政策しかしないのが、透けて見えるからに他ならないだろう。

 5月3日、米国インディアナ州の共和党の予備選挙で、ドナルド・トランプがライバルのクルズらに圧勝した。

 米大統領選挙は、まず2大政党がそれぞれの統一候補を夏の党大会で決めた後、11月の最終投票で2人のどちらかを選出するのが事実上の制度だが、トランプは7月の共和党大会の代議員を決める各州での予備選挙で勝ち続け、5月3日のインディアナ州で全代議員の過半がトランプ支持者で占められる状態にした。

 これで、トランプが共和党の統一候補になることが確定的になった。ライバル候補だったクルズとカシッチが相次いで敗北を認め、立候補を取り下げた。トランプは、すでに1050万人の共和党員に支持されており、最終的に共和党史上最多の支持を集めることが予測されている。

 日本のマスコミはトランプのとんでも発言を取り上げてばかりいるが、その裏にある狙いをあまり説明しようとしていない。

 トランプは、急激に旧政治体制を破壊しようとしている。それはマスコミの常識の外にあり、受け入れることができないのかもしれない。

 党内民主制度で勝った以上、トランプが共和党の統一候補になり、トランプへの不支持を表明する者は離党するのが筋だが、それは簡単に進んでいない。

 共和党の上層部の大半は、これまでトランプを落選させようと動いてきた。911以降、共和党の上層部は軍産複合体系の勢力が席巻し、中東での連続的な戦争やロシア敵視策を進めてきた。

 だが、トランプはこれらの好戦策を採らず、日韓や欧州からの米軍撤退、ロシアとの協調など、むしろ軍産を潰す策を掲げている。

 トランプは、中東やアフガニスタン、それに東アジアに展開する米軍を撤退させようとしている。本当にそれができるかどうかは、大統領になってみないとわからないが、ともかく既存の軍産体制とはまっこう対立するのは違いない。

 事業家らしく、合理的で効率的な戦略を考えているのかもしれない。それは、日本に対してもおなじく、自立を促し戦線の先頭に押し出そうとするかもしれない。

 トランプは、リーマン危機後の米当局による金融延命策に反対で、任期が来たらイエレン連銀議長に辞めてもらうと言ったり、米国債をデフォルトさせるかもしれないと示唆したりしている。彼は、軍産を懐柔するためか軍事費の増加を提唱しているが、その一方で大減税を主張しており、米国を財政破綻に誘導している感じがする。

 トランプが、このままの勢いを維持していくと、クリントンの大統領の目は無くなりそうだ。クリントンには、トランプの勢いを覆す大義名分がない。それどころか、人気もあまりない。

 さらに、国務長官時代の機密漏洩問題がぶり返しそうな雲行きにある。

 オバマ大統領は3月、雑誌アトランティックのインタビューの中で、クリントンの好戦性を何回も批判している。オバマは、サウジやイスラエルの対米依存を批判する一方でロシアを隠然と持ち上げており、事実上の姿勢がトランプと似ている。

 オバマは、アトランティック誌に記事を書かせることで、自分がトランプ支持・反クリントンであることを(わかる人にだけわかるように)示したと思える。

 そのオバマ政権が運営するFBIは最近、クリントンが国務長官時代に私的なサーバーで国家機密を含んだ電子メールのやり取りをしていたことの違法性を捜査している。

 クリントンにとって選挙戦で最も大事な最後の半年間に入った今、オバマがFBIを使ってクリントンの選挙戦を妨害するかのように、メール事件の捜査が本格化している。クリントンがトランプに負ける公算が高まっている。

 いずれにしても、あとわずかでアメリカの新大統領は決まる。

参考:田中宇の国際ニュース解説

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