いったい全体、おもてなしをどう表現したかったのか?
■このデザイナーは、コンセプトの意味を理解したのか
2020年東京オリンピックに向けて、外国人観光客に東京の魅力をアピールするためのボランティアチーム「おもてなし東京」が設立された。なんでも舛添都知事の肝いりであるといわれている。その「おもてなし東京」のユニフォームが発表されたが、そのデザインがあまりにもダサいとネットで話題になっている。
冒頭の写真をご覧になって頂きたい。これが似合う日本人がいるかどうか、かなり疑問であるがいかに。今風なポップな東京を表現してみました、とかデザイナーは言うのだろうか。これがクールジャパンとか言われても、絶対に拒否したいと思うのは当方だけではないはずだ。違うか。
「おもてなし東京」の目的は、外国人観光客に東京の魅力をより極め、堪能してもらうためにご案内をしていくことにあるのではないか。そのようなことを「おもてなし」という、控えめながらも、心のこもった気配りと歓待をもってサービスすることにある。
ここで重要なポイントは、「おもてなし」の考え方にある。一般に海外では、客をもてなすときには盛大にこれでもかと言わんばかりにアピールするが、ところが、日本ではそうではない。どちらかといえば、もてなすということを前面には出さずに、実はもてなすのが日本流ではないかと思われる。
したがって、日本のおもてなしの極意を端的にいえば、「控えめと心のこもった気配り」にあるといえるだろう。なお、あくまで伝統に則ればということである。しかし、日本がオリンピック招致でアピールした「おもてなし」の意味は、日本の伝統文化に根ざしたものだったはずである。
何故ならば、独自のもてなし文化でなければアピールする意味がないからだ。時代は変われども、失われていない独自の文化だからこそアピールできたはずだ。
ダサすぎ? 東京五輪「おもてなし制服」、ネットで酷評(朝日新聞)
■珍妙なチンドン屋スタイル、東京はこんな安っぽいイメージでいいのか
ところがどっこい、そんなコンセプトはおかまいなしなのが、冒頭のユニフォームのデザインである。せっかく海外にアピールするいいポイントがあるのに、それをわざわざ外してしまうとは…。デザイナーはなーんも考えてないに違いない。
とにかく、ただ単に目立てばいいだろうとしか思えないデザインである。これが有名デザイナーの元で修行したデザインとは、修行先の師匠もさぞがっかりしているに違いない。とにかくコンセプトの意味を読み解く能力に欠けているとしか思えない。それとも東京を単なる商店街とでも考えたか、地方の商店街ならありそうなデザインではある。
このデザイナーさんは、本当に有名デザイナーの元で修行したのだろうか。何故かといえば、コンセプトをデザインに落とし込むのが下手であり、素人臭いデザインとしか思えないからである。
例えば、帽子のリボンの赤い丸は、日の丸をあしらってみたそうである。これはデザイナーとして、まるで能無しであることを晒しているだけである。一体全体この帽子は誰が似合うんだろうか。自分で被って鏡で見てみたのか、と言ってやりたいぐらいだ。
派手なネクタイをあしらったトップスは、実はプリントであるらしい。まるでパチンコ屋のイベントでもするかのような趣ではないか。違うか。これを着こなせる一般人は、はたしているか?。それよりも何故ネクタイなのか、意味が分からない。もし、それがおもてなしの表現とすれば、プリントでは失礼というもんだ。
デザイナーは、たぶんモデルかなんかに、これを試着させて「けっこういいじゃん」と身内で盛り上がったに違いない。なお、あくまで想像であるが、当たらずとも遠からずではないか。
容姿端麗のモデルなら大抵の服は似合うはずだが、今回のユニフォームは、ボランティアという不特定多数の人達が着るものである。そこでは、どんな年齢、容姿であれ、ある程度の品性や清潔性が感じられる様にすべきだろう。
今回のテーマとコンセプトを考えれば、特に品性は大事な要素ではないかと思われる。テーマは、「外国人観光客に東京の魅力を伝える」であり、コンセプトは、「おもてなしの心(控えめと気配り)でサービスしていく」と仮定した場合、ユニフォーム全体が派手になるとは想像しにくい。
ちなみに、この制服を見たデザイナーのドン小西さんは「日本を象徴する“カワイイ”を採り入れ、未来を感じさせる」と好意的だそうである。カワイイは関係あるか?と思わざるを得ないが、ドン小西さんも褒める箇所が思い浮かばなかったのだろう。しかたなく、きゃりーぱみゅぱみゅでも想像したのではないか。
とにかく、新国立競技場、そしてこの制服のデザインといい、オリンピック関連はいい加減なデザインばかりではないか。日本には優秀なデザイナーが多くいるはずなのに、この体たらくはなんということだ、と思うばかりである。
デザインしたのは10人が参加したコンペを勝ち抜いた藤江珠希さん。英国のブランド、アレキサンダー・マックイーンで修業し、現在は自分の名を冠したブランドを手がけている。「人混みでもパッと目に付くことが大事。五輪のイメージに合う白、赤、青を基調に、ネクタイとベストはおもてなしと礼儀正しさを出したかった」と言う。
「人混みでもパッと目に付くことが大事」、んーと何か違うと思います。都市景観との融和を考えましたか、と言いたい。魅力を伝えていくはずが、これでは逆効果になりはしないか。
しかし、デザイナーを責めるのは酷かもしれない。なにより責任はこれをコンペで選んだ審査員たちにあるのは間違いないだろう。
とにかく、このユニフォーム姿でボランティアが東京の街に繰り出したら、デザイナーが意図したように目立ち過ぎて景観を悪化させる要因となるのではないか。これで東京の魅力を伝えていくのは、何だか本末転倒のように思われます。
■テーマとコンセプト(仮)からデザインを考える!
ここから先は、当方の個人的な提案である、ご了承ください。上記したように、ボランティアのユニフォームがあまりにダサ過ぎる。そこで、当方がデザインのコンセプトを考えてみた次第である。オリンピックにはまだ間があるし、ぜひ再考して頂きたい。そうでないとボランティアの士気に関わると思われるからだ。
テーマは、「外国人観光客に東京の魅力を伝える」であり、コンセプトは、「おもてなしの心(控えめと気配り)でサービスしていく」と仮定した。
上記した「おもてなし東京」のテーマとコンセプト(仮)を踏まえて、デザインのコンセプトは「ネオ・トラディショナル」(伝統を踏まえた、次代の日本らしさ)としたい。
具体的には、
・デザインのコンセプト/「ネオ・トラディショナル(伝統を踏まえた、次代の日本らしさ)
・カラー/和色という日本の伝統色から選ぶ
・スタイル/シンプルシック、簡素だが品性が感じられる趣とする
・デザイン/ボランティアチームを示す、特徴あるワンポイント・デザイン
・その他のキーワード/侘びシック、または寂びシック
意味性:日本の美意識の1つ。一般的に、質素で静かなものを指す。本来侘(わび)と寂(さび)は別の概念であるが、現代ではひとまとめにされて語られることが多い。(シック=落ち着いたの意)
・全体的な印象として、派手になり過ぎず、また地味でもない。あくまで日本のトラディショナル(伝統)を踏まえつつ、いまという時代性の息吹が感じられるスタイルのデザインとする。
・また、年齢を問わず、一定の品性が保たれるスタイルが望まれる。若者は、格好よく、中高年は、頼もしく見えるようであれば、なおいいだろう。
・街中で目立ち過ぎないこと、都市景観に優しいことも大事と考える。
・いわずもがな、ドンキホーテやコンビニ店員との差異化を図ること。(冒頭写真を見たときドンキの新しい制服かと思いました)
以上が、当方が考えたデザイン・コンセプト素案です。
若干具体性に欠けていますが、当方ならば、このような考えを基にデザインをしていきたいと思います。あまり深く考えてはいないので、説明が不足している点がありますが、ひとつのアイデアと捉えて頂ければ幸いです。
なお、この案に自信がある訳ではありません。デザイナーのデザインを貶した手前、対案を出したに過ぎません。これがベストだとは思っておりません、考えればもっと他にもあるはずです。
とにかく、冒頭写真を見てあまりに酷かったで、つい勢いでここまで書いてきました。あとで読み返すと言い過ぎた箇所があるかもしれません。あしからず。
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