■映画|SR サイタマノラッパー 日本のヒップホップの状況をあからさまに描く

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ダサイを通り越して、ラッパーの情熱は何処までも続く…

サイタマとヒップホップの絶妙な関係式

 映画「SRサイタマノラッパー」シリーズ(2012年までに3作品)は、音楽を題材とした映画の傑作として高く評価されている。その評価がどこにあるかといえば、音楽を格好よく描いたものではなく、一般常識とは隔絶した情熱の熱さ故に付きまとう、格好悪さや痛さを余す事無く描いていたからに他ならない。

 それは、けっして成功の物語でもなく、ハッピーエンドでもない。さらには、どこに答えがあるのかも不明確である。だからこそ、青春を賭ける価値があるということもできる。答えがあらかじめ判っていれば、誰も夢など追いかけるはずはないからだ。一方、誰でも努力すれば夢が叶う訳でもない。

 それでもなお、夢が叶うのは、例え”堕ちた天使”になる覚悟をも厭わず、それを追いかけた人のみにあるのは言うまでもない。

「SRサイタマノラッパー」は、田畑の風景が広がる埼玉のど田舎に住むヒップホップ大好きな主人公と、その仲間たちを中心とした物語である。かれらはいずれも一般常識では駄目人間であり、しかも自己主張が強い。アマチュアではあるが、口を開けば無謀にも夢は世界に通じるラッパーになることだ。

 ニューヨーク生まれのヒップホップと、ダサイタマといわれる埼玉との融合具合が、なんともいえない日本的な様相を呈している。どんなに格好いいことを言おうとも、一歩外に出ればそこは埼玉であり、日本で一番ダサイ(失礼ながら)といわれる地域である。けっして、そこはニューヨークではない。

 いけてるヒップホップも、埼玉ではなんとも微妙だ。黒人でもないし、いくら格好を真似ても背景や概念が違い過ぎる。しかも、日本語によるラップは、なんとも間の抜けた感じがするのは否めない。それでも、サイタマノラッパーは自分の主張をリズムに乗せて発することに生き甲斐を見いだしている。

 そこにしか、自分のアイデンティティ(存在価値)がないかのように。かれらは、自分を格好悪いとも、痛いとも思ってはいない。しかし、その情熱は一般常識とはすれ違ったまま、けっして通じ合う事は無いだろう。

 それでもなお、サイタマノラッパー(日本人ラッパーと同義)は、自らの存在価値を賭けてオリジナリティーを追い求めていく。そのピュアな姿勢には、夢を追いかけている途上にある人であれば、きっと涙が溢れんばかりになること間違いなしである。

 誤解を承知でいえば、映画「SRサイタマノラッパー」は、日本と日本人の生き様に関して、比喩的(類似または関係する他の物事を借りて)に表現したものといえるかもしれない。なお、あくまで個人的な見解である。

 ついでにいえば、戦後の日本は常にアメリカをキャッチアップして現在に至っている。これはいまさら言うまでもないことである。違うか。

SR サイタマノラッパー・シリーズ(概要)

「SR サイタマノラッパー」2009年

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 若手の気鋭監督として注目される”入江悠”監督の長編第2作である。公開時には、各方面から絶大な支持を受けて、異例のロングラン上映となった。国内外の多くの映画祭でも好評を博し、また受賞もしている。

 主人公のMC IKKU(駒木根隆介)と“SHO-GUNG”のメンバーは俳優でありラッパーではないが、そのリアルな演技振りが注目された。また、音楽の出来具合も半端無く決まっている。(冒頭動画参照)自主制作でありながら作品の完成度は高く、まさにミラクルムービーと言っても過言ではない。

<あらすじ>
 埼玉県の田舎町を舞台に、ラッパーを目指す冴えない若者たちの奮闘を描いた青春映画。レコード屋もライブハウスもない田舎町で結成されたヒップホップグループ“SHO-GUNG”の仲間たち。彼らは地元の先輩たちの協力を得て初ライブを実現させようとするが、東京でAV女優として活躍していた同級生・千夏が戻ってきたことから、グループ内ですれ違いが生じるようになり……。

<キャスト>
MC IKKU:駒木根隆介
小暮千夏:みひろ
MC TOM:水澤紳吾
李:杉山彦々
MC MIGHTY:奥野瑛太、ほか

「SR サイタマノラッパー2/女子ラッパー☆傷だらけのライム」2010年

<あらすじ>
 ラッパーを目指す田舎の若者の奮闘を描いた青春映画「サイタマノラッパー」の続編。本作では群馬の山奥を舞台に、女子ラッパーたちの苦悩と成長を描く。高校時代はラップグループを作るほどヒップホップ音楽に夢中だったアユムも、卒業後は群馬の実家で家業を手伝いながら、退屈な毎日を過ごしていた。そんなある日、アユムはかつてのラッパー仲間ミッツらと再会し、一夜限りのライブを実現させようとする。しかし、仕事や結婚などの現実的な問題が、彼女たちをどんどん追い詰めていく。

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<キャスト>
山田真歩
安藤サクラ
桜井ふみ
増田久美子
加藤真弓

「SR サイタマノラッパー3/ロードサイドの逃亡者」2012年

「SRサイタマノラッパー(2009)」から、約2年を経たMC MIGHTY(奥野瑛太)を焦点に、夢に破れたラッパー、いまだ夢を追いかける“SHO-GUNG”のメンバー。それぞれの想いとすれ違いをヒップホップ音楽と共に描いていく。

 前作以上にリアルな日本人ラッパーの様相が描かれている。俳優陣のラップの上達具合が半端無く、リアルな現場(ライブ)の状況を創り上げている。

<あらすじ>
 仲間と別れ東京に出たマイティは、「極悪鳥」というヒップホップグループに入れてもらおうと努めるが、苦渋を味わった挙句に怒りを爆発させてメンバーの1人に大怪我を負わせてしまう。栃木へ逃亡したマイティは、盗難車の転売など違法行為で商売するグループの一員として働き始め、そのグループが開いた詐欺まがいの音楽イベントでかつての仲間のイックとトムと再会するが……。

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<キャスト>
“SHO-GUNG”ヒップホップ・グループ
MC MIGHTY:奥野瑛太
MC IKKU:駒木根隆介
MC TOM:水澤紳吾

監督/脚本/編集:入江悠(3作品おなじく)

「SR サイタマノラッパー」シリーズは、自主制作映画であり費用は入江監督が負担している。(1作目は100%、2作目は映画祭で得た支援金が入っている、3作目は不明)これらの作品の評価は高く人気もあるのに、なぜか製作者(入江監督)には経済的な還元が無いようです。この辺りの事情について以下のラジオ番組で詳しく語っています。

入江監督「自主制作映画」を語る(宇多丸のウィークエンド・シャッフル)

あらすじの引用、映画.comより

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SR サイタマノラッパー(原作本)

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