■映画|恋する惑星 香港的ポップな恋愛映画


ミッドナイトエクスプレスで出会ったフェイと警官663

恋するパスワードは、一万年愛す!

香港を舞台に繰り広げるポップな恋愛ストーリー

その時、彼との距離は0.1ミリ。57時間後、彼は彼女に恋をした。
その時、ふたりの距離は0.1ミリ。6時間後、彼女は彼に恋をした。

映画「恋する惑星」は、女と男の限りある煌めきの瞬間を鮮やかに切り取った、スタイリッシュ且つポップな青春恋愛ムービーである。西洋と東洋が混然一体とし、独特の雰囲気を漂わす香港を舞台に、それは繰り広げられる。

本作は、日本でウォン・カーウァイ監督の名を一躍有名にした作品である。

香港の九龍、尖沙咀にある雑居ビル「重慶大厦」(ちょんきんたいはー、チョンキンマンション)と小食店「ミッドナイト・エクスプレス」を舞台に、すれ違う恋愛模様をスタイリッシュに描いている。

特に、その映像表現は当時評判となった。色使い、アングル、撮り方が斬新であり、それは既成概念を軽やかに超えていた。

95年公開時のキャッチフレーズは、「ミラクル・ポップチューン・ムービー」となっていた。それは、けっして大袈裟ではなく実に的確な表現であった。

恋するポスター
恋する惑星 日本公開時のポスター

重慶大厦(チョンキンマンション)
香港の九龍・尖沙咀地区のネイザンロード(弥敦道)に1960年代に開発されたビルの総称である。現在、繁華街の一等地にありながら、数多くの安宿が密集しているビルとして有名だ。また、中東やアジアなど多国籍な文化を漂わす店舗が数多くある。

恋する惑星|原題:重慶森林 1994年(香港)


恋する惑星/日本版予告編

限りある一瞬の煌めきを映像のなかに…

本作は、よくある恋愛映画とはだいぶ異なっている。恋愛映画を敬遠する人も認識を新たにする、とてもポップ・チューンな映画である。

魅惑的な音楽、クールなモノローグ、そして映画全体には独特の雰囲気が漂っている。そして洗練された映像の中に主人公達の情熱的な心理描写を巧みに織り交ぜ、これまでにない美的感性が作品いっぱいに広がっている。

また、出演している主人公達がどの人物もとても魅力的です。

当方は、特にトニー・レオンの警官役がとても印象的でした。男特有の鈍感さ、良く言えばおおらかさをとても魅力的に演じています。

また、店員役のフェイ・ウォンがとってもキュートで素晴らしい。恋するフェイの淡い想いが、切なく伝わってくる。若い女性ならではの恋による輝きを見るようです。

音楽もとても印象的な使われ方をしている。

前半の部分では、レゲエ歌手/デニス・ブラウンの「シングス・イン・ライフ」が、ジューク・ボックスから人々を幻惑するかのように鳴り響いている。ジューク・ボックスの中でキラキラと妖しく輝くレコード盤が印象的である。

後半部分では、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」が印象的に使われており、特に、トニー・レオンの警官が登場するシーンでは、その鮮やかさが際立っている。

映像は、本作の最大の魅力である。色使い、アングル、撮り方が斬新である。

それは既成概念を軽やかに超えている。色使いは、ゼラチンとか寒天などに色を溶け込ました様な独特の甘く、且つ鮮烈な印象を与える。アングルのこだわりも半端なく、また撮り方はゲリラ的である。

実際、撮影許可なく撮っており、少し撮っては逃げて、また撮るのを繰り返した様である。カメラは激しく揺れながらも、その残像を記憶に留めるかのようである。

ブリジット・リンの麻薬ディーラーが重慶マンションのなかで追いかけられて、地下鉄で逃げ出すシーンの映像は印象的であり、一見に値する。

どのシーンも印象深いのですが、当方が特に好きなのは、警官663役のトニーがコンビニでフェイからの手紙を読むシーンです。

フェイからの手紙を一端はコンビニのゴミ箱に捨てるが、再び取りにもどり雨に濡れて読めなくなった手紙(手書きの搭乗券)をコンビニのチキン?温風機のなかで乾かします。

そのときのトニーの途方にくれた様子や温風機?のなかで回る手紙を見詰める姿が何ともいえない、男の可愛らしさを感じさせます。また、コンビニのガラス窓を流れる大量の雨のしずくが効果的に場面を盛り上げています。

本作をまだ観ていない人は、ぜひご覧になってください。きっとあなたも、こんな恋をしたくなるに違いない!と思います。


バーカリフォルニアでフェイを待つ警官663

恋する惑星/ストーリー

本作は、時間軸の違う二つの恋愛模様から構成されている。

重慶マンション

男は、失恋した警官223号(金城武)。捜査中に麻薬ディーラーの金髪の女(ブリジット・リン)とすれ違う。女は、重慶マンションの一室で麻薬の密輸の準備をしている。

男は、別れた恋人メイが好きだったパイナップルの缶詰(5月1日期限切れの)を毎日買っている。麻薬の密輸仲間に裏切られた金髪の女は、復讐の行動にでる。

男は、バーで金髪の女と出会う。別れた恋人を忘れたい男は、この女と恋をすることに決める。酔いつぶれた二人はホテルに入るが、女は疲れ果てており、すぐに寝てしまう。

朝方、男は女の汚れた靴を綺麗に磨き、そっと置いて部屋を出る。雨のグラウンドを失踪する男は、25歳の誕生日を迎えた。朝もやの中ポケベルが鳴る。ポケベルのパスワードは「一万年愛す」、それは金髪の女からのバースデー・コールだったーー。

ミッドナイト・エクスプレス

男は、警官663号(トニー・レオン)。なじみの飲食店「ミッドナイト・エクスプレス」で、店主のいとこの女性店員フェイ(フェイ・ウォン)と出会う。男は、CA(キャビン・アテンダント)の彼女に振られたばかりだった。

ある日、警官663の元彼女がCAの制服のままで店にやってきた。彼に渡してくれと、手紙と部屋の合鍵を置いていった。フェイは預かった手紙をこっそり読み、そして鍵を手にして何事かを考え込んでいた。

その後、警官663の住所を知ったフェイは、預かった合鍵を使ってこっそりと彼の部屋を訪ねては、部屋の掃除や模様替えを行うようになっていた。

一方、警官663は、失恋の痛みから様変わりした部屋の変化に気づかない。ようやくフェイの想いに気づいた彼は、フェイをデートに誘うが、待ち合わせした「バー・カリフォルニア」にフェイはついに現れなかった。

彼女は、一通の手紙を残してカリフォルニアに旅立ってしまった。

それから時は経ち、「ミッドナイト・エクスプレス」にCA姿のフェイが立ち寄ると、店内では元警官663が店を改装していた。久しぶりにフェイに会った彼は、雨に濡れて判読出来なくなった手紙(手書きの搭乗券)をフェイに見せる。

彼は、なんて書いてあるのか尋ねるのだった。しかしフェイはそれに答えない。フェイは、カウンターにあったナプキンを手にすると新しい搭乗券を書き始めた。

そして、「どこに行きたい?」と彼に尋ねた。それに元警官663は、君と一緒ならどこへでもとばかりに、「君の行きたいところ」と返事をしたーー。


ラストシーン CA姿のフェイと元警官663

■恋する惑星 1994年

<スタッフ>
監督/脚本:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
美術・編集:ウィリアム・チャン、カイ・キットウァイ、クォン・チリョン
撮影:クリストファー・ドイル、アンドリュー・ラウ
公開:日本/1995年7月15日 :香港/1994年7月14日
上映時間:100分

<キャスト>
トニー・レオン(警官663)
フェイ・ウォン(フェイ)
ブリジット・リン(謎の金髪女)
金城武(警官223)
チャウ・カーリン(スチュワーデス)
<挿入曲>
デニス・ブラウン『Things in Life』
ママス&パパス『夢のカリフォルニア』
ダイナ・ワシントン『縁は異なもの』
フェイ・ウォン『夢中人』(クランベリーズ『ドリームス』のカバー曲)
参考文献、「恋する惑星」映画パンフレット、ウィキペディアより

<追記>
2014年に再販されたDVDの特典映像に、未公開映像が含まれていました。それを観ると、当初のストーリーでは金髪の麻薬ディーラー(ブリジット・リン)は、元女優という設定になっていた。そして、その女優を探し出すことになるのが、警官223(金城武)であった。

公開された作品では、深夜のバーで出会ったようになっている。当初のストーリーを捨てたのか、編集された本編を観る限り当初のストーリーの面影はない。しかし、それで良かったのではないか。なにしろ、結果が良かったのだから…。

もうひとつ、警官633(トニー・レオン)が住んでいたアパートは、撮影監督のクリストファー・ドイルが当時実際に住んでいた部屋だったとか。水浸しになっていたが大丈夫だったんだろうか。ちなみに、現在はそこには住んでいないそうである。

カーワァイ監督の出世作「欲望の翼」については、以下をご覧ください。
当サイト関連記事:■映画|欲望の翼 時は過ぎても記憶は残る

<恋する惑星/ミラクル・ポップチューン・ムービー>
二組のカップルの恋愛模様を独特な視点と表現方法で綴る。ウォン・カーウァイ監督の名を世界に知らしめた傑作ラブストーリー。

恋する惑星 Blu-ray

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