いま北欧がきてるか?そんな気がする傑作である!
北欧版ハードボイルドには女性が良く似合う
スウェーデンとデンマークの合作によるミステリードラマ「ブリッジ」は、その出来具合の良さからアメリカでもリメイクが製作されている。なにしろ、「ミレニアム」のスウェーデンと「キリング」のデンマークの合作である。此れが期待できない訳がない。そして、その通り見事な映像作品となっている。
北欧ミステリーの魅力はなんといっても、その闇の深さが幾十にも重なり合って底知れないところにある。それはどんよりとした鉛色の空と関係があるか。とはいってもそれは映像のなかでの事である、実際はそんな寒々とした空ばかりではないと思うが、如何に。
とにかく最近とても魅力的な北欧ドラマであるが、それはアメリカのドラマに見飽きたためにそう思うのかもしれない。幾十にも絡み合いながら二転三転し、先が見通せないのが北欧ミステリーの特徴であるが、しかし、そのようなドラマはアメリカにもあったはずである。それでも、何故か新鮮に感じるのはどういう訳か?。
アメリカのドラマも素晴らしいが、如何せん見慣れたせいか?先行きがなんとなく想像できるようになってきた。違うか。見慣れたのはドラマの設定や内容だけでなく、風景も建物も人物像もなんとなく、以前に何かのドラマで見たあれに似ている気がする。そんな思いに駆られる始末である。
そこで北欧である。なんせ北欧はアメリカと比べると情報量も少なくあまり知られていない。なお、これには個人差もあると思うが、当方はそうである。そういう訳でドラマに出てくる風景や建物はもちろん、登場人物の性格や人間関係などがアメリカとは多少異なっていて、そこが大変新鮮に感じるという具合である。
この辺りの事情(海外ドラマといえばアメリカが定番)が、いま北欧ドラマが魅力的となっている要因として大きいのではないか。
「ミレニアム」(スウェーデン)、「キリング」(デンマーク)も何故か主人公は女性であった。そして、両国合作の「ブリッジ」もまた同じく主人公は女性である。そんな主人公達に共通しているのは、強烈なキャラクター設定である。
いずれの女性像もこれでもかと言わんばかりのキャラクターの持ち主となっている。
強烈なキャラクター設定とは、これまでカテゴライズされなかった女性像ということと同義語である。つまり、中途半端はない。どっちつかずの曖昧さは無いということである。たぶん。
どういうキャラかといえば、共通しているのは何事にも一途(頑な)な姿勢にある。これは、言葉を変えると何事も長い物には巻かれないということである。それが生きる意味となっているかのようにである。それは正義ともいえるが、とにかく曖昧さを許さないことから問題もまた多くなる。
とにかく北欧ミステリーの女主人公達は、いずれも思い込んだら一直線といった一途さと剛直さが信条ともいっていいかもしれない。したがって、周囲とのあつれきを生むのはこれまた必然である。
そして彼女達は、何故か笑わない。たぶん、それを必要としていないか、拒否しているかである。
そんな彼女達は、精神的にも肉体的にも、自らのタフさを糧になにごとも乗り切るしかない。そんなことを考慮すると、どうやら北欧のハードボイルドは女性に託されたようである。そんな風に思うが、如何に。
ブリッジ 予告編
特異な主人公、女刑事の変人ぶりが半端ない
当該ドラマ「ブリッジ」は、スウェーデンとデンマークを結ぶ「オーレスン橋」の上で発見された女性の死体から物語は始まる。その死体は、橋の上の国境をまたぐ様に置かれていた。なんとも不可思議としか言いようがない事件である。
ちなみに「オーレスン橋」は、国境の橋とも言われるそうである。
発見された死体は、上半身と下半身で二分割されていた。さらに後に、この死体は二人の体を組み合わせたものと判明する。ミステリアスな様相が漂い始める。
死体が国境をまたぐように置かれたことから、捜査はスウェーデンとデンマーク双方の警察が協力して行うことになった。
スウェーデン・マルメ県警の担当が、主人公であるサーガという女刑事である。一方、デンマーク・コペンハーゲン警察は、ベテランのマーティンである。この二人がコンビを組んで捜査に当たって行く。
女刑事サーガは、捜査の指揮を執る優秀な刑事であるが変わった性格の持ち主であった。それは、他人を気遣うという一般人が普通に持ち合わせるであろう気持ちを欠いていた。なによりも優先されるのは、正確さであった。つまり曖昧なことはできない性格であった。実直ともいえるが、それともどこか違っていた。
その性格の一端が見えるのが、死体が発見された事件の現場での出来事である。橋の上であることから現場は、通行止めとなった。そこに救急車両が通してほしいと頼んできた。しかし、サーガは現場保存を優先して通行を頑として認めなかった。
それを目撃したコペンハーゲン警察のマーティンは、サーガに内緒で救急車両を通してしまう。マーティンは、サーガと違って曖昧さを許す度量と経験を有していた。一方、サーガは優秀だが、どこか人間性の欠如した部分があった。それが何に起因しているのかは分からない。
彼女はけっして悪意があってそうしているのではない。何かが決定的に欠けたまま人格が形成されてしまったようだ。したがって、周囲からは変人扱いされているが、彼女はそれを気にしない。それも、また彼女ならではの特有の個性となって周囲の思惑等関係なく我が道をゆくのみである。
彼女のプライベートがまた特異なものである。セックスを特別な物と考えていないようだ。性的欲求を感じたら、一夜限りの男と寝るのも厭わない。また、同僚から昨日の夜は何をしたかと問われて、平然とセックスをしたと答えてしまう。そんなサーガに同僚達は苦笑するしかない。
スウェーデンといえば、日本では性におおらかな国として知られている。違ったか。それが正しい認識なのかは知る由もないが、しかし当該ドラマでは浮気した夫を妻は許さずに家から追い出してしまう。これなどを観ると意外と性におおらかというのは違うのではないか、と感じた次第である。
それはさておき、サーガのような女刑事は、アメリカのドラマにもいなかったような気がする。日本では当然、言うまでもないか。ちなみに、この女刑事サーガは古い型のポルシェに乗っている。たしか、親族から譲り受けたものだったと思うが、それは確かではない。(忘れた)
あまりにも個性的な女刑事とコンビを組むマーティンは、相棒とバランスを取る様に俗物な人物設定となっている。離婚経験があり、さらに浮気をして妻に家から追い出されてしまう。プライベートで悩む事の無い女刑事と、迷い悩む中年男刑事のコンビ芸?がこれまた面白い。
ドラマも面白いが、景色や建物の雰囲気も新鮮である
ドラマの内容は是非観て頂くとして、個人的に気になったのが建築やインテリアのデザインである。これもアメリカのものは見飽きているせいもあり、どこか微妙に異なるデザイン性が魅力的である。
主人公の相棒となるコペンハーゲン警察のマーティンが住む住宅は、たぶんログハウスの範疇にある家と思われる。ただし、ログハウスといえば丸太を思い浮かべるが、そうではなく角ログと呼ばれる平たい四角形に切り取られた木材を使用したものである。
この住宅の雰囲気がとてもいい。豪華ではないが、とても洒落た作りである。家の中に入ると、これまた木の質感がいい感じで表れている。日本の家のように壁紙を貼ったりして誤摩化していない。木の質感を際立たせることが住宅のポイントになっている。
ログハウスとはそういうものだが、とにかくそれが新鮮に映る。個人差があるので、だれでもそう感じるとは思わないが、少なくとも個人的にはそう感じた。
またインテリアもこれまたナイスである。北欧デザインの豊かさは有名であるが、日本に紹介されているのは、その一面でしかないようである。日本で知られている北欧デザインの家具やインテリアとはどこか違って見える。どうやらIKEAの家具は、簡略化(分かりやすい)した北欧デザインなのかもしれない。
北欧デザイン=シンプルかつ清潔なモダンデザインというのは、あくまで特徴の一部でしかないようだ。たぶん。
■ブリッジ/THE BRIDGE 概要
<あらすじ>
スウェーデンとデンマークの間にあるエーレスンド海峡を横断する国境の橋、オーレスン橋で女性の遺体が発見された。遺体は体の中央で正確に国境ラインを跨ぐように置かれていた。
スウェーデン・マルメ県警とデンマーク・コペンハーゲン警察は合同捜査を開始する事となり、コペンハーゲン警察のベテラン刑事マーティンは、マルメ県警の女刑事サーガ・ノレーンとコンビを組む事となった。しかし、この女刑事サーガは一風変わった性格の持ち主だった…。
やがて「真実のテロリスト」と名乗る人物が、犯行声明を発表。社会が抱える5つの問題点を提起するためにと、次々と新たな犯行を実行し始める。(参考:ウィキペデイアより)
<作品情報>
2011年、シーズン1がスウェーデンとデンマークで放送された。現在、日本ではスーパー!ドラマTVでシーズン2が放映されている。
<受賞歴>
2014年/デンマーク・アカデミー賞 Robert Awards TVシリーズ主要3部門受賞 (主演女優:ソフィア・ヘリーン、主演男優:キム・ボツニア、 助演女優:カミラ・ベンディクス)
2014年/モンテカルロ・テレビ祭 欧州ドラマシリーズ作品賞、最優秀男優賞受賞:キム・ボツニア
2013年/BAFTA 英国アカデミー賞 最優秀国際シリーズ賞ノミネート
<アメリカ版リメイク>
2013年7月より米FX局にて放送開始。日本では『ブリッジ〜国境に潜む闇』としてFOXチャンネルで放送。ちなみに、設定はアメリカとメキシコの国境が舞台となっている。
<北欧風ペンダントライト>
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