50年代のアメリカを背景に描く秀逸のコメディドラマ
このドラマは、何一つ不自由のない裕福なユダヤ人の若い主婦(ふたりの子持ち)が、ある日スタンダップコメディに目覚めたことから人生が一転してゆく様子を面白可笑しく、ときにペーソスを交えて描いていく。
ミリアム・”ミッジ”・メイゼル(レイチェル・ブロズナハン)は、大学を卒業してすぐに結婚して、二人の子供を産み育てている専業主婦だった。裕福な家庭に生まれて、特別な悩みも抱くことなく、明るく、聡明で、かつ天真爛漫である。
人生は順風満帆だった。そんな彼女にある日、思いがけない異変がおきる。なんと夫が浮気を告白し、そのまま家を出ていったのだ。
そして、ニューヨークの高級住宅街(たしかアッパーウエストサイド)に子供と残された彼女は、うっぷんを晴らすべくワインをしこたま飲んで酔っ払い、子供を両親に預け(上の階に住んでいる)て、街中へと出かけてゆく。
✔︎スタンダップコメディとおっぱいポロリで大受けする
行きつけのガスライトカフェ(スタンダップコメディの実演がある)へとゆくと、酔った勢いで舞台へと上がってしまい、自分自身に起きたできごとをネタにスタンダップコメディを披露して観客に大受けしてしまう。
さらに、酔っ払った彼女は、下ネタをこれでもかと繰り出し、その上おっぱいポロリをして観客を喜ばせる。しかし、そのせいで、警察に逮捕されてしまう。
アメリカの50年代は、とても保守的で卑猥な言葉や、おっぱいポロリなどは許されなかった。たんなる専業主婦だった彼女は、気がついたらあっという間に前科2犯となっていた。このあたりの描写がなんとも皮肉に満ちていて面白い。
ちなみに、50年代の伝説的なスタンダップコメディアンだったレニー・ブルースなどは、繰り返し何度も逮捕されていたとか。
酔払ってはいたが、観客には大受けした彼女は、スタンダップコメディの魅力にはまってしまう。そして、カフェのスタッフだったスージーをマネージャーにして、スタンダップコメディのプロを目指してゆく…。
✔︎スタンダップコメディは意外と面白い
個人的には、このドラマを観てはじめてスタンダップコメディを面白いと感じました。これまでどこが面白いか判らなかったが、ドラマには日本語訳が付いていたので、それが要因だったかもしれない。
とにかく、このドラマは観る価値は大いにあるといって間違いない。コメディではあるが、描かれた時代背景もとても興味深いものがある。また、50年代のファッションも実に魅力的であり、制作側の丁寧な作りが見て取れる。
俳優陣は適材適所であり、とくに主役ミセスメイベル役のレイチェル・ブロズナハンの熱演が輝いている。ちなみに、第76回ゴールデングローブ賞テレビドラマ部門女優賞、第70回プライムタイム・エミー賞主演女優賞コメディ部門を受賞している。
✔︎実在のモデルも下ネタで受けていた
このドラマの主人公には実在のモデルがいて、ジョーン・リバースっていう人だそうです。このジョーンさんも本当にニューヨークの良家のお嬢さんで人妻だったんですけど、まあ下ネタばっかり言う人だったそうです。
このドラマは現在、アマゾン・プライムビデオでシーズン2まで配信されている。シーズン3の製作も決まっているそうだ。
アメリカのお笑い芸。西洋漫談。一人でステージに立ち、観客に向けてまくし立てるのが基本的なスタイル。内容は、下ネタ、政治批判、人種差別ジョークなど際どいものが多い。
写真引用:kaigai-drama-board.com
アメリカの1950年代
引用:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B06VY8VXKG
✔︎パックスアメリカーナ
1950年代は、パックスブリタニカ(大英帝国)の時代が終わり、パックスアメリカーナの時代となったことが明確となった。
アメリカでは、大恐慌(1929年)から30年ぶりの好景気に沸いた時代であり、人々が豊かな生活を存分に謳歌できた時代だった。しかし、それは概ね白人に限っていた。まだ黒人には参政権もなく人権も平等ではなかった。
街には、テールフィンが特徴の大型のアメ車(キャデラックなど)が走り、流線型のデザインが流行り、明るく、そしてハートウォーミング(心優しい)なデザインが注目されて巷を席巻していた。
そして、多くの新商品が発売されて大量生産大量消費の時代となっていた。
娯楽では、テレビが登場してあっという間にラジオを駆逐していた。リビングの中心には、テレビが鎮座してそこが家族団欒の場となっていた。
映画の世界では、伝説的なスターが多く誕生していた。マリリン・モンロー、ジェームス・ディーン、マーロンブランドなどである。大衆音楽では、エルビス・プレスリーが登場し、新しい音楽=ロックの時代の幕を開けていた。
アートの世界では、経済中心地の移動に伴いパリからニューヨークが中心地となった。芸術の都パリも時代の流れに抗うことはできなかった。
政治、経済、芸能、アート、デザイン、商品など多岐にわたる分野でアメリカが中心地となった時代であった。表層的には、明るく、楽しい時代であったように思えるが、その裏側では深い闇も広がっていた。
米ソ冷戦の時代であり、核兵器競争が行われていた。また悪名高いアカ狩りがあり、進歩的な考えは、すべてアカであるとされた。ハートウォーミングなデザインの商品が溢れる一方では、保守的、硬直的ともいえる時代でもあった。
ドラマのなかでも、その辺りの時代状況をそれとなく導入して、一種の陰影としてドラマに深みを与えていた。
スタンドアップコメディの魅力
引用:http://news.livedoor.com/article/image_detail/15670228/?img_id=19506316
スタンダップコメデイを直訳すると西洋漫談というらしい。たしかに漫談はひとりで芸を披露するから間違いではないが、日本の漫談とは内容が違いすぎる。
スタンダップコメデイの内容に、多くの日本人はとても強烈な印象を受けるに違いない。下ネタ、政治批判、人種差別ジョークなど際どいものが多く、またしゃべるスピードもまるで機関銃のような趣にある。
お笑いには、間というものが大事にされるらしいが、日本のお笑いの間とは大きく違っているようだ。とにかくスピード感が半端なく、体制批判も厭わない。
映画評論家・町山智浩氏は、スタンダップコメディについて以下のように語っています。(TBSラジオ『たまむすび』より)
(町山智浩)で、彼女が漫談を好きになった理由っていうのはレニー・ブルースというその当時出てきた漫談師がいて。これも実在の人物なんですけども。彼がその「絶対に言ってはいけない」と言われていたセックス関係のネタ、下ネタと人種問題とか政治とかを全部ギャグにしていったんですよ。
(町山智浩)で、もう実名でバンバン政治家の名前を出したり、いろんな芸能人の名前を出したりして、もうめっちゃくちゃに叩いたり徹底的に下ネタを言ったりして。あとは自分はユダヤ人だったんですけど、ユダヤ人の問題とか黒人の問題とか差別の問題もしゃべりまくって全部笑いにして。で、片っ端から逮捕されていったっていう人がレニー・ブルースっていう人なんですね。
(町山智浩)で、その人によってアメリカのコメディーっていうのは革命が起こって変わっていったんですよ。で、このミッジさんはその弟子みたいになっていくんですよ。(ミッジ=ミセスメイベル)
引用:町山智浩『マーベラス・ミセス・メイゼル』を語る
https://miyearnzzlabo.com/archives/54242
スタンドダップコメディの本領は、社会通念上では言ってはいけない(常識とか、既成概念、固定観念を指す)ことを、あえてネタにして、それを笑いにかえてしまう、というところにあるようです。
したがって、体制批判は言うに及ばす、あらゆる不合理なことをネタにする。それを観客が笑うのは、いわば一種の憂さ晴らしなのかもしれない。
現在のアメリカでは、トランプ大統領が一番のネタ元ではないだろうか。
マーベラス・ミセス・メイゼル/シーズン1 あらすじ
ミリアム・”ミッジ”・メイゼルは、1958年のニューヨーク市の高級住宅街に住むユダヤ人の若い専業主婦である。夫ジョールはビジネスマンであるが、夜はガスライト・カフェで素人スタンドアップ・コメディの舞台に立つ。
ある夜、舞台がうまくいかなかったジョールは、それを妻のせいにし、さらに秘書と不倫関係にあったことを告白して、家を出ていってしまう。
ミッジは怒りと憤りを抱えてワインを飲みすぎたままガスライト・カフェに行き、成り行きで舞台に上がり、観客に苦境を語って大ウケする。
自分の魅力を見せるためにおっぱいをポロリとだしてしまい、無許可営業とわいせつ罪で逮捕される。夫と家を失う苦境に立たされたミッジは、百貨店で働きながら、自分の才能を認めたガスライト・カフェの従業員のスージーと組んでスタンドアップ・コメディの業界に入ってゆくーー。
あらすじ参考:ウィキペディアより
マーベラス・ミセス・メイゼル/製作概要
製作総指揮:
エイミー・シャーマン=パラディーノ
ダニエル・パラディーノ
原案:エイミー・シャーマン=パラディーノ
出演者:
レイチェル・ブロズナハン
マイケル・ゼゲン
アレックス・ボースタイン
トニー・シャルーブ
マリン・ヒンクル
ケヴィン・ポラック
放映:2017年-現在(2019年)
配信・製作:アマゾン
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