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■80年代|広告批評と80年代の広告

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広告批評は、広告という存在を時代の寵児にした!


1982年 サントリー 生ビールとペンギンズバーのCM

80年代、広告は時代の認知を得て大きく様変わりした

広告批評を創刊した天野祐吉氏が、お亡くなりになられたそうです。80歳であったと書かれていました。ご冥福をお祈りいたします。

さて、雑誌「広告批評」であるが、天野氏の死去のニュースを知るまで、このところずーと忘れていた存在でした。

個人的に、この雑誌を購読していたのは80年代まででした。79年に創刊されたそうなので、きたるべき黄金に輝く80年代の広告界のために存在していたのかもしれない。この雑誌が出るまでは、広告は批評の対象ではなかったそうである。

むしろ、それは卑しい行為という風潮さえあったようだ。それが、80年代の訪れとともに様変わりしていく。その一端を担ったと云えるのが、「広告批評」である。

広告と社会との関係式を判りやすく解説することで、それは当時としては新鮮であった、と記憶している。80年代の広告を端的にいえば、それは「イメージの時代」といえるのではないか。

このイメージという曖昧模糊とした言葉が、80年代の全体を包んだ雰囲気だったように思うのである。70年代から、その予兆はあったと思うが、80年代になると広告を制作するデザイナー、コピーライター、カメラマンなどが一気にスターになっていく。

イメージを創る人々が俄然注目されたのであった。

そして、そのような雰囲気を増長する役割を「広告批評」は担っていた。しかし、それは悪い意味ではなく、これまで日陰の存在であった広告制作者たちの地位向上に貢献していたはずである。なお、広告批評は2009年に休刊となった。


サントリーローヤルCM 80年代

広告批評の全盛時代は、広告も面白かった

広告批評が全盛であった80年代は、個人的には広告も面白かったと記憶している。それは何故かといえば、バブルにまっしぐらに向かう途上にあるエネルギーが、広告界にも押し寄せていたからである、と思うが違うか。

80年代が始まると、西武百貨店は「不思議大好き」を広告スローガンとして掲げて、一気に時代の寵児として注目された。以後、バブルが弾けるまで西武百貨店は、80年代をリードしまくったのである。

糸井重里、仲畑貴志のコピーライターの両エース、田中一光、浅葉克己などのデザイナー、その他多くのスター・クリエイターが輩出したのが80年代であった。これらのクリエイターは、前述した西武百貨店を筆頭に、丸井、サントリー、ソニーなど多くの企業を舞台に、これでもかと言わんばかりに斬新な広告を打ち出していたのである。

そして、それは広告と顧客との幸せな関係式を形成していた。

80年代の広告は、たぶん売らんかなという即物的な行為をしていなかった。それが、一般人の多くに受け入れられた要素であったのではないか、と個人的には思う次第である。2000年代以降の広告界は、インターネットの時代と相まって即物的で面白みがなくなったと感じられる。それは、企業も余裕がないせいかもしれない。

何事にも経費削減、人員整理が付いて回るからだ。

2000年代以降は、如何に顧客を「釣り上げるか」という広告ばかりが目立っている。はじめは、インターネットの世界で顕著であったが、昨今ではあらゆる広告でこの傾向が主流となっているようだ。

なんとも寂しい限りである。もちろん、いまでも優秀なクリエイターは多くいるが、何故か一般人の目に入る機会が少なくなっている。唯一の例外は、佐藤可士和のユニクロぐらいか。


西武百貨店 80年代の広告

80年代に活躍したクリエイター(思いついた人々のみ)

<グラフィック> <コピーライター>
 田中一光     糸井重里
 浅葉克己     仲畑貴志
 副田高行     魚住勉
 サイトウマコト  一倉宏
 奥村靫正     岩崎俊一
 上條喬久     林真理子
 河北秀也     長沢岳夫
 仲條正義     中島らも
 松永真      西村佳也
 立花ハジメ    梅本洋一

その他にも、多くの活躍したクリエイターがいました。なお、現在も活躍されている方々であることを付け加えておきます。(一部の人は、すでにお亡くなりになられています)

最後に、80年代最も活躍したコピーライターである仲畑貴志の言葉を紹介したい。

「当たり前に存在する言葉を、皆が共感できるように表現をアレンジしてメディアに乗せて発信する」
「コピーは書いたり、つくったりするものではなく、チョイスするもの」

だそうである。なかなか鋭い指摘である。さすが仲畑氏と個人的には思う次第である。

80s 日本の雑誌広告
80s 日本の雑誌広告

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