80年代を顧みて、いまを考える!
2016年現在、巷では一種独特の閉塞感に満ちている。それはなぜか、そして何に起因しているか。それを探り、理解することが次世代につながってゆく。
日本は90年代初頭のバブル崩壊以降、かくも長き低迷のトンネルに入ってしまった。なにゆえに、そこから抜け出せないのか。うがった見方をすれば、そこから向け出すのが怖いのかもしれない。
90年代から現在につづく低迷の原因は、80年代のバブルにあったのは言うまでもない。それゆえに、80年代は忌み嫌われてきて、その時代を省みるときは、必ずやバブル紳士とボデコンのセットばかりが紹介されてきた。
しかし、そんな80年代は、実は日本のゴールデンエイジでもあった。
日本が戦後復興し、その頂点を迎えた時期でもあったのだ。そして、日本独自の文化や新しい価値観が花開いた時代でもあった。
いま日本では、イノベーションが生まれないといわれる。それはなぜなのか、ITが持て囃され注目されても日本発のものは無いに等しい。
80年代では、企業も文化も新しい意識や価値観のもとイノベーションが劇的に誕生していた。現代から見れば、それは古いかもしれないが、その精神性や哲学には現代に参考になるヒントが隠されているかもしれない。
80年代大回顧展「The 80’s/ザ・エイティーズ」では、ゴールデンエイジといわれた「時代の趨勢の気分」を再現し展示することで、80年代の意味を探ると同時に、現代に通じる問題を考える機会とすることを意図しています。
80年代大回顧展「The 80’s/ザ・エイティーズ」企画案
ポストモダン建築 ヤマトインターナショナル
当該企画案は、どこかに提案したものではなく、あくまで自主企画でありアイデアスケッチの域をでないものです。具体性に欠けていることをご了承ください。
<コンセプト>
「80年代を顧みて、いまを考える」
日本のゴールデンエイジ80年代の時代の気分を再現・展示してみる。80年代に誕生したエポックメイキングなファッション、アート、デザイン、建築、出版、エンターティメント、サブカルチャーまで…を網羅した一大回顧展とする。
意味性…イノベーションが生まれない現代の日本に喝を入れる。(あえていえば)
<展開カテゴリー/例>
・ファッション…デザイナーズブランドの夜明け
・アート…ニューペインティングとヘタウマ
・広告・デザイン・建築…コピーとスーパーグラフィックとポストモダン
・出版…雑誌のカタログ化
・エンターティメント…和製ロックとニューウェーブ
・サブカルチャー…おたくの誕生
・バブルは踊る…ディスコとナイトライフ
<展開場所・案>
例えば「新国立現代美術館」、またはそれに類する施設を考慮する。
コンセプトに基づき、各カルチャーカテゴリーを設定し再現、または展示していく。時代順ではなく、あくまでカルチャー別をメインとして80年代全体の気分、雰囲気を体感できるようにする。
<展開の内容・案>
・プロローグ…序章、不思議大好きではじまる/インスタレーション
・エピソード…エポックメイキングなファッション、アート、デザイン、建築、出版、エンターティメント、サブカルチャーなど、各カテゴリー別展示スペースで展開する。
・エピローグ…パンドラの匣/インスタレーション
<訴求キャッチフレーズ>
「80年代、ゴールデンエイジがはじまった」
不思議大好き、デザイナーズブランド、ニューウェーブ、おたく、そしてバブルまで。80年代を駆け抜けた時代の趨勢の気分がいま甦る!
「The 80’s/ザ・エイティーズ」の展開案
プロローグ/導入部のインスタレーション
テーマ/不思議大好き
西武百貨店1981年のポスター「不思議大好き」が、導入部(トンネルを模した)の薄暗がりの壁一面に貼られてスポットライトに照らされている。そのなかを通って本展示スペースへと入っていく…。
背景音楽…YMO「ライディーン」ほか、ちなみに「ライディーン」は1979年発売であるが、イメージとしては80年代として認知されている。
エピソード/カテゴリー別展示スペース
1)西武流通グループの広告とデザイン
テーマは、西武流通グループの80年代。「不思議大好き」「おいしい生活」その他一連のキャンペーンポスターや広告を展示する。おなじくパルコの広告も、そしてパルコ1Fにあった「カフェボンゴ」の一部を再現する。
西武流通グループは、80年代を象徴している。文化の時代を築いたが、バブル崩壊とともに失速しやがて解体された。80年代の明と暗の両方を隠喩させている。
カフェボンゴ…パルコ1Fにあったカフェ、独特のレトロフィーチャー感を漂わせたインテリアが特徴であった。ナイジェル・コーツがデザインをした。
2)ファッション/デザイナーズブランドの夜明け
例えばコムデギャルソン…アシンメトリーとモノトーンで一世を風靡したファッション。そのオリジナリティーは世界にも通じていた。(なお、上の写真はヨージヤマモト)
その他…多数登場したデザイナーズから代表的なブランドを選定し展示する。
また、同時に当時のブランド広告も一緒に展示して、80年代の趨勢が感じられるようにする。ついでにいえば、展示方法はブランドストア内にいる感じを再現して、よりリアルな体験ができるようにする。
3)アート/ニューペインティングとヘタウマ
80年代のアートといえば、なにはともあれニューペインティングである。バスキア、シューナーベルをはじめ海外の気鋭アーティストが日本に紹介された。その影響は、パルコが主催した「日本グラフィック展」で見ることができた。
日比野克彦をはじめとした日本のニューペインターが登場していた。また、同時期にはイラストの世界で「ヘタウマ」といわれる様式が流行っていた。
<展開例>
海外勢としてバスキア、シュナーベル、サーレ、ヘリングなど、比較対象の日本側として日比野克彦、ヘタウマの湯村輝彦などを展示する。横尾忠則の画家宣言後のアート作品も欠かせない。
4)広告とデザインと建築/スーパーグラフィック&ポストモダン
資生堂パーキージーン 80年代はアートとデザインが注目された
80年代はイメージ広告の時代であり、すぐれた表現の数々が生まれていた。せちがらい現代と違って、広告表現も夢と希望に満ちていた。
そんな広告の代表作を展示すると同時に、一部の有力デザイナーをクローズアップして時代の気分をさらに明確にしていく。
また、建築とその傾向も同時に代表作を展示(写真と模型)する。
<展開例その1>
サントリー、丸井など80年代の広告をリードした企業の広告を展示する。
<展開例その2>
サイトウマコトと戸田正寿をクローズアップする。ともにアーティスティックな表現を特徴とした先鋭的なデザイナー&ディレクター。とくに、サイトウのアルファキュービックやJUNの広告は80年代らしさに溢れていた。
<展開例その3>
ポストモダンの建築群(写真と模型)とインテリアデザイン(実物)を展示する。具体的には、建築では磯崎新、インテリアではソットサスなど。
5)エディトリアル/雑誌のカタログ化
引用:http://file.blog-showa-kayou.diskunion.net/CIMG9907.JPG
80年代の雑誌はおしなべてカタログ化が進んでいた。女性誌のアンアンやノンノ、男性誌のポパイ、ホットドッグプレスなどが代表的である。それら以外でも、イケてることを基準とした事例を満載した雑誌がいくつも出ていた。
とにかく80年代は、イケてることが命題であり、人々はそれに向かって努力していた。ある意味ではとても切ない流行であったのは言うまでもない。それを象徴していたのがカタログ雑誌群であったといえる。
<展開例>
当時のカタログ雑誌の表紙やキャッチコピーなどを拡大して、展示スペースの壁面に貼り付ける。要するに壁面のすべてをカタログ文化で埋め尽くすようにする。情報の氾濫と爛熟化する時代の気分を象徴的に表す。
さらに、展示スペース中央に「カタログの塔」を設置する。(ピサの斜塔のような形状で、カタログ雑誌の記事がベタベタと貼られている)
6)エンターティメント/和製ロックとニューウェーブとマンザイ
80年代では、漫才がマンザイとなりイケてるエンターティメントとなった。また、和製ロックが定着し数多くのロックバンドが誕生していた。
同時期には、ニューウェーブといわれた音楽が登場していた。テクノともいわれたが、総じてニューウェーブと称されていた。YMO、プラスティックスなどが日本では代表的なグループである。(上の動画は、サロンミュージック。伝説のクラブ「ピテカン」でプラスティックスなどと共にライブを行っていた)
<展開例>
80年代は、ミュージックビデオが盛んになった時代であった。音楽と映像と、そして衣装も重要度を増していた。メディアミックスの時代がはじまっていた。その様相を以下のような要素をもって展示する。
・80年代ミュージックビデオの上映
・80年代音楽シーン(エポックメイキングと年表と写真)
・お笑い界のニューウェーブ、マンザイ(エポックメイキングと年表と写真)
・漫画界のニューウェーブ、岡崎京子(作品と解説)
・ライブ/80年代初頭にはじまった日本のクラブシーンを代表して、例えばテイトウワなどのライブを行う。
7)サブカルチャー/おたくの誕生
現在、オタクといわれている特定領域を深く愛好する人々は、80年代では「おたく」と称されていた。80年代初頭に某評論家が命名した。当時の漫画やアニメの同人会で、仲間同士が「おたく」と言い合っていたことに由来するらしい。
<展開例>
・おたくの背景と概念(チャートを使ったビジュアルで)
・80年代当時のおたく人気度が高い、アニメや漫画、その他の展示
・おたく初期の文化座談会…おたくの名付け親はじめ、サブカル文化人
8)バブルは踊る/ボディコンとナイトライフ
80年代には、新たなナイトライフが生まれていた。カフェバーが流行り、ディスコも70年代と違って豪華さや大型化が顕著となっていた。そこに集う層も大人化してお金の匂いがしていた。女性は、体にフィットしたボディコンと呼ばれる衣装が定番だった。それは色と欲とお金が融合したナイトライフによく似合っていた。
<展開例>
・代表的なボデコンスーツ、アクセサリーなどの展示
・ゴージャスに彩られた80年代ナイトシーンを再現展示(例:ディスコ)
・80年代ディスコシーン、解説と写真
・元祖カフェバー「レッドシューズ」、解説と写真
9)おまけ/80年代ガジェット
80年代に発売されて人気を博した家電、車、おもちゃ、雑貨などを展示する。(このカテゴリーは、まだ未整理です)
エピローグ/パンドラの匣(出口のインスタレーション)
怒涛の80年代を駆け抜けると、そこには「パンドラの匣」があった。これは80年代の終焉と90年代初頭のバブル崩壊の隠喩である。
<イメージ>
パンドラの匣の形状イメージ…ダミアンハースト「サメのホルマリン漬け」のような生と死の匂いが濃厚に漂うような箱型のオブジェ。または、無数の色鮮やかな金魚が大きな透明のガラス箱の中を泳いでいる夢幻のファンタジー。
以上が、80年代大回顧展「The 80’s/ザ・エイティーズ」の企画概要でした。ここまでお読み頂きありがとうございました。
追記:
この企画案は、80年代を懐かしむという懐古趣味ではなく、あくまで80年代を考察仕直し、現代に生かすというポジティブな発想によるものである。
80年代を知らない若い人達に見てもらうためのイベントということもできる。ただし、お断りしておくが実現性は皆無に近いというしかない。いやはや。
冒頭写真:ポストモダンのデザイン/メンフィス・ミラノ
引用:http://tabroom.jp/contents/wp-content/uploads/2015/04/memphis-milano-and-80s-design_01.jpg
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