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■80年代|コム・デ・ギャルソンという独自性

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時代はバブル目前、デザイナーズブランドが活気づいた!

個性=価値として認知された時代の始まり

80年代のファッションといえば、ボディコンや海外ブランドという認識が一般的である。しかし、その一方で、国内のデザイナーを主体としたブランド、デザイナーズブランドが一世を風靡した時代でもあった。

デザイナーズブランドとは、デザイナーが主体となって服造りから、ブランドイメージの構築までを行う。文字通りデザイナーのためのブランドである。その多くではデザイナー自身が経営者であった。

ニコル/松田光弘、ビギ/菊池武夫、イッセイミヤケ/三宅一生、そしてコム・デ・ギャルソン/川久保玲などがいた。

<デザイナーズブランド/上記以外>
・Y’s 山本耀司
・ケンゾー 高田 賢三
・ピンクハウス
・ジュンココシノ
・ヤマモトカンサイ
・アーストンボラージュ、など

かれらデザイナーの多くは70年代に創業しているが、そのデザイン性が俄然注目集めて業務を拡大したのは、なんといって80年代であった。

何故ならば、80年代はそれまで疎んじられてきた個性が尊重されるようになって、人とは違う事がいわば価値ある時代となったからである。

デザイナーズブランドのデザイナー達はそれぞれ固有の個性を発揮した。そのなかでも特筆すべき個性だったのが、当該テーマであるコム・デ・ギャルソンであった。川久保玲によって創立されたこのブランドは、当初より革新性があった。

コム・デ・ギャルソンとは、「少年の持つ冒険心」という意味合いを持つそうである。その語源はフランス語である。このことからも分かるように、エレガンスやクラシックを源流とする海外ブランドとは、目指す道が自ずと違っていた。

それは従来の服の概念を一旦壊すかのようにさえ感じられた。モードという洋装の概念を基本にするのではなく、人間の持つ身体特性に融合するかのような服をデザインした。それは、服の皺や揺れる布の美しさとして表現されていた。

一見するとシンプルだが、服の表面に捻りを加える,撓みを持たせる,アシンメトリーの手法を取り入れるなど、布の平面性を越えた大胆な表現を探求していた。また、色彩は、主に生成り、黒、グレーなどに限定されていた。

伝統、保守という垣根を越えてファッションにも革新の可能性があることを示した。それが、コム・デ・ギャルソンが他のデザイナーと違うところである。また、それ故に、海外での評価も高かった。

そして、現在でも日本を代表する世界的ブランドとして広く認識されている。

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しかし、80年代当時を振り返ると一般的には、なんだか異様な雰囲気の黒い服という印象が強い。だらっとした布地が体全体を覆っている。そんなイメージである。80年代初頭の頃、そんな黒い服に身を包んだ女性が多く見られた。

それらの女性達を総称して「カラス族」と言ったそうである。カラスも集団に成ると異様な感じがするが、それと同じく彼女達も異様な雰囲気を漂わせていた。しかし、見掛けと実態には乖離があったようである。

「カラス族」の彼女達が、皆コムデを着ていた訳ではなかった。何故なら、コムデの服は高いからである。彼女達の多くが着ていたのはコム・デ・ギャルソンの見た目を模倣した安価なブランドであった。

コムサ・デ・モードなどもそのひとつだった。名前まで紛らわしいが、そこが狙いだったのだろう。このコムサは、ファイブフォックスという企業のブランドである。このような会社は、マーチャンダイジングを主体としていた。経営者を中心に商品政策が立案されて、それに基づきデザインや製品が作られる。

そして、それらのブランドは、デザイナーズブランドと差別化してキャラクターブランドという呼称を同時に誕生させていた。これに端を発して、その後はDCブランドという様に総称されていった。

ちなみに、ここで言うところのキャラクターはキティのような絵柄を指すのではない。ある特定のイメージを与えることを指している。

デザイナーズとキャラクターが合体したことで、利を得たのは有名なデザイナーを要しないキャラクターブランドであったのは言うまでもない。

<キャラクターブランドといわれた国内ブランド>
・コムサ・デ・モード
・パーソンズ(80年代、若手芸人であった「とんねるず」が着ていたことで有名)
・ペイトンプレイス
・アトリエサブ
・アバハウス
・バツ、など

他にも多数あったと思うが、思いつかない。もう忘れたブランドもある。
ちなみに、パーソンズは現在では、洋服の青山で売られているとか。(未確認)

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南青山5丁目のコム・デ・ギャルソン

当方は、80年代のある時期に表参道の交差点から、南青山方面に歩いて通っていたことがある。第一マンションがあり、その向かいにはケンゾーがあり、イッセイミヤケもあった。さらに歩くとコム・デ・ギャルソンがあった。その先にはヨックモック(洋菓子屋)があり、フロムファーストがあった。

この通り沿いは、たしか空間プロデューサーの浜野安宏氏が景観をシックな趣きに統一するためにビルの壁は茶色かグレーにしようと働きかけたとか。しかし、ヨックモックは何故か、それに反旗を掲げるかの様にブルーにしていた。

それはさておき、南青山のコム・デ・ギャルソンである。ここは基幹店と言っても過言ではない店舗だったと思う。正確ではないが、当時はその店構えと内装が斬新で通りすがりにいつも覗いていたもんである。

店内では、ときどき現代アーティストの作品が飾られていたと記憶にある。

いつの日か、この店でスーツを買おうと思っていたが、それも実現せず南青山とはいつの間にか疎遠になっていた。たしか、80年代がもう終わりかけていた時期だったはずだ。

そして、やがて来る90年代は、バブル崩壊と共にやってきた。時代は、もう変わったと感じたのは、それからずいぶんと経てからであった。

コム・デ・ギャルソンの詳細は以下をどうぞ!
コム・デ・ギャルソン:COMME des GARÇONS(ファッションプレス)

冒頭写真:コム・デ・ギャルソン青山路面店。2006年4月14日、Akitoishiiが撮影。(ウィキペディアより)

<ちぐはぐな身体―ファッションって何?>
ピアスや刺青をすることの意味とは?コムデギャルソンやヨウジヤマモト等のファッションが問いかけているものは?そもそも人は何のために服で体を隠すのか?哲学の教授が身体論をわかりやすく説いた名著!

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