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■社会|USJに降臨した敏腕マーケター

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三セクはやはり駄目、それがよく分かる

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ハリーポッターのアトラクション

テーマパークUSJ好調の影にマーケターあり!

娯楽施設の人気度は、東の東京ディズニーランド、西のユニバーサルジャパンが他を大きくリードしているのが昨今の事情である。ディズニーは開業当初から他をぶっちぎってそのまま独走しているが、ユニバーサルはそうでもなかった。なにしろ、開園するにあたって諸事情から第三セクター方式という寄り合い所帯の経営でスタートした。

これが災いして、2001年開業の翌年には早くも失態(アトラクションや飲食店の不祥事)もあって集客は減速しはじめた。その後は大きく持ち直すことなく三セクは解体し、独立した事業会社となって現在に至っている。現在では、ユニーバサル本社との資本関係もないそうである。

娯楽施設は、だいたいオープン当初がピークであとは集客が下がっていくのが定番コースである。装置に頼った集客であれば、それに飽きられたら一気に減速するのは致し方ない。したがって一定の期間毎の新機種の導入が図られる。しかし、それには新機種の投資に見合う収益がなければならない。

娯楽施設は好調のときは案外経営も楽そうであるが、減速しはじめると止まらない。集客が減速したときに何をしたらいいのかが、日本の経営者にはよく分かっていないようだ。東京ディズニーランドはずーと好調であるが、これは日本の経営陣のおかげとは思えない。本家ディズニー様々と思うが、違うか。

本家ディズニーは、東京ディズニーランドの経営陣が、なにかとコスト削減ばかりを進めるのを良く思っていないようである。顧客満足を疎かにしていては、やがてそっぽを向かれる。それを本家は経験で感じているのだろう。数字ばかりが優先されている(噂では)昨今の状況では、このパークの将来は?である。現在、従業員の90%以上とされる非正規社員から、いまの運営体制に反旗が起こっているようだ。これは何かの予兆ではないか。

それはさておき、ユニバーサルジャパンである。集客が伸びず経営が悪化した三セクは、経営陣にユニバーサル本社からグレン・ガンペル氏(現CEO)を招聘した。そして、かれの主導により投資会社から融資を受けて三セクを解体し民間事業体とした。そこから、ようやく巻き返しの体制づくりとなった。

とにかく、三セクの経営陣に娯楽施設の経営などはなから無理だったのだ。たしか官僚とか、その関係筋が経営陣になっていたと思うが、違うか。施設という箱ものが出来たから後はよきに計らえでは経営が成り立つはずがない。三セクで成功した例を聞いた事がないが、どこかにあるのだろうか。

とにかく民間会社となったユニバーサルジャパンは、巻き返しを図っていく。ここにひとりのマーケターが介在していく。このマーケターの活躍は、テレビでも報道されたことがある。多少はパブリシティ臭いかもしれない。しかし、それも含めてマーケティングだからきっと優秀に違いない。

前述したグレン氏は、2006年にユニバーサルジャパンを民間事業会社にした。そして、2010年になって巻き返しの責任者に呼び寄せたのが、森岡毅氏(現ユー・エス・ジェイCMO(最高マーケティング責任者)であった。この人は外資を中心にマーケティングの仕事に携わっていた。

この森岡氏の凄いのは、すぐに結果を出したことである。それまで下降一直線の集客を上向かせたのはたいしたもんである。もちろん、情報が伝える事をそのまま信用すればの話なのは言うまでもない。そんな穿った見方をしても、数字を見てみるとあながち嘘とは思えない。なにしろ大震災のあった年でも集客を伸ばした。

USJの年間集客数は、開業した2001年度の約1100万人をピークに減少、横ばいを続け、2009~2010年度は700万人台に落ち込んでいたが、その後V字回復を果たす。11年度は約880万人、12年度は約975万人とハイペースで来場者数を上乗せし、13年度は開業年度以来となる1000万人越えを達成した(2012年秋には開業以来の累計で1億人を突破)。それに伴い売上高は、集客数が800万人台を切る直前の08年度と比べ、2割近く増えた。(ダイヤモンド・オンラインより)

このように開業時のピークまであと一歩に迫っているようだ。そして2014年7月には、満を持してハリーポッターのアトラクションをオープンさせた。

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クリエイティブではないマーケターとは如何に

USJ復活の立役者となったマーケター森岡氏であるが、本人はクリエイティブではないと言っている。マーケターには、ロジック系と数字重視系とに別れると思われる。森岡氏は、どうやら数字系か。収益や顧客などの各種データに基づいて戦略や具体策を考えるタイプと想像する。

ただし、導きだした結果はなかなかのアイデアマンとしか思えない。クリエイティブではないは謙遜ではないか。では具体的にどのようなことをしたかを以下に紹介したい。

1)映画専門からエンターティメントセレクトに
ユニバーサルジャパンは、言わずと知れた映画のテーマパークである。しかし、これが足枷であると見抜いた森岡氏は、専門特化からセレクトショップ型へシフトを切った。これが、現在に至る基本スタンスとなっている。

理由/映画にこだわるあまり、顧客のことを疎かにしていた。技術は素晴らしくても顧客がそれを望んでいなければ、集客にも収益にもならない。そこで顧客とのずれを修正する必要があった。別の言い方をすれば、プロダクトアウトからマーケットインへの発想の転換である。

2)長期戦略がはじめにありき
2010年、赴任したその年にユニバーサルジャパンの今後の戦略をすでに提案している。その内容は、まずはファミリー層の集客に力を注ぐこと。そして、そこで得た収益を糧にコンテンツキラーとなるアトラクションを導入する。さらに、それらのノウハウを身につけた上で他の国に施設を展開する。

この提案をしたとき取締役会は反対した。唯一後押しをしたのが、現CEOのグレン氏だったそうである。

3)新ファミリーエリアとハリーポッター
顧客の核となるファミリー層の集客をたしかなものとするテーマエリアの開発をする。現在、これは「ワンダーランド」と呼ばれている。そして唯一無二(アジア圏)のアトラクション「ハリーポッター」を導入する。

2014年7月現在、唯一無二のコンテンツキラーとなるアトラクション「ハリーポッター」の導入に至った。ここまで僅か4年ほどである。ちなみ、「ハリーポッター」は約450億円ほど掛かったそうである。

4)既存資産の有効活用
新ファミリーエリアとハリーポッターのアトラクションができるまで現有資産で集客を図らねばならない。そこで、既存施設のなかから有効性のあるものを見極めて再活性化を図る。

例/「ワンピースプレミアショー」「ホラーナイト」など。「ワンピース」はこれまで目立たなかったものを訴求方法を変えて集客に成功。同じく「ホラーナイト」ではハロウィーン期間に100人ほどのゾンビを徘徊させるなどして注目を集めた。

5)エンターティメントなら映画にこだわらない
「モンスターハンター」のイベント化は、専門特化からの脱皮を象徴した。これは比較的コストを掛けずに子供達の集客に貢献した。

「世界一の光のツリー」は、クリスマスシーズンの目玉として高さ36メートル、33万個のLEDで飾りつけられた。これはギネスブックにも登録された。

6)ファミリー客の集客販促(震災後のてこ入れ)
「関西スマイル・キッズ・フリーパス」の実施。これは2011年の大震災後のてこ入れ策としてプロモーションされた。大人1人あたり子ども1人をUSJに無料招待するという試みだった。自粛ムードが漂う中でこの企画は当たり来場者数は伸びた。

上記したものはほんの一部であると思われるが、参考までにまとめてみました。とにかく、わずか4年ほどのあいだにここまでやった(もちろん森岡氏ひとりではない)のは、たいしたもんである。たぶん、実現するには多くの軋轢や障害があったはずである。

しかし、それを乗り越えるのが真のマーケターの役割ではないかと思います。森岡氏の今後の健闘を祈ります。

参考文献:ダイヤモンドオンラインより

関連記事:USJはなぜ「ハリポタ」に売上の半分を投じたか?V字回復の立役者、アイデアの神様を呼ぶ男の発想法
http://diamond.jp/articles/-/55955

追記、ここから先がユニバーサルジャパンの本当の試練と思われるが、すでに次の策はきっとあるのだろう。余談であるが森岡氏ならソニーをどうするか聞いてみたい。きっと興味深いことをいうのではないか。

マーケティングは企画だけなら少し勉強すれば誰にもできる。しかし、それを実行するのが難しい。大概は実行段階で骨抜きにされてしまう。そこで、トップに実行を決断させる説得力と、実行段階では卓越なセンスが問われる。森岡氏は、その両方ありそうである。

余談であるが、当該ユーザーも「ホラーナイト」のような企画をしたことがある。ただし、ゾンビではなくゲイであった。当方の企画はぽしゃった(費用で)が、後にゲイの人達が持ち出し(ただ)で実施した。場所は水道橋の某娯楽施設である。これは10年以上前のことである。かれら(ゲイの人達)はいまどうしてるか。

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