キッダーニ男爵の成り上がり経営
さて、今回は若干個人的な領域の話をしてみたい。あまり個人的な話はしたくないのだが、何しろ意欲が湧くネタが不足気味である。一応、書こうと思うネタは用意しているが、それに向かう意欲が乏しい。そこで、仕方なく禁を破って個人的な経験の中からある話をしたいと思うのである。
カードゲームの会社である「ブシロード」という会社をご存知だろうか。TVコマーシャルが、やたらと流されているので知っている人も多いと思うのである。この会社の社長は、木谷高明氏という方で、業界では有名人である。
また、最近ではプロレス団体を買収して話題を提供した。90年代の中頃から2000年代後半までは、「ブロッコリー」という会社を経営していた。「ゲーマーズ」というゲーム、アニメ等のキャラクター商品を販売するショップを多数展開すると同時に、オリジナルキャラを開発して商品化するなど積極的な展開をしていた。
この木谷氏と90年代の一時期において、一緒に仕事をしたことがあるのだ。当時、当方は業界大手の側に立ち、まだ創業間もない木谷氏の会社「ブロッコリー」とトップオフ(経費・収益は半々)という条件で事業をはじめたのである。
角川書店社長とブシロード社長の対談
http://www.cyzo.com/2013/04/post_13128.html
オタク界の異端児、経営の才あり!
この木谷氏、なかなかの個性の持ち主である。90年代の半ば頃、秋葉原が電気街からオタク系文化の街に変貌し始めた時期、すでに時代はオタクにありと看破していた。彼は、元・山一証券の証券マンであり、しかも優秀であったそうである。ちなみに、これは本人自身がそう云っていた。
かなり個性があり、しかも自己主張が強い、これは自らの能力に自信があるからであろう。当方は、オタクではなく仕事として事業の担当者になったに過ぎないが、木谷氏はゴリゴリのオタクであった。はじめて木谷氏に会ったのは、池袋であったと記憶している。
当時は、まだ創業間もない時期であり、それほどオーラは感じなかったが、一種の狂気を孕んだような自信が見受けられた。しかし、ちょっと見は、中小企業の人のいい社長のようであった。仕事が進んでいくにしたがい、この人は只ものではない感が日々強く漂うようになったのである。
あるとき、彼は次のように云った。「200億円まではすでに見えた」「火事場の焼け太りですよ」「将来は証券会社をやりたい」「いずれ上場をします」等々。当時は、まだ20億円ぐらいの規模だったと思うが、ちょっと驚くことを次々と言い放っていた。しかし、なんと、それから間もなくして彼は会社の上場を果たすのであった。
起業には、狂気が必要か
サラリーマンは、大概そうであるが大勢の意見に従いがちである。異端でいることは、会社にいることが困難になる。会社は、個性ある人材を求めると表向きは云うが、実際に個性ある人材を目の当たりにすると、どう扱っていいか分からず結局はスポイルしてしまう。上記した木谷氏は、山一証券時代は上司に疎んじられたそうである。
なんでも営業成績は抜群であったそうであるが、地方に飛ばされたそうである。たぶん自己主張が強かったのでないか。あまりに優秀だと、周囲が馬鹿に見えるのではないか。
そして、木谷氏は、山一証券の破綻とほぼ同時期に起業することになったのである。もともと起業すべく準備をしていたのか、それは聴きそびれたのである。これまで、幾人かの起業して成功した人に会ったことがある。その人たちの共通項は端的に云えば、思い込みの強さである。
それも、一種の狂気を含んだ強いものである。情熱と言葉を変えることもできるが、個人的には思い込みの方がピンとくるのである。それは、何故かと云えば、勘違いと神一重であるからである。
起業家自身が、はたして、どこまで自身の思い込みに確信を持っているか?。それは、知る由もないが。たぶん、確信ではなく、鼓舞しているのではないかと思えてならない。何故なら、かれらは、熱く、熱く語るのである。自身の事業について。この世にこれ以上の事業はないとでも云わんばかりに。
起業に関して、稲盛和夫氏のエピソード
稲森氏は、講演の参加者からの質問に以下のように答えたそうである。
参加者の一人がこう質問しました。
「私は将来起業するのが夢です。このスクールで事業計画書の書き方を学んでいるのですが、なかなか上手に書けません。稲盛さんはどのようなことに気をつけて事業計画書を書かれていましたか?」
この質問に対し、稲盛氏は次のように答えた。
「君は起業したいのだろう? なぜ事業計画書という嘘の作文を勉強しているのだ? 私でさえ見えるのは3カ月先ぐらいで、1年後を予測するような事業計画書なんて嘘を書くようなものだ。そんなものを勉強している時間があったら、さっさと事業を始めればいい。始めてから考えれば良い。
資金を集めるためにどうしても必要ならコンサルタントに書かせればいいじゃないか。君がやることは、すぐに事業をスタートすることだ」
なるほど、もっともである。正論過ぎてなんも云えねー!。
ちなみに、当方が関わった木谷氏との案件は、業界大手側の事情もあり破綻した。木谷氏は、その後、順調に業績を拡大させるが、ある時期からそれは反転し責任を問われ創業した会社を離れた。そして「ブシロード」を創業し、現在に至る。現在の売上規模は、約150億円と云われている。
ちなみに、今度は上場はしないそうである。冒頭のキャッチに使用したキッダーニ男爵とは、木谷氏がプロレスのリングに上がる際のリングネームだそうである。
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