栄枯盛衰は、明日は我が身か
一部大企業の衰退は、もはや安泰と勘違いした奢る社員達にある?
■シャープの衰退は、目の付けどころがほんとはシャープじゃなかっただけ!
「もうだめかもしれんね」と言われながら何とか金融支援で生き延びているシャープである。かつては、「選択と集中」の申し子としてマスコミでちやほやされたのが、もはや遠くに成りにけりである。あの当時のマスコミやエコノミストの見識が問われてもいいはずだが、マスコミはしれっとしてシャープ衰退を報じている。
シャープが我が世の春を享受していた頃は、下請けや取引先に高圧的な態度が顕著だったと何かで読んだ記憶がある。それは、競合他社に先駆けていち早く液晶に特化し、市場で優位なポジョションを獲得した自信の表れであったと思われる。
もはや液晶トップの座は揺るぎない、そう思っていたのは間違いないと想像する。なにしろ人間は、案外自惚れやすからだ。ところが、そんな自信に満ちていたはずのシャープの液晶は、あっという間に韓国サムソンなどに追いつかれ、追い越されてしまった。優位だったはずの市場で何かが起きていた。
その要因は、主に内部にあったと思われる。「選択と集中」で成功したシャープは、それに固執していた。いわば、成功体験が染み付いてそれに縋っていた。まだ、いけるはずだと。そして、投資が足りないとばかりに莫大な費用を掛けて液晶工場を増設していく。それが、衰退の原因とは知らずにである。
「後悔の念、先に立たず」とはよく言ったもんだ。
経営トップの判断が、いかに企業の命運を分けるか。それをまるで絵に描いたような出来事を演じているのがシャープである。これは、ほぼ間違いないと思うがいかに。シャープはその技術力の高さを売りにしていた。しかし、それを反故にして、かつマイナスにしてしまった経営トップの罪は重いというしかない。
それでも旧経営陣の一部は、どこぞの企業のトップに返り咲いたようだ。一方では社員たちは大規模なリストラの嵐に見舞われている。いやはやである。
しかし、経営陣たちだけでなく、社員たちもかつては栄華の一部を享受したはずだ。そして、前述したように下請け等に無理難題を押し付けて当然のような態度を取っていたに違いない。なお、あくまで想像である。あしからず。
したがって、会社一丸で衰退に向かって一直線であったのは否めない。例え、下請けや取引先、外部有識者が正論を言ったところで、そんなのは何処吹く風のごとくであったと思われる。そうなると、もはや市場の動向も正確には判断できなくなってくる。
自社の都合のいい様に解釈してファンタジーの世界に浸かるという具合だ。こうなると、もはや崩壊に向かってまっしぐらとなるしかない。たぶん。シャープが崩壊するとは決まっていないが、そうなる可能性は高いと言われている。
現経営陣及び社員の皆様の今後の健闘を祈ります。
シャープの再建計画に不安を抱く社員たち「何が本当なのか」(ライブドア)
実は当方も、大企業の衰退を身近で経験していた
■ノーリスク、ハイリターン!?そんな無茶な…
当方は90年代に某大手企業にいたことがある。中途で入社した当時は、最盛期にあった。とはいえ売上4000億円を少し超えたばかりであった。したがって、シャープやソニーなどと比べようはないが、一応は大企業の末端レベルにはなんとか入っていたはずだ。
その企業はゲーム&アミューズメントの会社であった。いけいけどんどんの会社として一部では有名であり、当時の社長の存在感は、業界では群を抜いたものであった。ところが、90年代半ばから衰退が始まっていた。
鳴りもの入りで始まったテーマパーク事業はすでに後退期に入っていた。バブル崩壊は遅れてやってきたのである。さらに、海外アミューズメント事業も火の車状態に突入していた。(後に撤退)
そして、家庭用ゲーム機事業では、ソニープレステ優位の展開が見るに明らかとなっていた。そんな状態でありながら、何故か幹部及び社員には危機感が感じられなかった。それどころか、相変わらず業界のリーダーとしての奢りが見て取れた。
家庭用ゲームでは、ソニーがすでにトップとなろうとしていた。しかし、それでもなおアミューズメントでナンバーワンであることが、見る目を曇らせていたか。
当方はアミューズメントに在籍していた。当時は、テーマパーク企画者として入社したはずだったが、前述したように後退期にあったことですぐに新規事業の部署に飛ばされた。そして、そのときに感じたのが「これは、あかんかもしれんね」という思いであった。それが、まさか本当になるとは思っていなかったが..。
何があかんか(何故か関西弁)といえば、とにかく雰囲気が役所のようであった。(ちなみに役所に勤めたことはない)言葉を変えれば、とても創造性や楽しさとは縁遠い職場環境であった。
数字を管理するのが優先されて、創造性をもって何事かを成すという風土とは思えなかった。当時の社長は創造性を重んじたように思うが、なんせそれに従う幹部はみな数字に追われていた。
とにかく数字、数字と聞かされたように記憶がある。幹部たちは、揃って何かを生み出すことより、現在の数字をいかに良く見せるかに苦心していた。
当然のように新たな取り組みには、消極的となり、例え費用を出したとしても微々たるものだった。あとの費用は、なんとか会社の暖簾を使って調達せよと言われたようなもんである。まるで、反社勢力の一員のように。
いま思えば、衰退企業にはいくつか共通する出来事があると思われる。それは、中間幹部(代表的には部長)の無能さである。(これ言っていいんかい?)
何故そうなるかといえば、事業トップの幹部が自らの保身のために意のままとなる中間幹部を抜擢するからに他ならない。抜擢された中間幹部は、事業トップに忠誠を誓う。まるで、どこかのなんとか組みたいに。
そして、その中間幹部が何をしていたか、当方の記憶では計数の把握には多少優れていたが、普段は人差し指でパソコンを打つか、扇子を手にトランプ、麻雀ゲームなどをしていた。いやはや、時代が昭和にもどったように感じていた。(いや昭和に失礼か)
要するに、何かを生み出すには不適な人材が出世していた。何を隠そう、当方のいた新規事業でもおなじくであった。新規事業とは、それこそ創造性が問われる。そんな部署であるが、実は事業トップは何もするなといわんばかりであった。
何故なら、新たな費用が発生することから、数字が悪くなる可能性があったからだ。したがって、微々たる費用で新規事業を興すという難題が課せられていた。そこで、当方は広告会社で培った企画書をさんざん作っては提案した。その多くは費用の持ち出しは、ほぼ0で協力会社に負担を押し付けるものだった。
これなど、上記したシャープなどの現場でもきっと行われた可能性がある。
いわば、大企業の暖簾を活かした新規事業であった。ただし、リスクは少なく、うまくいけばリターンは大きいというしろものだった。なんのことはない、当方も奢っていたうちの一人であったと言ってもいいだろう。(現在は、反省していますが…)
そんなことで、なんとか中間幹部を取りなして事業をしていた。そこそこ成果を上げた段階で、自社リスク100%で事業(実は微々たるもの)を起こす提案をした。それが受け入れられて、周囲の不安をよそにさっさと立ち上げていた。
立ち上げ費用を少なくすれば、意外とすんなりと受け入れられるのが分かっていたからだ。そして当方は、意外とコストカッターに長けていた。(その影で無理難題を押し付けられた会社や人がいたのは事実である)
そんなこんなで、なんとか自社リスク100%での事業に辿り着いた。その案件は意外にも、高収益を叩きだした。もっとも全体からみれば微々たるものだった。さあこれからは、予算も多くなるかと思われたがそうはならなかった。予算なんかないとばかりに減価償却を急げと中間幹部は言っていた。
実際、当方はその幹部に来月は、○千万達成せよと言われたぐらいだ。
いやはや、これにはもう何もするなと言っているに等しいと思った。それから1年ほどすると、会社がいよいよやばいかもとなっていた。家庭用ゲーム機が思った以上に不振だったからである。
そうなると事業トップが本領を発揮していた。元から新規事業など否定的な上に費用を切り詰めることにしか興味がないからだ。(かなり極論であるが)
あっという間に新規事業はストップし、アミューズメントのディベロッパー事業部なども新規出店の取りやめ、人員削減などに動き始めていた。いよいよリストラの開始であった。この後、この会社はパチンコ関連会社に吸収されて、ほぼ沈んだままである。(失礼ながら、そうとしか思えない)
予定より長々と書いてしまった。まだ先を予定しているのでこれぐらいで切り上げたい。とにかく、衰退する企業にはどこかでターニングポイントがあり、それを活かすも殺すも経営幹部次第ということができるだろう。
フジフィルムを見れば、それがよく分かる。自社の資産をよく理解していれば、その活用の仕方も見えてくる。また、そこには決断力も欠かせない。まったく違う事業の会社として生まれ変わるには相当の覚悟が必要と思われる。
大企業に入社したからと、安穏とするばかりではもう生き残れないだろう。変わらないことを切望する社員が多いほどその会社の存続は難しいかもしれない。
なお、繰り返しますが、当方が立ち上げた事業はほんとに微々たるものでした。個人的には事業というには、恥ずかしい思いがしています。ついでにいえば、その先にこんどは恥ずかしくないことを企画していましたが、実現には至りませんでした。
予定よりずいぶんと長くなったので、このテーマは次回に続きます。
次回予告/以下のリンク先につづく!!
■社会|企業の栄枯盛衰 凋落する大企業と躍進する異端企業(その2/躍進篇)
…………
日本の大企業では、経営が不振になってくるとまず社員をリストラする。それが経営手法であるかのようにである。しかし一番の処方箋は、経営幹部を首にすること、そして中間幹部を総とっかえすればいい、などと思います。
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