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■社会|企業の栄枯盛衰 凋落する大企業と躍進する異端企業(その2/躍進篇)

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躍進する異端企業、ドン・キホーテ、ニトリを考察する

ドン・キホーテ バッタもんが、大手流通を脅かす

■ドンキ創業者、業績が好調の中で勇退を発表する

ドン・キホーテといえば、日本ではかの有名な名作ではなく、ドン、ドン、ドン、ドンキホーテというテーマ曲?で有名な激安の殿堂「ドン・キホーテ」に他ならない。

この通称ドンキは、80年代に練馬に「泥棒市場」というバッタもんを扱うお店がスタートらしい。その後、府中に「ドンキホーテ」の一号店をオープンしている。当方は、ドンキをあまり利用していないが、それでも何度かは訪れている。

はじめて訪れたときは、アマゾン陳列と迷路のような回遊導線に「なんじゃこれは?」と思ったのは間違いない。とにかく、大手流通では考えられない品揃えと陳列が特徴であった。しかも安いことが売りであった。

直近の売上高では、6000億円を超えているようである。ここまで成長するとは、当方などは正直思わなかった。この様子だと1兆円規模までいきそうである。安売りだけなら、他にもあったがドンキだけが大企業の仲間入りを果たした。

創業者である安田会長は、すでに引退を発表している。それも、すべての役職からである。最近の大企業で行われたトップ交代劇が、事業経営の失敗を問われた結果であるのに対し、ドンキ安田氏は上り坂で引退だそうである。

この差は、実に大きいと思われる。安田氏は投資家としても有名であるから、今後はそちらに注力するのかもしれない。

当方がこれまで見た経営トップは、その地位にいつまでもすがり付いていたいという思いがひしひしと感じられたが、それとはだいぶ異なっているようだ。やはりサラリーマン経営者ではなく、創業者であるせいか?。その実態は知る由もないが…。(大塚家具の創業者とはだいぶ違うようだが)

ドンキと大手流通の違いとは

好調なドンキと違って、苦境にあるのが大手流通である。その代表格がイオンであるのは間違いないだろう。ちなみにセブン&ワイは、コンビニは好調だが、ヨーカドーがイオンとおなじ状態にあるようだ。

ドンキと大手流通は、業種はおなじでも業態(売り方)が違う。したがって同じ土俵で比較するのはどうかと思うが、しかし扱う商品に重なるところもある。そこで、具体的にどこがどう違っているかを表してみたい。

<ドン・キホーテ>
業態:ディスカウント
価格:当然安さが売り
品揃え:食品、衣料品、インテリア、家電、その他雑貨、高級ブランド品まで
店内空間:狭い通路が迷路のごとく広がる。回遊導線が特徴
    :所狭しと積まれた商品は取るのも困難な場合もある。アマゾン陳列。
サービス:顧客満足第一主義(だったと思う)
営業時間:10:00〜深夜(24時間営業もあり)

<大手流通小売り>
業態:スーパー、GMS
価格:若干安いだけ
品揃え:売れ筋が中心、最近ではPBが中心となりつつある。
店内空間:合理化、効率化が図られている。特性はないに等しいか。
    :ローコストオペレーション。どこに行ってもおなじ。
サービス:ポイントカードなど、やたらと自社カードに特典を付ける。
営業時間:基本10:00〜20:00

上記内容を少し補足してみると、以下の様になります。

ドンキは、とにかく店内空間に詰められるだけ商品を押し込んでいる。そこには、あまり必要性がないものも堂々と陳列されていて興味をそそる。迷路状の導線は、顧客の滞在時間を長くする役割をもたらして、ついで買いを促進する効果がありそうだ。(実際、それを狙ったと創業者は語っている)

このようにドンキは既存の小売りとは違って、アミューズメントの楽しさが味わえる業態となっているのは、間違いない。また、ここには既存小売りの常識は無い。

一方、既存の大手流通は、合理性や効率性を重んじていると思われる。その証拠に出来る限りローコストで運営することに注力しているようだ。そして、商品も売れ筋に絞っているのは間違いない。したがって、買い物に楽しさはなにひとつない。

これは、まさに「流通小売りのダイエー化」と言ってもいいだろう。ダイエーの末期には、「なんでもあるけど、欲しいものが何ひとつない」と言われていた。

とにかく大手流通の店舗では、効率よく大量の商品をさばきたいという思いしか伝わってこない。そこが、ドンキが顧客に伝えるものと大きく違っている。

断っておきますが、ドンキの回し者ではけっしてありません。買い物の回数でいえば、既存の大手流通のほうが多いはずです。なお、最近では大手流通は避けて、地元に根ざしたスーパーなどに行くようにしています。

何故ならば、大手流通のPBにうんざりしているからです。地方ブランドはおろか、ナショナルブランドまで駆逐するPBには、その理由が透けて見えるからです。品揃えの効率化と利益の最大化にあるのは、誰でも分かることです。

ちなみに、最近イオンはそのPBの削減に着手すると発表した。

ドンキの勢いがこのまま続くかどうか分かりませんが、いずれは天井に近づくはずです。そのときどういう変化を見せるか、そこがターニングポイントになると思われます。そのときどんな経営判断を下すか見物です。

とはいえ、いましばらくはこのまま好調を維持するのではないでしょうか。中国からの顧客にも好評だと言われるので、一段と売上を伸ばすかもしれません。

そういえば、かつて家電販売で一世を風靡したヤマダ電気が、いま失速真っ最中だそうです。やはり、売上1兆円を超えたあたりで曲がり角がくるのか、それは知る由もありませんが…。あしからず。

ドン・キホーテ 小売りの概念壊した「暖簾」と「トンネル」(ポスト7)

これは遺憾ね!
ドンキで中国人店員が客をボコボコに 打撲で全治10日の診断

ニトリ 家具の製造小売業(SPA)で躍進する

■IKEAを猛追するか、ニトリの異端経営とは

製造小売業とは、日本ではユニクロが有名である。元はファッション、いわゆるアパレル関連から発祥したと思われる事業手法ではなかったか。小売業は、通常はどこかのメーカーや問屋を通じて商品を仕入れて販売する。この場合、仕入れ値はどんなに交渉してもたかが知れている。(バッタもんは別)

通常、6掛けがベースとなって交渉で5掛けぐらいまで落とす事ができるか。ただし、それ以上は低くできないと思われる。したがって、粗利を増やしたければ自社で商品開発するしかない。しかし、それにはリスクが伴う。

それでも、一部のアパレル企業はそれに挑戦した。とくに海外ではGAP、H&M、ZARAなどが先攻して市場に風穴を開けていた。日本でもユニクロなどが後へと続いて、いまや当たり前の存在となった。アパレル関連では、このSPA(製造小売)、ブランド(高級)、セレクト(独自の品揃え)という3形態に集約されつつある。

<SPA>
1986年GAPが自らを定義した「speciality store retailer of private label apparel」という用語は、訳してみると「独自のブランドをもちそれに特化した専門店を営む衣料品販売業」、衣料品業界で販売から商品企画までを手がける、目新しい業態を指すものであった。このGAPの成功を見て、「SPA」、あるいはその訳語である「製造小売業」という用語、業態が普及するようになった。

製造小売業は、価格設定権を獲得したことで通常メーカー商品より安く提供する自由を得たのである。1点の利益は少なくても大量に売れれば莫大な利益になる。要するに、仕入れ販売と違って利益計画も自由な設計にすることができた。

現在、家具販売で好調な「ニトリ」は、この製造小売業態を日本で家具販売に取り入れた最初の企業ではないか。(たぶん、そうだと思うが)

家具の製造は、アパレルほどには製造工程が簡単ではないし、とにかく場所も広さが必要だと思われる。品質の維持・管理も並大抵ではないと想像する。しかし、ニトリはそれをやり遂げてしまった。

現在、安価で且つお洒落な家具を販売することで、他を圧倒しているのはある意味では当然の結果であろう。海外には、IKEA(家具SPAの先進企業)という競合があるが、それも学ぶべき対象および目標にはなれど、対立するほどではないようだ。いまは独自の路線をいくことに注力していると思われる。

ニトリの躍進を支えているのは、人材育成に時間をかけているからだそうだ。ニトリの海外工場では、その生産性や品質、維持管理がトヨタ並みと言われている。しかし、そこまでくるには多大な時間と徹底したやり遂げる精神が背景にあったと思われる。それが簡単にできれば他企業もすぐに追随しているはずだ。

しかし、ニトリの一人勝ちを見るとそう簡単なことではなさそうである。

ニトリ「異端経営」の原点 台湾製家具への苦情が現在のモデルを生む(ライブドア)

連続増収増益要因として、人材育成の仕組みも見逃せない。結論からいえば、「企業としてなすべき人材育成を、当然のごとく行っている」のだ。

ニトリHDの経営としては、自社の将来像から成長計画を作る「逆算の経営」が有名だ。

例えば同社は72年に「日本一の家具小売業」の将来像を描き、「30年で100店・売上高1000億円」の超長期経営目標を立てたといわれている。それを長期、中期、短期の経営計画に落とし込み、この目標を03年に1年遅れで達成している。

現在は「32年に3000店・3兆円」の目標を立て「家具小売業世界一」を目指している。同社はこの逆算の経営を、人材育成にも応用しているのだ。

大企業は、日本の元気に貢献しているか。
大企業の幹部は契約制にすべき、結果が出せなければすぐ首だ!

現在、一部の大企業ではリストラは当たり前となっている。シャープ、ソニーは言うに及ばず、東芝も不透明な会計処理の結果、そうなる日も近いかもしれない。

人材の育成どころか、使い捨てが行われているのが大企業ではないか。人材をコストとして、いかにそれを低く抑えるか。数字の上で利益を達成するには、そこを弄るのが最も容易いだろう。

かつて、ソニーの元社長出井氏は社員の99%?を非正規にしなければ企業は成り立たないと言ったとか。この言い分には、どこか変だと思っていた。それは、社員=消費者でもあることを忘れちゃいないか、ということだ。

日本の会社がすべて出井氏が言う様にしたら、日本はまさに沈没するだろう。何故なら、誰も必要最低限以外のモノは買わなくなるからだ。当方が思うには、経営幹部こそ契約制にして結果が出せなければ、そっこく首にすべきと思うがいかに。

現在の日本を多少なりとも元気にする企業は、ソニーでもシャープでもない。これは言うまでもない。ドン・キホーテやニトリは、少なくとも人材の登用と育成という部分では前述した企業とは真逆にある。したがって多少なりとも日本の元気に貢献しているだろうと思われる。

ちなみに、ドンキではパート、アルバイトから幹部になった人もいると聞いたことがある。これは、ソニーに望むべきもないことは明らかだ。

………………
追記:ドン・キホーテやニトリがこのままの好調を維持するかは、誰にも分からないだろう。しかし、ソニーやシャープの二の舞を踏むことなく、成長して欲しいと願うばかりである。とにかく、凋落した企業の例は数多くあるのに、何故かそれとおなじ轍を踏む企業が多いのは不思議である。

なおドンキについては、安田会長の投資案件や商品の仕入れ先との関係などに善からぬ噂もあるが、その真相は分かりません。このテーマとは直接関係ないので、そこには触れていません。興味のある方はネットで調べてください。

商業界 2015年 03 月号 (大型店と生きる/安売りしない商品、品揃え、見せ方/中小企業のSNS活用術)[雑誌]
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