人の迷惑を省みない奴らには鉄槌をくだすぜ!
なんとなく判るなーと思うブラックコメディ
「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、冴えない中年男子とちょっと不思議ちゃんの10代女子がコンビを組んで、高慢で自分本位の勘違いな奴らを片っ端から殺しまくっていくという、とんでもない映画である。
主人公は、離婚していて妻の元にいる子供にも疎んじられている。しかも、会社ではちょっとした行き違いから解雇されてしまう。さらに、医者からはもはや回復の見込みの無い病気であると告げられる。
落胆の極みにある主人公は、家でテレビを観ながらそこに流れる低俗な内容にイライラが高じていくばかりだった。アイドル発掘番組では、高慢な審査員が障害者の男性の歌に罵声を浴びせて笑いを取っていた。
また、ある討論番組では司会者が、自分勝手な思い込みを視聴者に押し付けていた。そして、ある金持ちの娘は、自らを人気者であると公言しつつ誕生パーティーの様子をテレビに晒していた。そこでは誕生祝いのクルマが気に入らずにキャディラックでなくては嫌だと両親に駄々を捏ねていた。
そんな低俗過ぎるテレビにうんざりしていたが、一歩外に出れば公共の場でルールを守らない自分本位の身勝手な奴らばかりでさらにうんざりであった。
そのようなうんざりする事柄と、自らの身の上に起きた焦燥する出来事とが混ざり合った結果、ついに主人公は決意する。
もう我慢がならない、「ぶち殺してやる」と。
高慢ちきで、身勝手で、自分本位な奴らを片っ端にやってやる。そう決意した主人公は駐車ルールを守らない隣人の黄色いムスタングに乗り込んで走り出していた。隣人はいつも主人公のクルマに隙間無く駐車していた。主人公はそれをいつもぐっと堪えていたがついに爆発したのであった。
ムスタングで乗り付けたのはテレビに出ていた金持ち娘が通うハイスクールであった。主人公は、キャディラックに乗って登校してきた勘違い娘を目がけて躊躇無く銃をぶっ放していた。勘違い娘はあっけなくあの世往きとなった。
騒然とするなかで、その行為に喝采を叫ぶ少女がいた。それが何故か、主人公とおなじ思いを抱いて日々悶々とする10代の不思議ちゃん少女であった。
少女は、主人公に付きまとい同行を願い出ていた。はじめは迷惑に感じていた主人公は、いつしか意をおなじくする少女を受け入れていた。
そして、中年男子と10代少女のコンビ二人による、高慢で勘違いな奴らをやっつける旅が始まるのであった。黄色いムスタングは高慢で勘違いな奴らを求めてハイウェイをかっとばしていく、そしてその行く末には果たして何が…。
生きることに疲弊し投げやりになった中年男と女子高生が、世にはびこるどうしようもない人間を抹殺していくロードムービー。社会に巣食う許せない連中を退治する主人公たちの姿をブラックユーモアとバイオレンス描写満載で描き、過激な内容から賛否両論を巻き起こした。(YouTube解説より)
とにかく嫌みたっぷりなところが痛快である
主人公たちはなんの躊躇もなく殺しまくるが、そこはコメディであるからあまりそれを深刻に感じることはない。それよりも、殺される勘違いな奴らの描き方が嫌みたっぷりなだけにむしろ痛快でさえある。
普通の映画であれば、殺人等を描く場合は葛藤があり躊躇した末にそれを実行するが、この映画の場合はなんの躊躇も無く、感情の溜めを作る事さえない。勘違いな奴らが出てきたなと思うと、すぐに殺されている。
主人公たちは、銃の規制法案には反対だと言っている。これにはブラックな皮肉が込められている。とにかく、かれらは殺しまくっているからだ。
アメリカの銃社会、格差拡大、金儲け主義等の問題が背景にあるが、それはけっしてアメリカだけのものではない。マスメディアのやっていることは日本でも似た様なものであるし、公共や日常の場でのルール違反等もしかりである。
まじめで、まっとうな生活をする普通の人々ばかりが損をしている。そんな苛立ちが、そこかしこに垣間見えてくる。うがち過ぎかもしれないが、いつなんどきこれが現実のものとなっても不思議ではない。これは病んだ社会がもたらす未来の姿かもしれない。いや、アメリカではすでに現実かも。
とにかくコメディとはいえ、そこはブラック故の面目躍如の作品といえる。日本の未来がアメリカの現実を真似ることが無い様にと切に願うばかりである。
<ゴッド・ブレス・アメリカ/ストーリー概要>
人生にうんざりするフランクはある日、元妻と娘が自分から完全に離れて行ったうえ、誤解からセクハラで解雇され、さらに医師からは脳腫瘍で余命が短いと宣告された。
拳銃自殺をしようかと考えていたフランクだったが、わがままな少女クロエが出演するリアリティ番組を目にした途端考えを変え、隣人の車を盗んで番組の撮影現場へ向かい、クロエを手錠で拘束したうえで射殺した。
その様子を、同じく人生にうんざりしていた女子高生・ロキシーが目撃し、興奮した状態でフランクの後を追った。そして彼女はモーテルで我に返り再び自殺しようとしていたフランクに、新たなる殺人を持ちかけた。
ゴッド・ブレス・アメリカ|God Bless America
監 督:ボブキャット・ゴールドスウェイト
出演者:ジョエル・マーレイ
:タラ・ライン・バー
公 開:2012年
上映時間:104分
ストーリー参考:ウィキペディアより
追記:ちなみに、この映画はネットフリックスで観ました。なんの期待もしていませんでしたが、意外と楽しく観ることができました。また、「タクシードライバー」にどこか共通するものがある様に感じました。
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