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■社会|#Me Tooはどこまで拡がる ハリウッド伝統の寝椅子方式は終焉するか

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悪しき伝統を告発した反セクハラの波

アメリカでは、ごく普通にセクハラが行われていた

 ハリウッドの大物プロデューサー氏が、長年セクハラや性的暴行を繰り返していたことが暴露されてしまった。さらに周囲にいた多くの関係者も、それを知りながらいわば黙認していたことが、おなじく明らかになっている。

 大物プロデューサー氏に関していえば、あのタランティーノ監督もセクハラを知りながら、見て見ぬふりをしていたことを告白し、謝罪している。なにしろ、50人以上からセクハラを告白されているから、その悪さにもほどがある。

 タランティーノ監督は、知らぬふりをしたことを謝罪したが、その他多くの有名人は知らなかった、といまでもしらを切っているようだ。

大物プロデューサー=ハーヴィー・ワインスタイン
映画製作会社「ミラマックス」「ワインスタインカンパニー」の創立者、数々の作品を製作し、アカデミー賞の常連となる。タランティーノ監督の「パルプフィクション」のヒットを足がかりに、その後も多くの名作を手がけている。


引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Harvey_Weinstein_2011_Shankbone.JPG

#Me Tooの波がはじまる
 セクハラに関していえば、大物プロデューサーの前には、シリコンバレーの企業や、ニューステレビ局のトップ、ウーバーのおなじくトップなどが、告発されて辞職するなどの騒動があったばかりだった。

シリコンヴァレーに蔓延するセクハラと差別という“病”
シリコンヴァレーでは、スタートアップから老舗企業までセクハラと差別がはびこっている。被害者がSNSで告発し、メディアが騒ぎ、人事部が形だけの“調査”を行い、業界の体質は変わらないというお決まりのストーリー。

 2017年10月はじめ、ニューヨークタイムズが、大物プロデューサーのセクハラ疑惑を大々的に報じたことから、反セクハラの勢いは堰を切って拡がり始めた。

ニューヨークタイムズのスクープ
ニューヨークタイムズの記者が、ワインスタインのセクハラの噂を聞きつけて調べ始めると、銀行口座に多くの不審な金の流れがあることが判った。それはセクハラの口止め料であり、しかも会社の口座から出されていた。

 女優のアリッサ・ミラノさんは、10月15日に、同様の被害を受けたことのある女性たちに「Me Too」とツイッターで呼びかけるように訴えた。これを機に、多くの女優やタレントが、「Me Too」の呼びかけに応えている。

 その拡がりは、その後も続き、反セクハラの流れはもう止めようがないほどになっている。積年の思いがどれだけ深かったかが、そこに現れているようだ。

 日本でも、その姿勢に同調する動きはあるが、まだ拡がりを見せていない。きっと日本の権力者たちは、なんとかなると思っているはずだ。しかし、アメリカの今後の動向次第で、日本もおなじことになるはずだ。

 なぜなら、日本はアメリカの動向を周回遅れで追っているからだ。

ハリウッドのセクハラ騒動を機に、SNSという“武器”を手にした女性たちが声を上げ始めた
シリコンヴァレーやハリウッドの女性たちが、セクハラ被害者として次々と名乗り出ている。ソーシャルメディアのおかげで女性たちの声が大きく響き始めている現状を、いま改めて総括する。

セクハラを告発された有名人

 ワインスタインのセクハラ騒動を機に、堰を切ったように多くの有名人がセクハラで告発されている。その勢いは、もはや誰にも止めようがないほどだ。ハリウッドならびに企業は、なんらかの処置を施す必要があるだろう。

・ハーヴェイ・ワインスタイン(プロデューサー)

・ケヴィン・スペイシー(俳優):「セブン」「アメリカン・ビューティー」「ベイビー・ドライバー」

・ルイス・C・K(コメディアン・俳優):「ブルージャスミン」「アメリカン・ハッスル」

・エド・ウェストウィック(俳優):「ゴシップガール」『J・エドガー』

・ブレット・ラトナー(映画監督)

・ダスティン・ホフマン(俳優)

・トラビス・カラニック(配車大手ウーバーCEO)

・ロジャー・エイルズ(FOXニュースCEO)

・ロジャー・エイルズ(人気キャスター)

以上、ほんの一部ですが、その他にもセクハラ告発された有名人が多数います。

セクハラを告白した女優たち

・アリッサ・ミラノ

・アシュレイ・ジャッド

・グウィネス・パルトロー

・アンジェリーナ・ジョリー

・ローズ・マッゴーワン

・ブレイク・ライヴリー

・ナターシャ・ヘンストリッジ

その他、これまでに50人以上いるといわれている。まだまだ増えそうだ。

ハリウッドの悪しき慣習、キャスティングカウチ

悪名高きキャスティングカウチ
「キャスティングカウチ」とは、端的にいえば、「配役を決めるための寝椅子方式」ということができる。要するに、配役の決定権を持つ映画会社幹部や監督などが、女優を事務所のソファーに押し倒すことである。

 このキャスティングカウチというものは、1914年頃から始まったといわれる。まだ映画の草創期であり、無声映画の時代だ。やがて、映画製作はハリウッドが中心となる。そして各映画会社はそれを定番方式に採用し、現在に至っている。

 最近のセクハラ騒動を見るまでもなく、その歴史は実に古く、100年以上にわたって続く悪しき慣習となっていたようだ。(冒頭動画にも解説があり)

 ちなみに日本でも似たようなものがある。それは「枕営業」といわれるものだ。芸能界で仕事を得るために業界の権力者とベッドインする、というものだ。どれだけ効果があるのか、それは知る由もないが、古くからある慣習といわれる。

 しかし、スターは本当にそこから生まれたのだろうか。そう疑問に思わざるをえないが、実際はどーなんだろうか、そこが気にかかる。

 アメリカでは、「#Me Too」の拡がりに端を発し、エンターティメント業界をはじめ、実業の世界でもセクハラが大きく注目されたことで、ついにキャスティングカウチ(寝椅子方式)の歴史に終焉が訪れるかもしれない。

 今後はメディアも注視していくし、なにより女優などの当事者が、#Me Tooすることで、セクハラがすぐにバレてしまう。したがって、これからハリウッドだけでなく、アメリカ全体における動向が注目されるのは間違いないだろう。

<キャスティングカウチの一例>
 かつて子役スターとして数々の映画に出演したシャーリー・テンプルは、大人に成長するにつれて役が付かなくなっていた。そんなとき、映画会社の幹部は彼女に次のように言い寄っていた。

 MGMの幹部セルズニック(のちに「風と共に去りぬ」をプロデュース)は、「若草物語」の主役の座をちらつかせて、テンプルを事務所に連れ込んだ。そして、「ま、これは、ハリウッドという車輪を円滑に走らせるための油のようなものだよ」とテンプルに言ったそうだ。

 それが何を意味していたかは、いわずもがなである。ちなみに、キャスティングカウチをハリウッドに導入したのはセルズニックの父親だった。親子共々、それを実践していた訳である。

 テンプルは、その誘惑を毅然と拒絶した。

 当然「若草物語」の主役の話は消えてなくなった。それから数年後の1950年、テンプルは22歳で映画界を引退し、その後、知名度を活かして政治の世界に入り、政府関係の要職や国連代表などを務めている。

ハリウッド幻影工場―スキャンダルと伝説のメッカ (カリフォルニア・オデッセイ)
カリフォルニアの地域性、セレブリティ(有名人)文化という視点から描く、新ハリウッド映画論。砂漠の映画帝国はいかにしてつくられたか。
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