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■社会|新国立競技場、いよいよザハ案を廃棄とするか!?

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建設会社もさじを投げたか、ザハ氏と契約解除で検討中

現行案では建設費が高騰するばかりでどうにもならない

■新国立競技場の見直し問題で、ザハ・ハディド氏との契約解除を検討中!

6月5日、文部科学省などが、新国立競技場のデザイン監修者であるザハ・ハディド氏との契約解除を検討していることが明らかになった。現行案(コンペ案を修正)を再修正するようにザハ氏の事務所に要求しており、それが無理であれば解除する方向で調整しているようだ。

それは、問題となっている橋桁状のアーチ構造を取りやめて別の案を示せと言っているに等しい。あのアーチこそザハ案の特徴であるから、それを無くすということはそのデザインを否定することになる。当然、ザハ氏はそれを承諾するとは思えないし、またアーチ構造を取っ払ってまでその案にこだわる必要も無いだろう。

なんだかんだと迷走していたが、やはり建設費が思うように削減できなかったのではないか。たぶん建設会社は、建築構造の難しさだけでなく、円安に伴う建築資材費、作業員の人件費などの高騰を根拠に、はっきりとした予算を組めなかったのではないかと想像する。とにかく東京はいま建築ラッシュである。

しかも、期間が限られているのも建設会社にとっては不利である。予算が青天井であれば、できるかもしれないという回答があっても不思議ではない。少し前では、予算削減が可能としていた文部科学省が、ここにきて契約解除を検討しているのが、それを物語っていると思われるがいかに。

とにかく、当初予算は1300億円であった。ザハ案がコンペで選ばれてからは、一気に3000億円に跳ね上がった。そして、修正した後でも1650億円といわれていた。ところが、最近ではやはり2500億円ぐらい掛かりそうだと、はっきりしない。やってみないと分からない、それが建設会社の正直なところだろう。

最近のオリンピックでのメインスタジアムの建設費は、ロンドンでは約700億円、北京では約650億円だそうである。新国立競技場は当初の1300億円でもずいぶんと高いが、その後の3000億円などは言うに及ばずである。

一部の関係者のあいだでは、国際コンペで選ばれたデザインを破棄するなどとんでもないという意見もある。しかし、実は国際コンペだろうと何だろうと業界の一部関係者で決まったことが、一般市民の反対で覆るというのは有りなのだそうだ。しかも、それが最近の国際コンペのトレンドにもなっているとか。

ザハ案を選んで予算が3000億円と出た段階で根本的な見直しをしていれば、いまさら混迷する必要もなかったはずだ。槇文彦氏をはじめとして多くの著名建築家が見直しを求めていたが、それに聞く耳を持たなかった文部科学省などの関係者の責任は重いと言わざるを得ない。

もちろん、コンペでザハ・ハディド案を選んだ責任者は誰だ!ということに尽きるのは言うまでもないところだ。

ザハ案を支持した関係者は、何を目論んでいたか。日本の歴史的文脈とはなんら関係のないデザインを唐突に持ってくることで、段階的に周囲の環境も改造しようとしたのではないか、公共の税金を私企業が吸い取るための新たな仕組みではなかったか、などと勘ぐりたくなる。

国際コンペ一位のデザインが、その後に見直された事例としてニューヨークの貿易センタービルの跡地開発がある。ご存知の様に9.11テロで崩壊した場所である。そのコンペで一位となった案が、ダニエル・リベスキンド氏のデザインであった。この人もザハ・ハディド氏とおなじく非対称建築(脱構築主義)を得意とする。

それが、以下の案である。しかし、これは見直されて却下された。その後は、槇文彦氏が設計を担当して完成している。ダニエル・リベスキンド氏の案が、何故却下されたか。それはそのデザインが崩壊を想起させたからに他ならない。

新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について12(森山高至)

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写真:ダニエル・リベスキンド グランドゼロ再開発のデザイン案
上のリンク先、森山高至ブログより

ニューヨークの関係者は、当初はその流行様式に惑わされてコンペ一位としたに違いない。しかし、それでもすぐに思い直して却下したのは慧眼であった。日本とは違って、その辺りの対処の仕方がずいぶんと違うようだ。

他にも、コンペ一位のデザインが見直しされた事例は多くある。最近では、イタリアの某美術館ファサード部分のデザインが物議を呼んでいるそうだ。なんと、そのデザインは、日本人の磯崎新氏であるとか。まだ、決着がついていないようだ。

冒頭写真:ザハ・ハディド 新国立競技場修正案の模型

槇文彦氏および関係者、代替案を提示する

■今がラストチャンス。今すぐに全力を挙げて代案をつくらなくてはならない

世界的建築家・槇文彦氏「日本チームで作る」…新国立設計(ライブドア)

槇文彦氏を中心としたグループが、新国立競技場の設計デザインの代替案を発表した。6月5日には、文部科学省が、ザハ氏との契約解除を検討していることも判明している。いよいよ動き出したと言ってもいいかもしれない。

はたして、この先どういう動きになるか注視していきたい。

槇氏、関係者の代替案資料(一部)は以下のとおりです。

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槇グループ代替案 コンセプト・イメージ

槇グループ資料

個人的見解として、ザハ・ハディド氏のデザインが斬新なのは間違いない。しかし、それを建てる場所への配慮が足りなかった。とにかくザハ氏は、環境要因を考慮していないと自ら語ったそうである。神宮のような歴史的地区でなく、新規に開発された場所ならそれでも良かったと思われるが。

いまの日本なら、台場とか、筑波とかならなんとか似合ったか。それにしても、コンペの諸条件(面積等)に適していなかったはずのデザインが一位となり、予算が大幅に超過しても修正案で済ましたのは納得がいかない。それはデザインを選定した関係者が面子を保つためだったとしか思えない。

国立競技場のデザインに斬新さが必要だったかどうか。いまさらであるが、これが問題の根幹ではないかと思う。オリンピックで世界に誇れる競技場をとか、先進国として恥ずかしくないデザインをとか、モニュメント性の強い見掛けだけの建物を造ってなんの意味があるか。それは所詮、自己満足でしかないだろう。

かつての旧ソ連やナチスの世の中ではない。外見でアピールするよりも中身が問われる時代にある。したがって、新国立競技場は競技者はもちろん、観客へも配慮した機能性こそ重視されるべきものだった。外観・デザインはシンプルで構わないし、目立たないことがもっと重要視されて良かったはずだ。

なんせ、日本はオリンピック誘致に関して「おもてなしの心」でアピールしたのだから、外見ばかりにこだわるのは寓の骨頂に違いない。


公開勉強会/森山高至「真国立競技場へ」
こちらの動画では、実に分かりやすく現状の問題点を解説しています。

……….
追記:新国立の関係者によるとJSC幹部が8日、ザハ事務所に対し、一部報道があった「契約解除」について事実無根と否定し、「キールアーチ」と呼ばれるアーチ型屋根を建設する現行案で進める方針を伝えた。(日刊スポーツ)

いやはや、本当か?。これでまた無駄な箱ものができる訳か。しかし、どーしても金が(運営費含めて)かかる施設が造りたいようだ。誰が責任を取るかだけははっきりさせてもらいたい!

6月22日、下村文科相は、現行案のまま計画を進める考えを強調していたが、「コストダウンを含めて調整できる部分があれば調整したい。間に合うかどうかについて専門担当者に調査をしてもらっている」と柔軟に対応していく考えを示した。(読売新聞)

やはり見直しか?、やれやれ。

新国立競技場、何が問題か: オリンピックの17日間と神宮の杜の100年

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