ユニクロのネット販促強化が、やたらと目立つが…
ブランドの底上げに失敗し、売上減少が続いていたユニクロが、このところやたらと販促強化策を打ち出している。ネットでは、連日のようにステマと寸分違わない、パプリシティが多く見られるようになっている。
やれ「ユニクロ流コーデ術」だとか、「全身ユニクロでこんなにオシャレに!」とか、「予算1万円!UNIQLOとGUだけでモテるメンズファッション」等々、これらは、たぶんペイドパブであるのは間違いないだろう。
ペイドパブ=メディアに費用を払い、記事や番組風なコンテンツ広告のこと。
媒体広告も程々に、もっと店頭を強化したらどうか
ユニクロが失速したのは、飽きられているにも関わらず値上げしたのが理由だったのは明白である。しかも、それをブランド価値の底上げに転化しようと目論んだのが、顧客には見透かされてしまった。
商品の実質的価値は、たいして変わることもなく価格だけ上げて、ブランドのポジションを変えようとしていた。
それが、顧客には通じる訳もなかったことは、いまさら言うまでもない。売上減少が目立ってからは、媒体広告の露出が増えているように思えるが、それは気のせいではないだろう。そこにはユニクロの焦りが露わとなっている。
ネットを含めた媒体広告に依存した販売強化策は、マーケティング費用の増加となって収益を圧迫させる可能性がある。
他人事ではあるが、大丈夫かいな、と思うしかない。資金が有り余っているから当面はなんの問題もないと思われるが、それよりも販促を強化しすぎて、却って顧客にそっぽを向かれるのではないか、と想像してしまう。
なぜなら、ネットでステマ流ペイドパブをやりすぎると、顧客創造をするどころか、それとは逆効果となる可能性が大のような気がするが。
個人的に感じるのは、ユニクロは媒体広告を減らして、店頭における販売方法を強化した方がよくないか、と思うばかりである。
なぜなら、ユニクロは店頭が面白くないからだ。在庫置場的な店内は、合理的、効率的であるかもしれないが、消費意欲を掻き立てるものは何ひとつもない。
VMDを強化し、同時にブランド価値を向上させる
VMDとは、「ビジュアル・マーチャンダイジング」のことであり、MDという商品政策を視覚的に店頭で表現することを意味している。
MD=端的には商品政策、品揃えなどを意味しているが、昨今では小売業のマーケティング全般という捉え方をされている。
ユニクロは、衣料品を低価格で販売する製造小売業である。したがって、コストを抑えて、収益を確保することが求められている。店頭では、大量の商品が山積されて、在庫置場としても機能しているのが明確である。
それは、在庫スペースの無駄を省き、大量陳列と販売を兼ねた合理的な手法であるのは間違いがない。低価格重視であれば、それもありであった。
ところが、ユニクロは価格を上げ、同時にブランドの価値向上を図った。
しかし、店頭は何も変わらなかった。低価格戦略そのままに、売り場と倉庫が兼用された陳列を継続していた。それでブランドの価値が向上すれば、実にたやすいと思うしかないが、案の定なんら価値向上は見られなかった。
前述したようにVMDとは、MDを視覚化したものである。MDの戦略が変われば、当然VMDも見直しが図られて然るべきである。
なぜなら、ブランドの価値向上を目指しても、これまでとおなじ売り場であれば、顧客にはそれが伝わらないからだ。
ブランド価値を高めていくには、丁寧に訴求していくに限る。それには、これまでの合理的、効率的手法を一部犠牲にする必要が求められる。
例えば、店内スペースの一番目立つ場所には、普通であれば、いま一番売り出したい商品を訴求する売り場とするのが常識である。ブランド価値の向上という戦略性を顧客に浸透させたいなら、このスペースを別の目的で活用すべきである。
VMDを構成する諸要素には、VP(ウインドーディスプレイ)、MP(商品陳列)、PP(棚上等のディスプレイ)などがある。
<素案:具体例として>
ユニクロのブランド価値を、VMDを中心にして向上させる方法を以下の様にご提案いたします。なお、具体性に欠いていますが、そこは想像力で補ってください。
ブランド価値をイメージさせていく。
店内の一番目立つ場所を、ブランドアピール=価値訴求のスペースとして生まれ変わらせる。そこでは、商品を置かずに別の何かでブランド価値を訴求していく。
例えば、そこでは、「ブランドの哲学、思想、理念」などが、カタチとなって表現されて顧客に向けてイメージ訴求される。
カラー、スタイリング、コーディネートなどを訴求テーマとする場合でも、あくまでブランド価値の向上を踏まえた表現が基本とされる。
商品の陳列は極端にいえばなくてもいい、それより重視するのは考え方にある。考え方をイメージにして伝えていく。一見するとわかりづらいが、それこそがブランドをさらなる高みに上げていく、と思われる。
ブランドの価値は、商品そのものも重要ではあるが、それを超えた別の何かが必要であるのは言うまでもない。価格訴求だけでなく、ロイヤリティを確保し続けるには、新鮮な驚きが欠かせないと思われます。
これまでと違うことをアピールするなら、過去と対比させればいい。したがって、反対のベクトルで訴求するのは理に適うはずである。
顧客が、店頭で「なんか変わったね」と感じてもらえることが、第一段階の目標である。そこが、ブランド価値向上のスタート地点である。
媒体広告やネット販促だけでは、ブランド価値は育まれない。店頭で直に接するイメージこそ大切であると考えます。少なくともリアル店舗がある限りは…。
<補足事項>
上記内容は、説明不足であるのは重々承知ですが、ユニクロのブランド向上案の一例として考えてみました。これを思いついたのは、少し前に「ユニクロの失速」を取り上げたとき、単に批判しただけであったことにあります。
そこで、提言を加えて改めて書いてみました。とくに裏付けはありません。
ブランドの向上に際し、「高尚と低俗」という二極を参考にしています。ブランドを高めるのは、高尚にあるのは言わずもがな、と思いますがいかに。
方向性が違うという人もいると思われますが、それも重々承知の上での一案となっています。ご了承ください。
冒頭写真;ユニクロ店頭のVP
写真中:イブ・クラインの作品
写真下:ボイスの作品
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