笑いがとまらない高級ブランド
バブルの恩恵は富裕層のみに
世界的な好景気?(バブル)を背景に、2017年度のラグジュアリーブランドは軒並み好決算だったようだ。その総売上高(ファッション以外も含む)が半端なくすごいことになっている。以下を参照ください。
「ルイ・ヴィトン」擁するLVMH2017年度売上高が5兆円、営業利益も1兆円突破
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON 以下、LVMH)の2017年12月通期決算は売上高が前期比13.3%増の426億3600万ユーロ(約5兆7558億円)、純利益も同28.8%増の51億2900万ユーロ(約6924億1500万円)と増収増益だった。営業利益は18.0%増の82億9300万ユーロ(約1兆1195億550万円)だった。勢い止まらぬケリング、17年度は4000億円の売り上げ増 「グッチ」は前期比42%増の8000億円
ケリング(KERING)の2017年12月通期決算は売上高が前期比24.9%増の154億7770万ユーロ(約2兆585億円)、純利益は同119.5%増の17億8560万ユーロ(約2374億円)で増収増益だった。
LVMH/モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン
LVMH/モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは、フランス・パリを本拠地とする世界最大のファッション流通企業体である。アパレル、時計・宝飾、酒類など60近くの高級ブランドを持つ、保有ブランド(一部)は以下のとおり。
<LVMH/アパレル・小物類>
・Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
・LOEWE(ロエベ)
・CELINE(セリーヌ)
・KENZO(ケンゾー)
・EMILIO PUCCI(エミリオ・プッチ)
・Berluti(ベルルッティ)
・Dior / Christian Dior(ディオール/クリスチャン・ディオール)
・FENDI(フェンディ)
・GIVENCHY(ジバンシー)
・Donna Karan(ダナ・キャラン)
・MARC JACOBS(マーク・ジェイコブス)
・Thomas Pink(トーマス・ピンク)
・StefanoBi(ステファノ・ビー)
・Nowness
<LVMH/化粧品・香水>
・Dior / Parfums Christian Dior(ディオール/パルファン・クリスチャン・ディオール)
・GUERLAIN(ゲラン)
・BeneFit(ベネフィット)
・LAFLACHERE(ラフラシェール)
・ACQUA DI PARMA(アックア・ディ・パルマ)、ほか
ケリング(KERING)
ケリング(KERING)は、フランスを本拠地とする流通企業体である。旧ピノーが名称を変更し現在に至る。主にファッション・宝飾品関連のブランドを保有している。保有ブランド(一部)は以下のとおり。
<ケリング/アパレル・小物類>
・アレキサンダー・マックイーン
・バレンシアガ
・ボッテガ・ヴェネタ
・ブリオーニ
・クリストファー・ケイン
・グッチ
・プーマ
・サン・ローラン
・ステラ・マッカートニー
・ボルコム
参考=ウィキペディアより
高級ブランドとバブルの関係式
上記したように、この2社グループだけでかなりの高級ブランドを保有している。この2社グループの好業績をみれば、他の高級ブランド(シャネルとか)もおなじような状況にあると想像される。
一般人は、ユニクロやザラ、H&Mのような安価なファストファッションにしか興味がない(必然的に)から、高級ブランドがこんなにも好業績なのは案外知らないかもしれない。とにかく、門外漢にはあにはからんやである。
なんで高級ブランドがこんなに好調なのか、といえばバブルと無関係ではないだろう。2017年後半に仮想通貨ビットコインは200万以上となったが、その恩恵に授かったのは、先行者利益を享受できた一部の富裕層なのは間違いない。
おなじく株高でも利益を上げたのは言うまでもない。そこで儲けた唸るほどの金が高級ブランドに流れたとしてもなんら不思議ではない。また、中国の富裕層による世界中で行われた爆買いもそれに加担したと思われる。
日本でもバブルといわれるが、80年代のバブルと違うのは、その恩恵は一部の富裕層に偏っているだけといわれる。その代表格が、不動産であるのは言うまでもない。東京などの大都会でのみ価格は高騰し、地方は置き去りのままである。
一般人にはあまり実感のない高級ブランドの好調さは、ある意味では格差の拡大が広がったことを意味している。それも半端なく広がりを見せているようだ。
高級ブランドの価値にけちをつけるつもりは毛頭ないが、なんだか中世にもどったような既視感を覚えてしまう。かつての王侯貴族と一般庶民のあいだには、はっきりとしたボーダーラインが引かれていた。
一般庶民がそのボーダーラインを超えるには、危険を顧みずに飛び込む必要があった。しかし、一方の既得権益を有する王侯貴族たちは、いわばなんの努力もなしに財産を増やすことが可能だった。(没落するものもいたが)
そして、そのあげくに起きたのが「フランス革命」や、「ロシア革命」であったのは言うまでもない。その後、王侯貴族は力を失くしたが、すぐに新しい既得権益者たちが現れた、それが資本家や、投資家という名の支配者であった。
資本家や投資家は、グローバル経済を推進し、お金の流れを複雑怪奇にし、そして儲けはタックスヘイブンへと蓄えた。いまの中国の隆盛も資本家や投資家などによって現在に至っているのは、これまた言うまでもない。
高級ブランドの好業績とは一見関係なさそうであるが、想像をたくましくするとその背景がなぜか気になる次第だ。
1920年代のアメリカでは、空前絶後の好景気(バブル)で浮かれまくったが、その後1929年に株が大暴落し、その大きな痛手は一般庶民にのし掛かった。
その一方で、大資本家たちは、逆に支配圏を大きくする機会を得ている。暴落した株を買いまくれば、市場の王となれるからだ。
例えば、英国の投資銀行家ロスチャイルドは、1815年の「ワーテルローの戦い」の際、英国の公債を一旦は売り、その後釣られて暴落した公債を今度は買い占めたそうだ。大儲けしたのは言うまでもない。(後世の創作とする説もある)
なぜか、現代に通じるものがありそうな気がしてならないがいかに。
高級ブランドの多くが本拠とするフランスは、失業率が高い(約10%)ことで有名だ。おなじく、英国でも労働者階級の疲弊が伝えられている。日本でも非正規という奴隷労働が定着しようとしている。
アメリカでは、国境に壁を建てようとしている。(これは関係ないか)
とにかく、ラグジュアリーブランドの好業績を支えているのは、いったいどこの誰なんだろうか、と不思議に思えてならないが。
それは単に持たざる者の愚痴なんだろうか。いやはや、と思うしかない。
バブルのあとには当然大暴落がある、上げるだけではたいして儲からないからだ。暴落してこそ儲けを最大化する機会となるからに他ならない。
ラグジュアリーブランドのいまを垣間見る
その創造性は唯一無二
なんだか、高級ブランドを否定するかのようなことを上記しましたが、あにはからんや、当方は高級ブランドの価値は認めています。
とくにその創造性には敬意を表します。それは、高級ブランドにある歴史と伝統だけでなく、いまでも進化しようとする姿勢にあります。
ヴィトンもグッチも、かつての保守的な古臭さはいまではまったくありません。むしろ先進性をブランドの売りにしようとするような趣にあります。
古臭いイメージにあったグッチが、先進性のあるブランドとなったのは、先代クリエイティブディレクターのトム・フォードによる功績が大きいはずです。
トム・フォードは、グッチを輝かしいブランドに生まれ変わらせたと言っても過言ではないでしょう。トム・フォードのグッチでの大成功が、その後の各高級ブランドに影響を与えたのは言うまでもないでしょう。
そして現在、LVMH、ケリングの両ファッショングループは、ともに自社の高級ブランドの創造性をクリエイティブディレクターに委ねています。
<参考/ブランドのクリエイティブディレクター>
・ヴィトン=マーク・ジェイコブス
・グッチ=アレッサンドロ・ミケーレ
・FENDI(フェンディ)=カール・ラガーフェルド
・シャネル=カール・ラガーフェルド
高級ブランドのクリエイティブディレクターは、たんにデザインをするだけでなく、シーズンごとのコンセプトを立案し、そして当然デザインをしたうえで、売り方やイメージの訴求にもアイデアを出し、現場に落とし込んでいく。
そのあたりの様子は、以下の映像作品から見て取れます。興味のある方はぜひご覧ください。たいへん興味深いものがあります。
高級ブランドのドキュメンタリー作品
サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ(上の動画)
カール・ラガーフェルド氏の最初のスケッチから、見事な商品となった服が、特定のお客様の手に渡るまでのオートクチュールの過程を描いた傑作ドキュメンタリー。魅惑的なクチュールハウスの世界の扉の向こう側はどうなっているのか!?愛情ある描写と緊迫した秘密主義の雰囲気の中、長年の秘伝の手法と携わる人々のドラマは必見!
フェンディbyカール・ラガーフェルド ~コレクション前夜
ファッション界のカリスマ、カール・ラガーフェルドがデザインするフェンディの秋・冬ミラノコレクションに密着!
マーク・ジェイコブス&ルイ・ヴィトン ~モード界の革命児~
ルイ・ヴィトンのさらなる飛躍を演出した、天才デザイナー、マーク・ジェイコブス。彼のアトリエに初めてカメラが潜入!デザイン・プロセスやコレクションに向けた舞台裏に迫った傑作ドキュメンタリー!
モダン・トラッドの英国紳士 ポール・スミス
ロンドン、パリ、東京と目まぐるしく活動するポールに密着取材!彼の人物像と生き様にフォーカスを当てたドキュメンタリー。いわゆる高級ブランドとは一線を画すその姿勢が大変興味深い。
なお、上記した映像作品は、アマゾン・プライムビデオで無料で見ることができます。(プライム会員になる必要あり)
紹介文引用:アマゾンより
ルイ・ヴィトンの法則―最強のブランド戦略
本書では商品生産、価格戦略、販売戦略、ブランド戦略などテーマ別に成功法則を解説。
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