映画「花様年華」 夢二のテーマ/梅林茂
もどかしくも、絶え間なく想いが募る
叶わぬ想いこそ美しい、それが「花様年華」のテーマである
愛する気持ちという他人には伺いしれぬ想いを、見事に映像化したのが「花様年華」という映画である。そのように個人的には思っているが、あくまで個人の感想である。これには、たぶん異論があるはずである。
しかし、今回は音楽がテーマであるので、その話はこれ以上しない。この「夢二のテーマ」は、鈴木清順監督の映画「夢二」のテーマ曲であった。
作曲は、梅林茂である。この人は、もとはロックバンドをやっていたようだが、バンドを解散した後は、もっぱら映画やテレビなどの映像音楽を多く手がけていた。また、NOKKOさんの「ナチュラル」も彼の作品である。作曲はNOKKOさんとの共同作業ではあるが、アレンジは梅林茂で間違いないと思われる。
梅林茂は、ウオン・カーウァイ監督とは、どういう繋がりで音楽を担当するようになったのか。それは残念ながら知る由もないが。たぶん、カーウァイ監督が、映画「夢二」を観たときに強く印象に残っていたのだろうと想像する。その後、新作を撮るにあたって、この曲しかないと強く感じるものがあったからではないか。
カーウァイ監督は感性の鋭い人であるから、直感で感じるものがあったに違いない。でなければ、すでに他の映画のテーマ曲として使われたものを、わざわざ自分が丹精込めた新作映画のテーマ曲に選ぶはずがないだろう。
写真上:揺れる赤いカーテンとコートは、募る想いの深さを象徴しているようだ
映画「花様年華」を観ると、この「夢二のテーマ」が欠かせない重要な要素となっている。主人公たちの想いを表す音楽として、これ以上の音楽はないと感じるほどである。見事にこの映画のテーマ曲として生まれ変わっている。
それにしても、カーウァイ監督の慧眼には驚くものがある。「花様年華」は、カンヌで評判を呼び世界的にも認知される映画となった。そして「夢二のテーマ」も表舞台にでる機会を与えられたことになる。この様な機会がなければ、この音楽は埋もれていたかもしれない、と思うばかりである。
この魅力的な音楽を作り出した梅林茂は、もっと評価されていいと思うのだがいかに。
ともかく、「夢二のテーマ」が奏でる、やるせなくも切なく、そして深い情感が漂うが如くのリズムとメロディーは、いまでは「花様年華」と同期しているかの様である。
以下は、「花様年華」の新DVD、発売は2013年8月とのことです。また、サウンドトラックは廃盤なのか、ずいぶん価格が高い。なんと、6000円以上もしていました。
追記:2014年5月現在、サウンドトラックの価格は通常にもどったようです。
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