本能の趣くままに、気分のままに
人間の性は、果てしなく深くて掴み所がない
いまさらであるが、椎名林檎さんが気になる今日この頃です。それが何故なのかよく分かりません。それはさておき、このところ椎名さんの創作活動は、非常にノってるなという感じがしています。
ピンになったことで、新たな創作意欲が湧いているのでしょうか。ちなみに、当方はこれまで椎名さんのファンだったことはありません。
椎名林檎さんは、1998年にデビューし、そして、1999年には早くも「本能」で大ヒットをぶち噛ましている。この「本能」は、いまでも彼女のオリジナリティを象徴する代表曲といっても過言ではないと思われます。
なお、デビュー2作目の「歌舞伎町の女王」ですでに注目されていました。
この楽曲(本能)のPVはいま見ても、とてもよく出来た映像だと感じ入ります。何がいいかといえば、間違いなく椎名さんのナース服にあるのは言うまでもありません。
そして、ナース服を着て拡声器を持って歌うというシチューエーションを考えた人は、なかなかに鋭い感性の人だと思うばかりです。
本能とナース服と拡声器の関係は、いかに…
本能とは、人間の根源にある機能?ともいえるものだそうです。
動物個体が、学習•条件反射や経験によらず、生得的にもつ行動様式。帰巣本能•防御本能•生殖本能など。
したがって、それ(本能)にはどんな理性も抗うことは出来ない。そんな宿命にあるのが、人間と本能の関係式かと思われます。学習や経験によって得た知見も本能の前には敵わない。しかし、理性が求められる現代社会ではそれを解き放つのは憚れる。
そこでナースの出番という訳である。ナースは、医者のサポート役として病んだ患者が治癒するまで面倒を見る役割を担っている。治療を施した後は、当然リハビリが必要だ。それなくしては本当の回復はないだろう。
「本能」での椎名ナースは、現代社会で抑圧された本能を解き放つ役割を担った本能界の天使が擬態した姿(ナース)である、と考えても間違いではないだろう。
拡声器で歌うのは、抑圧を解放しようと呼びかけているに違いない。そして、本能の前に立ちはだかる抑圧の壁に見立てた透明なガラスを、とび蹴り一発で割るのはまさしくそれを解き放とうとしたものである。
などと想像するが、その実際の意味は当然ながら知る由もない。あしからず。
「本能」で歌ってる内容は、思わせぶりで意味深で扇情的である。しかし、それは直接的には伝わってこない。何故なら、音楽と一体となっているからだ。
今更なんて思わずに急かしてよ
もっと中迄入って…
とても思わせぶりで素敵な歌詞であるが、実はあまりよく聴き取れない。椎名さんは、歌は不必要と考えていて、あくまで音楽のひとつのパートとして考えているとか。したがって、歌が聴き取れないのは問題ないとされている。
椎名さんの周囲には優秀な人が揃っている
椎名さんは、この「本能」に限らず、その後の数々の作品でもいずれ劣らぬユニークな出来映えの楽曲、そしてPVを発表している。
その背景には、優秀な人材が多くいるのは間違いないだろう。彼女がどこまで主導権を握ってクリエイティブしてるか知らないが、彼女の想いや考え方を実現させる協力者がいてこその数々の名作であるはずだ。
多くのPVを見てもまず外れがないのが驚く次第である。その出来映えには感嘆するしかない。ただ単に格好よく、見栄えがいいだけではない。そこにはちゃんと意味が込められているのがよく分かる。
いわば、そうではないと椎名林檎ではないと言わんばかりだ。それは音楽家としての覚悟の現れともいえるものに違いない。それを周囲の協力者がよく理解している。したがって作品の出来映えは、ある意味では必然の帰結となっている。
最近の作品「逆輸入 ~港湾局~」では、デザイナーが輸入から発想して埠頭で撮影したいと伝えたところ、椎名さんは「だったら花魁姿で撮りたい」と申し出たそうだ。これによって、花魁とコンテナという実に不思議な取り合わせが実現した。
どうやら椎名さんとその協力者たちの関係は、発想の巡り合わせが実に良いようだ。それは結果となって表れていると思うが、いかに。
「ミュージック・ジャケット大賞2015」受賞作品「逆輸入 ~港湾局~」
椎名林檎 流行
椎名さんは、いつも死を意識しているとか
椎名林檎「いつも死を意識」「子ども5、6人産む」(ウィズニュース)
このことを不吉だとおっしゃるのは、外国の文化の人だと思うんです。日本の文化っていうのは、常に「明日は知れぬ身」って考えるのが基本じゃないですか。自然なり、色んな過去のもとで生かされている、生かしていただいている。だから、いつでもすぐ横に死がある、という意識を持っているのが通常だと思うんですよね。
これには、「面白いなこの人」と思うのは当方ばかりでは無いはず…。
追記:彼女の周囲には元からクリエイターが多いようです。イラストレーターの辰巳四郎は叔父。辰巳氏の娘である藤森玲子もイラストレーター。シンガーソングライター椎名純平は実兄だそうです。
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